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コンテンツ、コマースとソーシャルの融合化とクリエイターエコノミーの進化
Off Topicについて
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はじめに
「C向け業界で注目しているスタートアップは?」という質問を時々聞かれるが、ここ1年間この領域を研究し、様々なエキスパートから話を聞いて、自分でも投資した結果、オーディエンス、つまりアテンションに投資してキャプチャーできる会社が次世代ブランドになると思う。今回はどう言う次世代ブランドを個人的に気にしているのかを含めて、今の業界の流れと何故クリエイターが最もD2Cブランドや今後のC向けブランドにとって一番恐れるべき存在かを解説したいと思います。
次世代メディアの候補リスト
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) September 27, 2020
・Brat TV
・100 Thieves
・88 Rising
・Substack
・Brud
・Barstool Sports
・Yes Theory
・Mr. Beast
・David Dobrik
・Overtime
・Lyrica Lemonade
・Offline TV
・No Jumper
・NTWRK
・Amp Studios
・Crypt TV
・First We Feast
過去の記事でも話したが、Shopifyなどのツールを使うと誰でもD2Cブランドを作れたり、今となってはSubstackのようなメディアも簡単に作れる時代になってきた。会社を立ち上げるには良いプロダクトを持つと言うのは優位性ではなく、前提条件だ。問題はユーザーを獲得し、リテンションさせること。2010年〜2017年ぐらいまではD2C・C向け企業であればFB・Instagram広告、B向け企業であればGoogle検索広告やApp Storeに載せるだけで低いCAC(ユーザー獲得コスト)で人を集められたのが、競合が増えてコストが上がっている。そして競合が増えているからこそ、他ブランドへ乗り換えるスイッチングコストが大幅に下がっている状況となっている。そんな中、どうやれば成功できるのか?
良いブランドを作るには、まず良いプロダクト(商品だけではなく、全体のユーザー体験)が必要。そして次に必要なのはオーガニックで熱烈なオーディエンス。前回の記事で説明したカルトブランドを作る要素のコンテンツについて深掘りたい。
昔のローンチイベントや広告で初期顧客の獲得と変わり、今ではコンテンツ、しかも連続的なコンテンツがユーザー獲得、体験、そしてリテンションに関わるようになってきた。最近Bloomberg記事にもなったが、D2C業界では「blanding」、いわゆる似たようなフォント、デザイン、ルックスのブランドが増えて、一般消費者がこう言う者に対して疲れ始めていると言う記事が公開された。
引用:Bloomberg
簡単に説明すると、今となっては低コストで上記のイメージのようなブランドが作れてしまう。そのため、ユーザーからすると同じものを見て飽きてしまう。
ただ、似たようなブランドが出てきたからこそ、ユーザーはよりブランドを調べて、ブランドの中身を知りたい環境になった。そのブランドを知るためにコンテンツ・SNSがどんどん重要となってきた。プロダクト・ブランド、コンテンツ、そしてソーシャルの三つの大きな領域が融合し始めて、その流れに気づいている次世代ブランドが個人的に思う、最もC向けで成功しそうな会社。
ソーシャル、ブランド、コンテンツの融合化
過去5年ほどでソーシャルやコンテンツをブランド・プロダクトとかき合わせて成功させるビジネスモデルは多数出てきた。ソーシャル x コンテンツ、ブランド x ソーシャル、そしてブランド x コンテンツのそれぞれの融合が進んでいるとともに、ソーシャル x ブランド x コンテンツの三つが混ざり合って、新ビジネスモデル(課金型コミュニティ)を作っているのと、それを最も利益できそうなのがクリエイター(よく言われるインフルエンサー)である。
引用:Toby Shorin記事を活用して自社考えに基づき編集
上記図を解説するために、まず大きな領域のソーシャル、ブランド、コンテンツを定義づけすると:
・ソーシャル:SNS含めた、人とのやりとりをする場所(Slack、Discord、Fortniteなども含む)
・ブランド:元々のToby Shorinさんの記事ではコマースに限っていたが、今回の図ではB2B向けソフトウェアも含めた形となっている
・コンテンツ:オンライン上で見るコンテンツ、主にメディアやニュース系が多い
この三つの要素が今組み合わせていることで、新しいビジネスモデルやスタートアップを作っている。まずは各コンビネーションを紹介してから、今現在起き始めている全ての要素が組み合わせている話をします。
ブランド x ソーシャル
前回の記事でも書いたように、SNSやコミュニティ化しているブランドの話はかなり増えている。D2CブランドやMemeビジネスはコミュニティ・SNSを通して直接ユーザーと話せるからこそ成功している。そして最近だとFastなどB2B向けのサービスも同じように、ソーシャル上でコミュニティ化している。
決済サービスのFastのDirector of Content MarketingのMatthew Kobachさんは「B向けでも、C向けでも、自分たちの対象とするユーザーがインディーズバンドのファングループに入っている感覚でマーケティングをしなければいけない」と語る。ファンはバンドが何をやっているか知りたがっている、そして初期からバンドを見ているからこそ、親近感と初期から見守っているプライドを感じる。そのインサイダー感を作るためにFastはSNSを上手く活用している。
以下は一つの事例。Fastのツイートに返信すると、Fastの代表的シンボルの宇宙飛行士のヘルメットをプロフィールに加工してあげると発表した。
Reply to this tweet and we'll give your profile pic a Fastronaut helmet pic.twitter.com/3WxeI0OJVB
— Fast 🚀 (@fast) July 29, 2020
ツイート自体がエンゲージされたと同時に、超重要アセットであるユーザーのTwitterプロフィールにFastのロゴが出るようにもなった。しかもそれを見たあるファンはInstagramフィルターとしてFastのヘルメットを勝手に作った。
This is @jordanjosic.
— Matthew Kobach (@mkobach) August 12, 2020
Jordan created this IG filter. He didn’t ask for @fast’s permission, he just created it. We loved it so much that we bought it from him. Now it’s on our IG page for everyone to use. Be like Jordan.pic.twitter.com/6s88FMsAx8
それを見たFastはフィルターを買い取り、それをFastユーザーに無償で提供した。そしてFastのローンチイベントはファンの力を存分に使った動画でスタートした。
そして前回の記事でも書いたが、これをブランドのアカウントからやるのも重要だが、最近より重要視されている、もしくはユーザーが好んでいるのはブランドの裏の人間たちが自分たちのブランドを全面的に推すこと、そしてブランドビルディングについて語ること。
Matthew KobachさんのTwitterを見ると、まさに彼は「ブランドの裏の人間」として活躍し、そのポジショニングを上手く使ってFastブランドをプロモーションしている。例えば、彼は最近Fastのコンテンツマーケティング戦略を公開している。
It’s time for another @fast content strategy update.
— Matthew Kobach (@mkobach) August 2, 2020
This week I’m sharing how our paid strategy complements our organic strategy (a thread).
