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厨房はいつだって戦場だ。 - 『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』 #03

料理をネタにおいしいデザインのつくり方を紐解くマガジン、『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』第三回目です(第二回から6年もの歳月が過ぎていることはツッコまないでください…)

今回のお品書きは、こちら。


ちょっと精神論的な話にも聞こえてしまうかもしれませんが、それでも、こうした視点があるかどうか?は、より良い仕事に繋げるためには、すごく大事なポイントだと思います。

では、さっそく参りましょう。

厨 房 と は 戦 場 で あ る

配属されたばかりの新人やキャリアの浅いデザイナーを見ていて「あぁ、まだまだだな」と思うのって、もしくはそれなりのキャリアであっても「こいつ、仕事できねぇな」認定されてしまう人って、実はデザインスキルなど、技術的な部分が要因ではありません。

ざっくり言うと、場の空気が読めていない

それに尽きるように思います。

「場の空気」とは、何か?
それは、「ここは戦場である」という認知と自覚だと思います。

このマガジンは「料理に紐づけてデザインを語る」がテーマなので、ここで厨房の様子を伺ってみましょう。

レストランの厨房では、何が起こっているか?
多くのドキュメンタリー・映画・ドラマでも描写されているように、厨房の裏というのはお客が楽しく食事を愉しんでいるホールや客席とは、真逆の様相を呈しています。

CHEF'S TABLE
料理界のスターたちが、類まれなる独創性で、極上の料理とデザートの定義を書き換え続ける姿とその情熱に迫る。エミー賞候補となったドキュメンタリーシリーズ。
https://www.netflix.com/title/80007945

NETFLIX


Oui,Chef !(ウィ、シェフ)」の掛け声と共に、シェフの指示に従って怒涛
の様に動き始めるスー・シェフおよびスタッフ達。

ホールからは次々に注文が入り、前菜からメイン料理からデザートまで、提供順も入り乱れながらの調理。ソースの味見でシェフにNGを出されたり、仕上げチェックに通らず作り直しを要求されたり、ひとつの料理に遅れが出れば連鎖的にダメージが蓄積していく。更に、混乱の中で中途半端な状態で提供された料理などあろうものなら、料理が手つかずのままの皿が返ってくる(美味しくないという客からのクレーム意思表示)それが、優良顧客や批評家などであれば、最悪だ。レストランの存続に関わる恐れまである。

常に周囲の様子を捉えつつ、的確にスピーディーに動き自分の役割を全うしない限り、仲間に迷惑をかけ足を引っ張り、果ては「明日から来なくていい」とクビ宣告。一流シェフやレストランの元で経験を積むには、無償や薄給でも当たり前の世界(それが良いとは思いませんが)使えない奴が身を置く場所などありません。

1分1秒を争いながら、次々にやってくるハードルをチームワークで超え続ける場。まさに「厨房は戦場」なのです。

もちろん、シェフのマネジメントスタイルやレストランのレベル感にもよりますが、ミシュラン級の一流レストランであれば、そこで求められるスピードとクオリティのヒリつき感は、押して図るものがあります。

そして、この「戦場感」は、ビジネスの現場でも多くの場合、全く同じです。


仕 事 が で き な い と は ど う い う こ と か

さて、そんな戦場のようなビジネスシーンにおいて、戦場にいる認知が薄い人はどう振る舞ってしまうのでしょうか。

色々な要素がありますが、例えばを大きく3つ挙げてみます。

  1. スピードへの意識が低い

  2. 自身の発言への意識が低い

  3. 仲間やチームワークへの意識が低い

それぞれ見てみましょう。

1.スピードへの意識が低い

あるあるです。
銃弾飛び交う戦場で、ぼーっとしてる感じ。危機感が薄いため、速攻で集中砲火を浴びて退場です。何なら、撃たれたことにすら気づいていないことも。

仕事には、常に締め切りがあり、要求水準があり、期限までにクオリティを満たす結果を出さなければいけないのですが、その認知が薄いパターン。

まだ締め切りまで時間があるから、今日はこのくらいの進捗でいいかな…

上司がつかまらないし、確認は明日に回してもいいかな…

もう期限だけど、自分の納得がいっていないので確認出ししたくない…

みたいな感じ。

周囲から見ると、時間感覚が遅く「のんびりしてんな〜」って映ります。何故なら、早いことはいつだって何にも勝る正義だからです。

  • 期限を超過した120点の仕事に価値はありません。0点です。

  • 期限に間に合った80点の仕事にはまだ価値があります。でも80点です。

  • 期限の1/2の時間で50点に到達した仕事には更に価値があります(期限内に100点以上にできる可能性があります)

  • 期限の1/4の時間で30点に到達した仕事にはそれ以上に価値があります。(期限内に120点以上にできる可能性があります)

