マーケティング施策の効果検証において「指名検索数」が重要な指標になるワケ
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
マーケティング施策の効果検証において「指名検索数」が重要な指標になるワケ
TVCMなど、マーケティングにおけるコミュニケーション施策の効果を定量的に把握する為のアプローチとしてマーケティングミックスモデリング(以下「MMM」)という手法があります。
数理モデルや仮想現実のシミュレーションによっ て効果を定量化するものです。MMMは同時に実施している複数の施策の効果を定量化する時に特に役立ちます。Webマーケティングの発展に伴い、課題となっているのはTVCMによるEC売上の増加効果などのクロスチャネルの効果把握です。例えばMMMによってオフラインチャネル(実店舗やコールセンター等)とオンラインチャネル(EC等)の売上をマーケティング施策などの要因によって説明する統計モデルを作り、施策の1単位を増やすと売上がいくら増えるか?それぞれの介入効果を推定し定量化することで、オンライン施策とオフラインの施策を横並びで評価することができ、クロスチャネルの効果把握や投資予算配分の最適化ができます(ただし、信頼できる統計モデルを構築できればという前提です)。
MMMのうち主に活用されているのは時系列データ解析によるアプローチです。私はそうした分析を一般化するためにExcelでできるデータドリブン・マーケティングという書籍を出版しました。
書籍ではアルコール飲料や通販のケーススタディーで分析できる演習のデモデータとVBAで組んだ分析ツールを提供しています。以下のnoteでは、アルコール飲料の分析手順を動画で分かりやすく紹介しています。
時系列データによる分析は主に、食品や日用品や、ゲームなどのアプリ、お試し無料の通販などのほうが予測精度の高いモデルが作りやすい傾向にあります。これらの業種はTVCMなどの広告接触から購買までの時間、すなわち購買リードタイムが短い傾向にあるため、時系列データ解析によって説明しやすいのです。
反対に購買リードタイムが長い商材やサービスは予測精度を上げることが難しくなります。例えば、不動産や自動車などの耐久財です。過去、不動産サイトの問い合わせ獲得を成果地点(目的変数またはアウトカム等)として時系列データ解析によるMMMを行った際、賃貸と購入でそれぞれでモデルを作りましたが、購買までのリードタイムが長い後者の予測のほうが難しかったです。
更に、映画やゲームなどでは、公開または発売までに情報をチラ見せするティザー広告という手法を用いるため、公開数ヶ月前の宣伝広告を行ったタイミングで予約ができない状態であれば、その時期の広告により予約数がいくつ増えるか?時系列データ解析では説明できません。
そうした時に売上を説明する為の中間変数、または売上を代替する変数として非常に有効な指標となるのが指名検索数です。(※本noteのタイトルに対応する解となります)
例えば、因果構造としてTVCM投下→指名検索増加→売上増加という関係が成立するケースにおいて、TVCMによって指名検索がいくつ増えるか?指名検索によって売上(または予約数など)がいくつ増えるか?これらをそれぞれモデル化して把握するアプローチが出来れば、TVCMによって売上(または予約数など)がいくつ増えるか?を把握できます。
2013年の記事ですが、映画の興行成績を検索データによって94%の正確さで予測可能としたGoogleの発表をまとめた記事がありました。
他にも、ツイート数などを用いて予測するアプローチが過去に行われてきました。
私も、2018年の上位50作品の興行収入と指名検索数を用いて、興行収入を予測するモデルを作る簡単な分析を行いました。個人的に気になっていたアベンジャーズの2019GWの最新作が前作(2018GW)の2.5倍程度の興収になるのでは?といった結果となりました。なお、同note内では先日の東京区長選の得票数に指名検索数が与えた影響をモデルによって説明したnoteも紹介しています。
TVCMやネット広告など大規模な投資を行っていて、それらの効果検証についてMMMなどの解析的なアプローチを用いて意思決定をすることがカルチャーとして根付いている先進企業においては、ブランド名の指名検索「ブランドクエリ」の実数を増やす効果を最重要KPIとして広告投資の予算配分を決定しているケースもあります。
兼ねてより行われていた手法として、TVCMの事前事後による認知度や購買意向などのアンケートの広告投下の前後比較を行い、その差分をそのまま広告の因果効果として判断している企業もいると思いますが、それは「因果推論」においては前後比較デザインと言いNGです。(トレンドなど、施策以外の影響を考慮できない等の理由があります。)
※因果推論の基礎知識については下記noteを参照ください
因果推論や数理モデルの知識を把握した上で、マーケティングの意思決定ができる企業は日本ではごくわずかだと思います。
拙書Excelでできるデータドリブン・マーケティングで学び、基礎リテラシーを養った上で各社のサービスを導入すれば、そうした意思決定が出来る様になると思います。
【参考リンク】MMMサービス
時系列データ解析による効果検証分析「ツール」
POSデータなど売上のシンジケートデータを所有する会社が提供するMMMソリューション
ようやく、日本のマーケティングの現場でもMMMが浸透しつつあります。マーケティング施策の効果を売上など経済価値への因果関係として定量的に把握できていない方はそろそろ、こうしたアプローチで意思決定を行う体制を作っていきませんか?そのために必要な予備知識を得るために拙書をぜひご活用ください。最後に拙書を参照頂いた文献をいくつかご紹介させて頂きます。
ここまでお読みいただいてありがとうございました。
【更新情報2023年12月18日】
クッキー規制で目減りする効果計測の課題を解決法をnoteにしました。無料で使えるMETA社の高機能なMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)ツール「Robyn」を徹底解説する2時間強のYouTube講義を公開しました。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。