前回記事でも説明したように、最近は公共の場でブランドの裏の人間が自社プロモーションをするのが流行っている。別の事例を出すと、最近ローンチしたアトピー用のD2CブランドのTopicalsのTwitterを使った成長戦略。
Hi everyone! Today we’re bringing you all a thread on pseudofolliculitis barbae to hopefully brighten your week with some new skincare info! Before we start, we’d like to add that we’ll be abbreviating it as PFB, so whenever you see that, it means pseudofolliculitis barbae. ☺️
— TOPICALS (@mytopicals) September 25, 2020
こちらのスレッドはかなりニッチなトピックについて深掘りしているツイートだが、コミュニティに対して価値のあるコンテンツを提供しているため、かなりエンゲージされた。
Dunkin' Donutsの最近のマーケティング戦略では従業員に仕事場の状況をTikTok動画として撮るようにお願いしてたりする(仕事している動画を撮ると、エキストラでDunkin'がお金を払う)。この影響でかなりフォロワーがつく従業員も出てきて、その結果Dunkin' Donutsのブランディングが良くなる。
このトレンドは最近のSNSプラットフォームがコマース化しているでさらに加速している。TikTokの中国版は既にコマース機能を入れているが、アメリカでも同じ機能を入れようとしている。Instagramも最近IGTVやReelsでもコマース機能を追加することを発表したのと、YouTubeもShopifyとの連携をテストしている。このようにブランド側もソーシャルを使ってマネタイズしている流れもあれば、ソーシャルのプラットフォーム側もよりクリエイター・ブランド寄りのニーズ(マネタイズ)に合わせようとしていることで、ソーシャルとブランドが融合化しているのが分かる。その影響でVerishop、Depop、Popshopなど、色んなソーシャルコマース系のスタートアップも立ち上がり始めた。
ソーシャル x コンテンツ
SNSではコンテンツを出すのが当たり前だが、最近だと一つのコンテンツフォーマットやプラットフォーム上でユーザーが集まるようになった。Twitchによるライブ配信や記事にもしたメルマガ配信サービスのSubstackはこの一例。
直近ではOnlyFansのような課金型コンテンツを提供するプラットフォームが主流になり始めている。OnlyFans自体は元々アダルト系のコンテンツで有名になったが、今ではセレブも使い始めている。より直接コミュニティと繋がるために限定コンテンツ、もしくはCameo、Substack、glow、superpeerのようにでコンテンツでよりファンと強いコネクション、強いコミュニティを作る傾向になっている。
OnlyFansの人気をはじめに、InstagramやSnapはメンバーシップ型の限定コンテンツを提供している。Instagramは「Close Friends」と言うフォロワーの一部だけにコンテンツを限定公開する機能があり、インフルエンサーやブランドが上手く活用している。
OnlyFans has paved the way for gated content...
— Blake Robbins (@blakeir) August 21, 2020
Instagram and Snapchat have a really interesting opportunity to roll out their own gated content features.
e.g. Monthly fee for fans to get access to a creator’s “Close Friends” stories
そしてもう一つ大きな流れは大手メディアがオンライン化した中で、広告モデルからサブスクモデルにようやく切り替え始めたこと、いわゆるコンテンツ提供からコンテンツ + コミュニティへ進化していること。New York Timesはデジタル課金のみしているユーザーが570万人を突破、2025年までには1,000万人の登録者の目標を掲げている。そして初めてデジタル売上が紙の新聞の売上を超えた。今となって700人もプロダクトチームに所属するNew York Timesはテック企業とみてもおかしくない。
そしてサブスクになったと同じタイミングで、オンライン新聞メディアのアンバンドル化の時代に入った。
各カテゴリーごとに新しい会社が立ち上がり、ほとんどが広告モデルではなく、サブスクモデルで成長している。これはよりニッチなオーディエンスをターゲットする代わりに、深掘りした情報を与えることによって月額課金できるほどの価値を提供できるから。これは「コンテンツ」、いわゆるメディアの進化となるが、どう言う風に「ソーシャル」が関わるのか?
そこで入ってくるのがTwitter。インターネットにより、多大なる量のコンテンツが出る中、どこで最も情報が拡散されて、見つける場所として最適化したかと言うとTwitterが答えになる。
このソーシャルとコンテンツのブリッジとよくなるTwitterは、個人的に大きな機会損失をしていると思う。Twitterはいまだに広告モデルで収益を上げているが、恐らく広告モデルではこのまま成長は難しい。大体Facbookの10%のMAUしかいない。ただ、Twitterの魅力的なところは、コアユーザーがめちゃくちゃエンゲージしているところ。
Pew Research調査によると、アメリカではTwitter上のツイートの80%はトップ10%のユーザーが作っている。全世界の44%のTwitterユーザーはツイートしたことがないし、一回以上ツイートしたことがある5.5億人のユーザーのうち、半数の人は1年以上前が最後にツイートした。
引用:Pew Research
TwitterはFacebook、TikTok、Instagram、Snapなどと同じく、エンタメ系のコンテンツを提供していると勘違いしているため、広告モデルに走っている気がする。実際のTwitterの使われ方はユーティリティーの方が近い。そのため、TwitterはDiscord、LinkedIn、Substack、The Athleticなどコンテンツとソーシャルを融合したエンタメ系の会社ではなく、ユーティリティー系の会社を参考にするべき。
何故Twitterはユーティリティーとして見るべきかと言うと、ビジネスモデルを変更するため。今までの広告モデルを見ると、TwitterはFacebookと比較すると大幅に差があることが分かる。2019年のTwitterの売上は$3.4B、ユーザー数は3.3億人。Facebookは25億人で$70.7Bの売上を達成している。
Twitterの価値はOff Topicや私のようなコアユーザーがTwitterのプラットフォームを使ってオーディエンスを作れる場所、オーディエンスと直接繋がれる場所、コンテンツ提供できる場所を与えていること。まさにこのコンテンツとソーシャル・コミュニティを融合したツールなのに、Twitterは提供している価値と比べて全くマネタイズが出来ていない。
例えばSubstackでメルマガ配信している人たち、もしくはこのnote記事もそうだが、多くの人はTwitter上で見つけることが多い。Twitterのプラットフォームを使ってコンテンツの拡散とユーザー獲得をして、獲得した一部のユーザーはSubstackの場合だとメルマガに課金する。そうするとメルマガを書いている著者はユーザー獲得して価値を得て、Substackも同じくユーザーと将来的にSubstackを使ってくれるかもしれない人たちも獲得して価値を得ている。果たしてTwitterはどこで価値を得ているのか?もちろん一部は広告収入はもらえているかもしれないが、Twitterで上がるコンテンツの多くはURLがついているので、結局Twitterのプラットフォームから離脱することになる。
せっかくすごい価値をTwitterが作っているのに、その分マネタイズが出来ていない。だからこそTwitter CEOのJack Dorseyは現在サブスクモデルを作ろうか考えている。TwitterはLinkedInみたいな会社を参考にするべき。LinkedInの売上はほとんど広告から来てなく、パワーユーザーのサブスクから来ている。