いかに早く、期限までのクオリティ曲線を上げられるか。
それが最終的な仕事の出来を左右するから、皆スピードに敏感なのです。

その時間感覚がズレていると「彼はいつも期限に遅れるよね」「彼女はいつも確認出しが遅いよね」という負の評価を周囲に積み上げていくことになります。

理想は、常に「え、もう出来たの!?」という驚きを得るくらいに、期待値以上のスピードを出し続けることです。


2.自身の発言への意識が低い

ビジネスシーンは、コミュニケーションの場です。
そこで飛び交う銃弾とは、言葉です。

リアルな会話であろうと、テキストコミュニケーションであろうと、言葉への意識がとても重要です。

その意識が低いとどうなるか。

ミーティング中、一度も発言しなかった…(話振られなかったし)

意見を求められたけど、特に考えていなかったので答えられなかった…

場の空気が重かったけど、自分の責任ではないし黙っていた…

みたいな感じ。

主体性の問題とも言えるかもしれません。
ミーティングや議論に対して、主体性をもって参加すること。意見をすること。それが、正しいか間違っているかなど、どうでも良いのです。むしろ、誰も答えを持っていないからこそ、議論しているわけで。

旧日本軍の失敗について考察した「失敗の本質」という書籍がありますが、「上下下達」や「空気を読む」ことがいかに危険かが分かります。

そういう意味では、シェフ絶対主義の古典的フレンチの厨房などは、イノベーションから遠ざかっているとも言えるかもしれません。

ちなみに、世界で最も予約のとれないレストランだったデンマークの「noma」では、シェフのレネ・レゼピを中心にしているものの、スー・シェフ含めて非常に闊達なアイデア出しや意見交換が行われていたのが印象的です。

キャリアや理解度に関係なく、意見を出すこと。意見を闘わせること。
それがイノベーションを生み、良い仕事に繋がるのです。

noma Kyoto 行きたいけど、毎回秒速でSOLD OUT…


3.仲間やチームワークへの意識が低い

ざっくり言ってしまえば、自分本位・自分勝手ということです。

厨房はチーム戦です。同じく、ビジネスもチーム戦です。
自分の仕事が終わったからと言って、チーム全体の仕事が終わったわけではありません。他のメンバーは、今まさにヒィヒィ言いながら佳境を迎えているかもしれません。

前菜を出し終われば、次は魚料理や肉料理の準備、それも終わればデザートの準備、皿洗いだって盛り付けの手伝いだってあります。
クライアントに提供しているのは、あくまでコース全体としての体験です。最後の最後、食後のコーヒーを出し終わるまでが戦場なのです。

その意識が低いとどうなるか。

自分の担当範囲は終わったから、あとはのんびしていよう…

ちょっと疲れたから、タスクいっぱいですと宣言しておこう…

別ユニットが逼迫しているけど、自分には関係ないよね…

みたいな感じ。

これが怖いのは、多くの場合、バレています。
マネジメント層は、もちろん各タスクのボリューム感や難易度は把握しているので、嘘つくとバレます。

もしくは、本当に自分の担当範囲が終わってなかったりすると、「1.スピード遅い」認定を食らいます。

でも、自分の担当以外まで担当するのは損だよね…?

と思ったかもしれませんが、全くの逆です。

いつも自ら手を挙げてヘルプを申し出てくれる人は、もちろん一時的に業務は逼迫するでしょうが、信頼を積み上げていきます。信頼され、期待され、大きく重要で面白い仕事のチャンスが増えていきます。

一方で、自分本位を貫く人の元からは、仕事も人も去っていきます。あくまで仕事はチーム戦だということ、全ての料理を提供し終わるまでが仕事だという、仕事の本質を理解していないからです。

TAKEしたいなら、まずGIVEすること。
それがサバイブの大原則です。


仕 事 が で き る と は ど う い う こ と か

さて、大きく 3つの観点で、戦場にいる認知が薄い人=仕事ができない人について見てきました。

仕事ができるとは、この全くの逆になります。

  1. 常にスピードを意識して、全力で走る、期限前に出す

  2. 積極的に意見を出す、何なら自分が議論の踏み台になる

  3. チームワークを意識し、仲間を思いやる、仲間をヘルプする

書いてみれば当たり前のことのようにも感じますが、これらの意識が表に認知されるくらいに放出されているかどうか、その強度がとても重要です。
傍にいると、ビリビリと何か波動を感じそうなほどの「本気度」。本当に仕事ができる人は、どんな場面でも、まるで真剣を握っているような覇気を放っています(多くの場合、表向きはニコニコフレンドリーですけどね)

いきなりそのレベル感に達するのは、もちろん無理なので、まずは「ここは戦場である」という認知と自覚をしっかり持つこと。そして、そこで生き抜く術を見出していくこと。それが大事だと思います。


戦 場 で 生 き 抜 け

以上、

今回は主に「ビジネスの場は戦場である」という捉え方と、そこで生き抜く術について書きました。

  • 戦場にいる認知と自覚を持つ

  • スピードが命

  • 発言しろ

  • 仲間を大事に

ってことですね。


次 回 予 告

次回は、仕事の基本の基本、仕事がスタートする瞬間の話。何を価値提供するべきなのか?を見出していくヒアリングプロセスや、顧客の顕在要望にとどまらず潜在要望までアプローチしていくにはどうすれば良いのか?といった、永遠のテーマについて書いてみようと思います。

題して、


す べ て は オ ー ダ ー か ら 。

 『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』 



〜 書きました 〜


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