今となってはDiscordやOnlyFansなどがこの領域に入り込もうとしている中、Twitterがどう動くかは楽しみにしている。
ブランド x コンテンツ
この記事を書くきっかけは実はブランド・コマース x コンテンツ・メディアがかなり盛んになっているのを見ていたから。最近の次世代ブランドや記事の後半で解説するクリエイターたちはコンテンツ制作によりフォーカスするトレンドになってきた。
もちろんこの2つのコンビネーションは昔から行われていたこと。例えば1955年にアルコール会社のギネス。当時はイギリスのパブでの売上も下がっていたある日にギネスのマネージングディレクターのSir Hugh Beaverさんがヨーロッパで一番早い鳥が何かを議論していた。それを確かめるためのエビデンスがないこと、そしてこう言う会話がイギリスの色んなパブで行われていることを気付き、それを解決するために「ギネスブック」と言う本を作った。
このコンテンツ制作によって、ギネスはパブ内での会話のネタの提供と、自社ブランドへの認知・ロイヤリティー向上を計画した。そしてその認知とロイヤリティーはパブ内で次にオーダーするドリンクに影響すると思った。
@garyvee How #Guinness got your attention. 👀 #GaryVee #fyp #didyouknow #guinnessworldrecords
♬ Monkeys Spinning Monkeys - Kevin MacLeod
このように、ブランドがメディア化すること自体は昔からやっていたこと。ギネスと似たような話だと車のタイヤ会社のミシュランが出てくる。フランスのタイヤメーカーのミシュランだったが、当時(1900年)では3,000車しかフランスに存在しなかった。タイヤ会社として成功するには、自動車の需要を増やす必要、いわゆる旅行の需要を増やす必要があった。そこで作ったのがミシュランガイド。
当時は無償でガソリンスタンド、タイヤ修理所、車のメンテナンス方法などにフォーカスしたが、徐々にメディアとして進化して、1922年にチャージしたのと、レストランやホテルを追加、そしてレストランをレビューする人たちを採用した。ここでミシュランの星の評価システムが作られた。
ミシュランガイドで儲かるのではなく、これによってより車に乗って美味しいレストランへ食べに行くことで車のタイヤを使いこなし、新しいタイヤが必要となる環境を作ったのがミシュランの戦略だった。
このメディア事業のブランド・マネタイズ化、ブランドのメディア化は2pm Web Smithさんが「Linear Commerce」と読んでいる。どの業界でもこのLinear Commerceの概念が出てきていると思うが、特にD2C業界では今主流になり始めている。このLinear Commerceとはオーディエンスファーストに考えること。プロダクトフォーカスしている会社は大体デマンドジェネレーションは外注することが多い(広告などで)。今後の流れを理解している次世代ブランドはオーディエンスのグロースをプロダクト開発と同じぐらいのプライオリティーとして置いている。そしてデジタルメディア企業はクリック数やSEO効果ではなく、オーディエンスのロイヤリティーなどにフォーカスするべきとWebさんが語る。その理由はメディアとしてはこの広告モデルが持続不可能になっているのと、ダイレクトなトラフィックと高いロイヤリティーを保てるとコマース・マネタイズのチャンスが出てくるから。
引用:2pm
WebさんはこのLinear Commerceでは5つのバージョンがあると語り、最も周りのエコシステムに頼るバージョンから頼らないバージョンとして解説している:
バージョン1(最も周りのエコシステムに頼るパターン)
ブランドは良いPR戦略でローンチして、広告でユーザー獲得を行う。グロースはCACと連動する。
バージョン2
ブランドは色んなメディアに取り上げられてローンチし、オーガニックなメディアからの認知と広告を頼りにユーザー獲得を行う。
バージョン3
ブランドはメディアと提携してローンチを行う。独占アフィリエイト契約などを結んで、オーガニックと広告のblended CACで成長する。
バージョン4
ブランドは自社メディアをメインのユーザー獲得戦略としてローンチ。
バージョン5(最も周りのエコシステムに頼らないパターン)
ブランドはプロダクトをローンチする数ヶ月、もしくは数年前から評判の良いメディア事業をローンチ。
数年前までのD2Cブランドだとバージョン1か2が普通だったのが、最近ではバージョン4、もしくはバージョン5のパターンが多くなっている(特に成功しているブランドを見ると)。例えばMadhappyは自社のメディア「The Local Optimist」を立ち上げ、そこで上手くユーザーからの認知とロイヤリティー向上を行っている。CBDドリンクのRecessはポップアップを作り、そのポップアップでRecessのブランドの深掘りをしてもらえるため、そして教育イベントなどのコンテンツ提供をするためのスペースを作った。
引用:Collater
このメディアとブランド・コマースが融合化した事例を幾つか以下紹介します:
Away
Awayはまさにこのバージョン4と5を考えているブランド。Awayは元々予定していたローンチ時期が遅れたため、ユーザーを旅行を喜ばせる施策を考えた結果、本をリリースすることを決めた。40人ほどクリエイティブな人たちをインタビューし、「The Places We Return To」と言うタイトルでリリース。スーツケースを事前購入したユーザーに対して提供するようにした。
その本がSNSなどでバズった。1,200冊ぐらい作ったが、即完売した。このストーリーテリングをブランドに初期から詰め込んだAwayからすると、後に作った雑誌の「Here」とポッドキャストの「Airplane Mode」は当たり前の流れだった。
引用:Awayサイト
特にHereはAwayの海外展開に使えるものとなる。実際にHereの12%のトラフィックは海外からきているとのことなので、このコンテンツを上手く活用して新しい市場へローンチしやすくしている。
Glossier
バージョン5の代表例はGlossier。今ではユニコーンだが、Glossier CEOのEmily WeissさんはGlossierを始める4年前からコスメブランドを作るための下準備を行なっていた。2010年に立ち上げたInto The Glossは2014年に立ち上げたGlossierの初期のメイン流通チャネルとなった(2012年では月次で20万人が訪れていた)。いまだにGlossierの多くのユーザーはInto The Glossコンテンツを見ている。その結果、GlossierはInto The GlossとInstagramと言う大きなオーガニックのユーザー獲得戦略を作れた。
Barstool Sports
2003年に立ち上がったBarstool Sportsはメディア企業がどれだけちゃんと広告以外でのマネタイズが出来るかを表す良い事例。初期はスポーツのギャンブル誌として始まったBarstool Sportsはスポーツとカルチャーについて書くブログとして進化。かなりエッジが聞いたブランディングなどによって、カルトブランド化して「Stoolies」と言うファン層を抱えるレベルとなったメディア。Barstool Sportsはグッズ販売から初め、今となっては色んなスポーツに置いてのアパレルやサービスを販売するようになった。
Barstool SportsはD2C化して自社ブランドのアパレル以外にも有料コンテンツ、サブスク型メンバーシップ、そして2019年にはゴルフイベントを開催してマネタイズを始めた。毎月900万人がメディアに訪問する中、2019年売上の$90M〜$100Mのほとんどがポッドキャストやグッズ販売からきている。
さらに最近はC向けのアプリ開発にまで手を出して、スポーツのギャンブル・賭けアプリをローンチした。
Barstool Sports officially launching their own sports betting product is a perfect example of how a “media” company can create a massive software business.
— Blake Robbins (@blakeir) September 18, 2020
This is just the beginning...and they are paving the way. pic.twitter.com/qpymOCptbB
記事後半でも説明はしますが、グッズ販売からそれ以外のC向けサービスやソフトウェアの領域にメディア・クリエイターが入る時代になり始めているので、オーディエンスを持っていないブランドは今後気をつけるべき。Barstool Sportsは上手く900万人のオーディエンスをマネタイズできたから$90M〜$100Mの売上、そして直近では$450Mの時価総額の事業として評価された。
Disney+
メディアを活用してマネタイズするコンセプトは最近だとDisney+が大手企業の中でも最も上手くやっている会社。ストリーミング事業に何千億円と投資しながら、赤字の覚悟でメディア事業を立ち上げたのは、そこから得られるデータ(初めてディズニーは個人レベルで誰がどのキャラが好きかが分かる)、そしてそのデータとアテンションによりマネタイズ(テーマパークやクルーズのチケット)への誘導のため。ディズニー以外でもAppleやAmazonも同じ戦略をとっている。詳細を知りたい方は以前書いた記事をご参照ください。
ゲームコンテンツ x ブランド
アメリカでは2.44億人(人口の4分の3)が何かしらのゲームをするとNPD Groupが調査した。2018年と比較すると3,200万人のゲーマーが増えている中、ゲームはかなりのアテンションとエンゲージメントがあるので、昔からブランドはこの領域に入ろうとしている。昔だとアメリカのスナックブランドのNabiscoが「Nabiscoworld」と言うサイトで色んなカジュアルゲームにNabisco商品を入れ込んでいた。
実際に小学生の時にNabiscoworldのオンラインミニゴルフゲームをプレーしてたのを覚えているが、最近だとゲーム領域にD2Cブランドも入り込もうとしている。2016年にWarby ParkerがKill Screenとコラボして「Worbs」と言うゲームを開発した。Worbsのリリースは限定メガネをローンチしたタイミングで出した。
2018年には家具D2CのBurrowがどれだけソファーに座っているかを測る「Couch Potato」をローンチ。ふざけて作ったゲームはかなりメディアなどにも取り上げられた。
最近でもこのゲームをコンテンツ化するブランドが増えている。例えばアトピー用のD2CブランドのTopicals。そもそもコロナの影響でローンチを送らせて、広告予算もあまりなかったため、スキンケアのアドバイスと星占いをかき混ぜたゲーム「Skin, Sun & Stars」をローンチ。
引用:Topicalsサイト
Z世代向けの下着ブランドのParadeも同じく、ローンチ前にスロットマシン「Spin-2-Win」を公開。当たったユーザーは無料の下着をもらえるのと、$1がプランド・ペアレントフッドへ寄付される仕組みを提供した(Z世代は社会的貢献が大事なため)。それ以外に「Press Here for Stickers」と言う無料ステッカーがもらえるデジタルコンテンツを提供し、ローンチ前に1.5万枚のステッカーをユーザーに渡した。
直近ではCBDドリンクD2CのRecessとPoolside.fmがコラボ商品を出した際に、雲をマウスでクリックしてディスカウントをもらえるゲームをリリースした。
引用:Trend Hunter
今ではFortniteやRobloxでプロモーションするブランドを初め、ゲームでユーザー獲得するブランドが増える。実際にFall GuysもあるキャンペーンでFall Guysが指定したチャリティーに最も高い寄付のコミット額を発表した会社がFall Guysのカスタムスキンをもらえると発表した際に、$1Mの寄附金を集められた。
🏆 BIDDING IS FINISHED 🏆
— Fall Guys 👑 (@FallGuysGame) August 31, 2020
THE WINNERS ARE:@G2esports @Ninja @AimLab @MrBeastYT
With a combined donation of $1,000,000 for @SpecialEffect
Probably the spiciest team up since The Avengers??????https://t.co/Q2G3h9UyDh
今後は今流行っているAmong UsやParty Animalsでもブランドがスキンのコラボをしてもおかしくない。特にAmong UsはかなりMeme化されやすいゲームなので、ブランド認知に繋がる可能性がある。
VC事業もメディア化!?
競合が増えると、アテンションを獲得しないと勝てない話はどんな会社でも一緒で、VC業界でも同じことが起きている。昔からだとAndreessen HorowitzやFirst Roundなどオペレーター系VCがブログを始めたのが、今ではソーシャルやブログをVCが運営するのが当たり前になって、逆にコンテンツを出すのが必須になってゴーストライターを採用してたりする。
最近のVCがやっていること:
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) January 16, 2020
・ゴーストライターやテック記者を採用して記事代行してもらっている
・コンテンツの承認プロセスを緩めていて、アソシエイトでも配信オッケーにしている
VCコンテンツは今後コモディティー化しそう。 https://t.co/SpDr5t0VRU
最近だとどのVC、そして特に注目されている若手VCはSubstackを使ったメルマガ配信を行っている。VCが多くいる中、自社ブランド、知識、ネットワークを示すためにやっている。良いスタートアップほどVCが創業者にピッチする時代になっている。
そして今後はクリエイターやメディア運営者などが自社ファンドを作る流れになる。実際に人気メルマガサービスMorning Brewの創業者兼COOのAustin Riefさんもファンドを立ち上げた。
引用:AngelList
そして自社の優位性や手伝えることをよりオープンにするはず。最近ローリングファンドを立ち上げたSahil LavingiaさんもNotionを使って起業家とどう接するのか、どう手伝えるのかを解説している。
Linear Commerceまとめ
このLinear Commerceはもちろんコンテンツだけではなく、Instagram、Snapchat、Pinterestなどのソーシャルプラットフォームの話も関わる。今となっては消費とインフルエンスが一緒になり、そこで優位性を作るにはブランドはかなりクリエイティブにならなければいけない、今のトレンドを常に読み取らないといけないようになった。
そしてSNSは既にユーザーのアテンションをクリエイティビティーやエンタメ性で勝ち取った今、コマースやマネタイズの部分まで支配しようとしている。結果として各プラットフォームに依存しなければいけない状況を各SNSは作ろうとしている。これはメディア業界で既に見た流れでもある。これを避ける解決法はブランドがオーディエンスを勝ち取り、自社メディア化すること。
今後の成功する会社はこのメディアとプロダクト・コマース・マネタイズ方法の境目にいるブランド。両軸できない会社はそれほど成長しない可能性がある。ブランド側からするとメディアを活用してオーディエンスの獲得とコンバージョンを上げて、メディアからすると広告モデルから離脱してよりマネタイズできるビジネスへ切り替えることが可能になる。
よって、今後の世の中ではブランドの優位性はメディアでオーディエンスを持つこと、そしてメディアはアテンションをマネタイズできる試作が優位性となる。
メディアとコマースの分析が混ざり始めている。
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) July 12, 2020
アーリーステージのD2C創業者とメルマガを作っている人たちは似たような課題(コミュニティ作り)に対して考えなければいけない。 https://t.co/WlZoQw6J8g
ブランドは社説により投資しても良いと思う。今までは動画や写真でブランドの歴史を見せがちだったが、意外と長文エッセイとかも今後響く可能性がある。好きなブランド、カルトブランドとかの創設物語、プロダクト開発の道のり、ブランドが抱えた課題や大変さはファンは読みたい。ナイキが過去に出した「SHOE DOG」より短く、デジタルファーストなものは今後流行ってもおかしくない気がする。
ソーシャル x ブランド x メディア = 課金型コミュニティモデル
この三つの要素が色んな新しいブランドとそれを支えるツールやプラットフォームを生み出してきたが、この三つの要素が融合化して、新しいビジネスモデルを作っている。それは課金型のコミュニティ。
発想自体は新しくないし、過去に何度か見たことがある仕組みでもある。特にアーティストのファンクラブとかだとこのモデルを使いがち。まずはよく見る月次で支払うと過去にアクセスできなかったコンテンツやアクセス権がもらえる。この仕組みを最近の課金型コミュニティは進化させ、コンテンツ配信者やブランドのライフスタイルを課金型のデジタルソーシャルスペースと組み合わせて、ユーザーのエンゲージメントやインタラクションを発生させる場所を作っている。ここではコミュニティは受け身としてコンテンツを受けるのではなく、ディスカッションを行ったり、ブランドに貢献できるアクションをするような環境となっている。
テック業界ではSubstackを使って月額でコンテンツ + コミュニティを購入するパターンが増えている。例えば私が課金している元Airbnbグロース担当者Lenny Rachitskyさんのメルマガだが、そこでは良いコンテンツを読むためだけではなく、Lennyさんが運営するSlackグループ「Friends of Lenny’s Newsletter」に参加して、そこで意見の交換をしあったり、アドバイスしあったりしている。
以下は実際のSlackグループの様子。アドバイスを求めたりするのが日常的に行われている。
引用:Friends of Lenny’s Newsletter Slack
個人的には、ここで数名と繋がり、その繋がり経由で投資案件の紹介や業界の人と話すことが出来ました。
単純にユーザーが集まる場所を作るだけではなく、重要なのはデジタルコミュニティガーデンを作ること。デジタルスペースを作るだけではなく、キュレーションされた業界トップの人たちが集まるノウハウの共有、そしてそれに合わせてインフラが必要となっている。
キュレーションは常に業界で話題になっているトピック、記事、ポッドキャスト、動画などに目をつけて、共有して、コミュニティの中と外でどういう会話が起きているかをみながらどのコンテンツをコミュニティ内で配信するかを決めること。そしてそのコンテンツに対してコミュニティにいるトップユーザーや業界リーダーたちとディスカッションやQ&Aを実施する、もしくは一緒にコンテンツを作る。
そして最も重要なのはインフラ作り。同じ質問が繰り返し出てこないようにFAQページ、コミュニティ内での良かった情報のまとめ、コミュニティ内で繋がりやすいような定期的イベントの開催などを行うのがオススメ。実際にLennyさんも最近Slackのコミュニティ内での良かったアドバイスやインサイトをまとめて送るようにしている。
Lennyさん以外に、このコンテンツからコミュニティへのシフトを上手く行っているのはRosieland、2pm、Indie Hacker、Ministry of Testing、Trends.coなど。
これを支えるプラットフォームはSlack、Discord、Telegramなどで、最近だと課金型コミュニティ専用のプラットフォームであるGeneva、Mighty Networks、Circleなどが出てきている。ただ、新しいプラットフォームのUIを見ると、かなりSlackやDiscordと近しいものばかり。
違いはプラットフォーム内にコマース機能やリアルタイムの音声機能(Clubhouse的な機能)を追加しているが、実際に音声機能はDiscordでも既に存在する。
DiscordがどんどんB向けのユースケースを広げている。特にリモートワークとかだと使いやすい部分がいくつかある:
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 11, 2020
・電話会議以外に、ボイスチャネルで常に人と話せる環境がある
・簡単、複数人とスクリーン共有ができる
・チャネル内で音楽を流せる https://t.co/IDLyKj1mbg
結局メンバーシップモデルは今までのD2C化の流れと同じく、ブランドがユーザーとより近しい関係性を築くためにある。
このブランド内のコミュニティ化はより小さく、プライベートでニッチなSNSが出てきていることとかぶる。今後はブランドだけではなく、一つの職種、場所、ステータス(例:大学生)などでコミュニティやSNSが作られてもおかしくない。
この三つの要素が融合化していく中で、重要なのは全部に共通するオーディエンス、アテンション、そしてトラスト(信頼)。
結局どのメディア、ブランド、SNSも最も重要視するべきものは人のアテンション、いわゆるプロダクトやブランドにかけてくれる時間。Snap、Facebook、Instagram、TikTokが何故こんなにIRや投資家向け資料に利用時間を大きく書くかと言うと、ユーザーの最も限られたものは時間であるから。その時間をキャプチャー出来る価値はとてつもなく大きい。
このオーディエンス・アテンションファースト、そしてそのアテンションをマネタイズするためには信頼を作らなければいけない。10年前からこの概念に投資してきたGlossierや10年以上も前からこの話をしていた私の尊敬するマーケターのGary Vaynerchukはこのビジネスモデルがワークすることを証明している。
次世代ブランドはコンテンツを作るところから始めよう
インターネット上でのコンテンツ量は凄まじいほどあるが、実は優良コンテンツの需要はありえないほど高い。インターネットによってよりグローバル化、よりアクセスできると同時にコンテンツ消費者の数が圧倒的に増えたが、コンテンツ製作者が追いついていない。ここにビジネスチャンスがある。ブランドや個人が優良なコンテンツを頻繁に出すことによって、アドバンテージを持てる。
どのブランドもInstagramやTikTokを見てどうがコンテンツを出さないといけないと思っているが、実はテキストと言う大きな市場を忘れている。もし今私がブランドを始めるとすると、まずはブログから始めると思う。今のトップブランドのBarstool Sports、Hodinkee、Goop、The Hustle、そして直近でBusiness Insiderが$75Mで買収すると発表があったMorning Brewを見ると、高いクオリティーで頻繁なペースで出すコンテンツ配信者。
インターネットは平均以上のコンテンツでも、頻繁なペースで出す平均以上のコンテンツであれば良い評価をつけてくれる(今現在は)。これを最も証明しているのはTwitter。ここ数年でアメリカではFastのMatthew Kobachさん、Twitch所属のJack Applebyさん、そして元The KnotのAmanda GoetzさんなどTwitterで頻繁に優良コンテンツを配信してオーディエンスを作り上げた人たちがいる。これはどの起業家ができること。
どのブランドオーナーも自分の売っている商品に関してかなりの熱意を持っている。その熱意を使ってコンテンツ制作を軸としたブランド戦略をとるのが次世代ブランドのあるべき姿。Twitterでも、ブログでも、ポッドキャストでもそうだが、メディア・コンテンツを続けて作るのは大変なこと。実際にOff Topicもコンテンツを作り続けるのに苦労している。すぐに結果が出ないし、意外とヒットすると思うコンテンツがバズらなかったりもする。ただ、やり続けること、オーディエンスを作り続けることを行うと、将来的にマネタイズしやすくなる、そしてカルトブランドを作りやすくなる体制が出来上がる。
そして次のパートでも話すが、努力を見届けるファンたちは自社のコンテンツを好きになるだけではなく、その努力に対しての信頼関係を作れるようになる。このアテンションと信頼関係を発生させられる会社が圧倒的に強くなる。
そのオーディエンス作りを最も短期的に見ると作り上げられているのはクリエイター。
クリエイターが次世代ブランド
ここ20年でアテンションエコノミーがSNSなどをきっかけに大きく進化していて、このオーディエンス・アテンションが必ず必要として世の中を見ると、Morning Brew、David Dobrik、MrBeast、Sway Boys、Nelk Boys、Charli D’Amelio、Emma Chamberlain、Barstool Sports、Fastなどが個人的に次世代ブランドとして見ているのかが分かる。クリエイターが新しいブランドとなる時代になった。
2010: make a product, build an audience.
— Web Smith (@web) September 17, 2020
2020: build an audience, sell a product.
事例を上げた中で明らかになり始めていると思うが、このアテンションエコノミーを制する組はクリエイターだと思っている。もちろん、クリエイターにはまだまだ足りない部分や弱点は多いが、それを超えていくクリエイター、クリエイターが作るユニコーン企業が今後出てくると信じている。
ブランド、特にC向けブランドにとって最も競合として怖いのはクリエイターであるべきだと思っている。これには3つの理由がある。
1. クリエイターは信頼関係とライフスタイルを売っている
2. 誰でもクリエイターになれる時代になった
3. クリエイターが起業家になり、真剣にプロダクト開発について考え始めている
ここで重要なのはクリエイターはインフルエンサーとは限らないと言うこと。今となってはインフルエンサーと言う言葉より、クリエイターか起業家と呼ぶべきだと思っている。それは後ほど説明するように、クリエイターたちは影響を与えるビジネス以上のビジョンを持ち始めているから。場合によってはクリエイターは自分でメルマガを初めて、それが大きくなって会社化するMorning Brewになるかもしれないし、場合によっては会社化してInto the GlossからGlossierになるかもしれない。
トップクリエイター = 起業家
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 11, 2020
MrBeastのマネージャーのReedさんが言うには、「コンテンツクリエイターと提携しない。起業家と提携したい。」
Yes Theoryマネージャーも、「クリエイターはインフルエンサーの扱いではなく、スタートアップと同じ扱いであるべき。」 https://t.co/qouhLsHWB5
クリエイターは信頼関係とライフスタイルを売っている
過去の記事でも話したように、Instagram美学の影響で今ではよりリアル、本音、パーソナル、プライベートなクリエイターやコンテンツが求められている。例えば以下はセレブのビヨンセのInstagram投稿を二つ見てみよう。一つは雑誌にも出てきそうな、プロが撮ったような一枚。そして右側の投稿はビヨンセのパーソナルな部分を見せた一瞬。結果として、右側の投稿が5倍のいいね数と18倍のコメント数がある。
今後はどの人も会社もメディア企業として自分を認識しなければいけない。そしてその中で「personality(人格)」が今後の優位性になる。特にクリエイターだとそう。David DobrikのファンはDavid Dobrikを友達と思うから、そしてDavidさんのライフスタイルが好きだから彼のグッズを買う。
もう一度言うが、人格はありえないほど強い優位性。
YouTuberのLogan Paulさんはグッズを売り始めた1年目に$40M〜$50Mの売上を作れた。今となってはトップクリエイターたちはグッズだけで$80M〜$100M、いわゆるトップティアのD2Cと同じレベルの売上をグッズ販売のみで作れている。
この数字を作れている理由は今までの努力(コンテンツ制作)を認めたファン層がいるから。過去記事でDavid DobrikやMrBeastの解説をしたが、クリエイターはめちゃくちゃ努力と工夫をしてオーディエンスの理解とユーザーに合わせたコンテンツを作り続けている。MrBeastは13歳からYouTubeコンテンツを作り始めて、1,000動画ぐらい投稿してからようやくバズり始めた。MrBeastは2015年10月4日に「5年後の自分へ」と言う動画を作ったが、当時は8,726人のYouTube登録者、合計180万再生回数があって、5年後には100万人の登録者が欲しいと言ってた。今現在、MrBeastは4,420万人の登録者、合計再生回数は70億を超えている。
David Dobrikも何十時間とかけて動画編集を行っていて、Emma Chamberlainも一本の20分動画を作るために20〜30時間の編集をしていると語っている。今となってはコンテンツが大幅に増えている中で、重要なのはクリエイティビティーだけではなく、編集とキュレーション能力。クリエイターは何時間も撮影を行っている。ファンは、そのクリエイターが良い素材だけ集めてくれる編集とキュレーションをしてくれるのを信じてコンテンツを見てくれる。
信頼性を作るには、キュレーションが非常に重要になる。
話は一旦それるが、大学でソフトウェアエンジニアの勉強をすると収入がもらえると同様に、今後はクリエイタービジネスが大きくなり、編集能力が評価される時代になる。実際に今では多くのクリエイターは自分自身で編集を行っていて、そこのクリエイティブのディレクションや編集者を常に探している。この業界に興味ある人がいると、動画編集やクリエイティブコントロールの勉強をすると良いかもしれない。
ここで重要なポイントは、アテンションと信頼性の違い。アテンションはユーザーを引き寄せる要素。信頼性はそのアテンションをロイヤリティー、そしてマネタイズに変えられるもの。だからこそフォロワー数が多いInstagramユーザーでも一切グッズが売れなかったり、ハリウッドセレブがアパレル商品を出しても購入してくれない人がいっぱいいる。アテンションは信頼性とはイコールではない。フォロワーは信頼性とはイコールではない。フォロワー数はマネタイズのポテンシャルとイコールではない。逆に、信頼性はマネタイズのポテンシャルと相関している。
会社・組織より人の方が信頼しやすい。だからこそクリエイターは強い立場にいる。そのクリエイターの一日をYouTubeで見たり、撮影の裏を見せたりすることで親近感と安心感、そして共感の気持ちが湧いてくる。「意外と普通の人間なんだ」と思うようになる。
だからこそ「ブランドの裏の人間」と言うキーワードが出てきている。ブランドも商品だけではなく、そのブランドの人たちを前に立たせることによって、クリエイターと同じような信頼関係を作れるようになる。結局ブランドもクリエイターと同じ「人格」を作るのが必要となる。
ブランドがクリエイターっぽくなるには、「人格」を作ること
人格をうまく作れているかを知るために、まず自分のブランドに対して、以下質問をしなければいけない。
・ユーザーはブランドとエンゲージ/何かしらのアクションを起こしているのか?
・プロダクトに対して刺激を受けているのか?
・プロダクトを見つけて閲覧するプロセスはただの時間の無駄として見られているのか?
・競合と似たようなものしか提供していないのか?
・競合以外にNetflix、TikTok、友達と話す時間をわざわざ切り取って、自分のブランドのコンテンツ・プロダクトに時間を使うべき理由は?
・家族やリアルなコミュニティに使える時間を取っているだけなのか、本当に意味や価値を与えているブランドなのか?
・ブランドとして反対する社会・システムに貢献はしていないのか?
ブランドとして、こう言う難しい質問に回答するからこそ、ブランドとしての人格が分かるようになる。ブランドとして何を重要視して、何に時間を使いたいを知るのも重要。ブランドとして、何にアテンションをかけるかを知るのが重要で、そのアテンションをかけるべきものは年々進化して変わるため、会社としてもアイデンティティー・人格を徐々に変えていかないといけない。
Microsoftは良い事例。CEOのSatya Nadallaさんが入る前は「古い会社」として知られていたのが、SatyaさんはMicrosoftが危機的立ち位置にいることに気づき、古いと思われていたWindowsのOSからクラウドビジネスへとアテンションをシフトさせた。
最近のD2Cブランドで言うと、Off TopicのInstagramアカウントでも紹介したFacultyがこの人格をうまく活用する事例となる。Facultyは新しい男らしさのためのグルーミングブランドと見せかけたムーブメントブランド。10個以上のロゴを持ってプロダクトのロードマップがない会社で、ドロップ式に出すプロダクトに応じて会社のアイデンティティーが変わるようにしている。
Facultyは多くのロゴを抱える理由は正直な自己表現の概念を信じているブランド。同じプロダクトでも人によって見え方が違うため、ブランドとしてはユーザーの人格を出来るだけ取り入れたいために複数のロゴを提供しているようにも見える。これと似たブランドがSnifという香水ブランド。Snifは匂いを説明しない代わりに、ユーザーに匂いを説明してもらうようにお願いしている。人によって匂いの表現の仕方や体験で表現がかなり差があることをSnif創業者が知ったため、あえて自由な人格を保つようにした。
引用:Snifサイト
クリエイターも人として意見を変えるように、最近のブランドもこのように意見を変えたり、人格を変えられるようにしなければいけないかもしれない。以前記事にしたMSCHFもコアな信念は同じでも、常に文化と一緒に変わり、それに合わせたプロダクトを作ろうとしている。MSCHFは意見というよりは世界の見方を売りとして持っている。
クリエイターっぽいブランドとして存在するには、今の世の中のスピードに合わせた対応せいとピボット能力が必須になりそう。もちろん直近のコロナ以外でも、カルチャーシフトは常に起きていて、それに合わせた人格とブランドとして作り直さないといけない。Crocsがこの良い事例となる。2002年に始まり、2006年にピークの人気だったCrocsは2010年頃から大分世間から飽きられていた。2010年にTimesが「最も悪い発明トップ50」にまで選ばれた。2011年には予想を下回った決算発表の影響で株価も1日で40%下がった日もあった。
そんな中、2014年にCrocsのPresident、後にCEOとなるAndrew Reesさんがブランドの人格を作り直すプロジェクトに取り掛かった。ブランドの人格を変えるためにチームと戦略を変えて、それを組織内に染み込ませるためにかなり時間が掛かったと言う。
結果、Crocsは人気クリエイター・アーティストのPost Maloneとコラボ商品を提供し、事業が復帰した。最近でもBad Bunnyとのコラボ商品が16分で売り切れになったりJustin Bieberとコラボ商品を出して、注目ブランドとして見られている。
引用:Crocsサイト
今の自分の人格やプロダクトに対してオーセンティックでありながら、世の中の流れやトレンドを見て対応性のあるブランドとして存在するのが必要となっている。その人格を作るためにはユーザーとの対話、ユーザーのアクションや行動が重要になってくる。クリエイター、いわゆる人の人格が周りの友達、家族、知り合い、仕事仲間で影響されると同じく、ブランドもそうあるべき。ただ、多くのブランドは「About Us」ページで自分の紹介をするのみで、自分たちのビジョンを押し続ける傾向にある。
ブランドとして意見を持つより、世界観を持ち、どうコミュニティに貢献をできるかを探ってからこそ人格が出てくる。逆に自分のブランドで始まって終わるアイデンティティーは最終的に無くなると思う。だからこそ、ブランドとしてコンテンツを出して、出し続けないといけない。一回のAbout Usページだと進化が見えない。音楽アーティストが年々出す音楽が変わるように、ブランドもプロダクト、テイスト、コンテンツを変えなければいけない。Billie Eilishも年々ファッションと音楽が変わっていることを認識しているし、その変化が良いと語っている。
ブランドとして重要なのは人格を保ちながら、どのタイミングでピボットするかを見なければいけない。今のクリエイターエコノミーが広がっている中で、アメリカではコラボ商品を出すのはもう遅くなるかもしれない。上手くピボットできたKanye West、U2、Rihannaなどのクリエイターたちを見ると、人気度がピークだったタイミングで進化し始めていた。このブランドの進化を会社のDNAとして取り組むのが大事。だからこそFacultyやMSCHFみたいな、最初から変化を受け入れるブランドが注目されている。
変化は恐ろしいかもしれないが、停滞しているブランドの方が個人的には恐ろしい立場にいる。ブランドとしては、自分の人格、ブランド、ビジネスモデルに対して常に危機感を持ちながら、次世代の流れを読み取るのが重要となる。自分でありながら、何かの人格を持つのが、大事。クリエイターとしては人格を持たないとアテンションを獲得できないのが理解しているが、多くのブランドはその理解がまだ浅い。
クリエイターは既にライフスタイルを売り込めている
クリエイター、特にトップクリエイターが持っていて、ブランドが持っていないものはライフスタイルを売り込めること。これも直近の記事で書いたように、どの会社も大きいブランドになるためには最終的にライフスタイルを売らなければいけない。ライフスタイルを売り込むためには時間がかかるのが普通だった。それはブランドは今まで商品や広告などを通してブランドとしての意思や思い、ビジョンを伝えて、それをやり続けることによって信頼性とライフスタイルを伝えるようになった。
クリエイターは週に数回、場合によっては毎日自分の意思やビジョンをコンテンツを通して伝えているので、より早くライフスタイルを売り込むことができる。
The merchandise industry is fascinating.
— Web Smith (@web) October 9, 2020
There are creators selling $1 million + per month in tees and hats.
There are creators who hawk their wears all day and sell just dozens.
Here's what I've learned:
People aren't buying a shirt, they're buying the seller's lifestyle.
誰でもクリエイターになれる時代になった
ソフトウェアやD2C・リテール業界と同じく、クリエイター向けのツールやプラットフォームの開発のおかげで誰でもクリエイターになれる世界になり、クリエイターとしてのマネタイズオプションが増えた。
Signal Fire調査によると、今ではグローバルのクリエイターの数が5,000万人になっていると言われている。
引用:Signal Fire
9年前の2011年にMarc Andreessenさんがテック業界では誰でも知っている言葉「Software is eating the world」(ソフトウェアが世界を飲み込んでいる)と語ったが、本当にソフトウェア業界、テック業界は変わった。昔だと自社サーバーやインフラを作らなければいけなかったのが、今ではAWSからStripeまで、全てのインフラをほぼワンクリックで作ることが出来る。ソフトウェア企業を作るハードルが圧倒的に下がったおかげで、色んな企業にテック要素を入れた新しい市場やビジネスが生まれた。
この同じ流れがD2C・リテール業界でも起きている。それをそもそも可能としたのがShopify。元々Amazonがコマース社会を完全に制すると思われた中で、Shopify CEOのTobi Lütkeさんは違うビジョンを掲げていた。
「Amazonは帝国を作ろうとしている。Shopifyは反乱者たちに武器を与えている。」
Q: #asktobi people are starting to characterize Shopify as the next Amazon. Is that the right lens to view your strategy?
— Tobi Lutke 🌳🌲🛒🕹 (@tobi) October 11, 2019
- @jwangARK
A: pic.twitter.com/0fnzKdBoYr
Shopifyは誰でもD2C企業を作れるインフラの一つであり、D2Cブームによりこのインフラがかなり整い始めた。まず、D2Cのバリューチェーンを見ると、こんな感じになる。
そして直近のツールなどを見ると、D2C業界のバリューチェーンがどれだけカバーされているかが分かる。
どれだけ簡単にD2C企業を作れるかをステップ毎で説明すると:
1. 商品を選ぶ(AmazonやGoogleでトレンド検索で選べる)
2. Alibabaでその商品を作れるサプライヤーや卸を見つける
3. Shopifyでオンラインストアを作る
4. Facebook、Google、Instagramなどでユーザー獲得(ここもMarketerhireなどで外注できる)
5. Stripeで決済機能を導入
6. ドロップシッピングなどで直接製造者から商品をユーザーに送ってもらう、もしくはFlexportで輸入して国内の配送会社で配送する
7. 顧客からの質問はZendeskやKustomerで対応
8. 返品はReturnlyなどで対応
それ以外にパッケージはLumi、レビュー機能であればYotpo、リファーラル機能であればTalkableやExtoleなどツールは今では無限にある。もちろんほとんどの会社は全部の領域でツールに頼っていなく、むしろよりバーチカル化出来ているHarry’sやHausの方が優位性があると言われているが、実態としては誰でもD2Cブランドを立ち上げることが出来る時代になった。
逆に大手のAmazon、そしてShopifyのようなツールを初め、D2C的なC向けブランドが数え切れないほどの量になったおかげで、D2Cブランドがコモディティー化した。コモディティー化すると物を買うステータスと価値観がなくなってしまう。クリエイターが人気になったのはこのD2Cブランドのコモディティー化しているから。今まではセレブが商品をプロモーションしても、ただ受動的な行為だった(テレビCMを見るだけなど)。インターネットはこの概念を覆して、今ではクリエイターをフォローして、質問して、インタラクティブに接して、彼らの人生を除ける時代になった。クリエイターは今となっては尊敬しながら友達感覚として見るようになった。
人は友達からの紹介で最も商品を買う確率が高い。Shopifyなどのツールが何もかもコモディティー化した今、最も重要なのは友達から紹介してもらうことであり、今はクリエイターが最も友達に近しい広告的存在。
結局全員同じ武器(ツール、ソフトウェアなど)を使えるようになると、会社の優位性はブランディングやオーディエンス・コミュニティへシフトし始める。このサイクルは以下のようになっている:
1. 革新的なことをイノベーターがする
2. 数名・数社がイノベーターの真似をする
3. 革新的なことが出来るようなソフトウェアが開発される
4. 革新的なことが普通になる
5. 全員イノベーターと同じことをやろうとして、優位性がわかりにくくなって、オーディエンス育成とブランディングにフォーカスがシフトする
6. キュレーションが大事になる
7. 次のイノベーターが出てきて革新的なことをする
これは色んな業界でこのサイクルが起きている。メルマガ業界ではThe StratecheryのBen Thompsonがイノベーターで、彼と同じことを誰でもできるようにSubstackが生まれた。Epic GamesやUnityもゲーム開発を簡単にするようなソフトウェアを提供している。クリエイターエコノミーでもこのサイクルが起きていて、革新的な初期YouTuberやインフルエンサーから時代は変わり、今となってはアプリ開発、動画コンテンツ制作、ゲーム開発、サイト開発、ARコンテンツ制作などクリエイター向けのプラットフォームやソフトウェアがかなり存在する。
以下はクリエイターエコノミーのカオスマップ。
引用:Signal Fire
コロナの影響でEC業界と一緒にクリエイターエコノミーも急成長している。色んなサービスを見ても、過去ありえなかった成長率を達成している。
・Gumroad:Gumroad上での売上があったクリエイターが40%増、2020年1月GMVの$8.3Mから6月には$12.5Mまで成長。
・Etsy:去年比で売上がマスクを含めなくても93%増(含めると147%増)、売手数が35%増、買手数が41%増。
・Patreon:クリエイター売上が半年で50%増。
・Twitch:大幅に視聴者数とチャネル数が増加
引用:Generally Speaking Substack
今ではトップクリエイターたちが新しい、革新的なことを行おうとしている。それはクリエイター・インフルエンサーを支えていた広告モデルから離れること。
クリエイターが起業家になり、真剣にプロダクト開発について考え始めている
最近だとクリエイターは広告モデルに頼らずにマネタイズ、そしてクリエイターからブランド・スタートアップへと進化させようとしているのが見えている。コンテンツ製作者だけではなく、ちゃんとした会社やビジネスを立ち上げて、長期的にスケールできる事業を作りたがっている。
この進化を理解するためには、まずクリエイターのマネタイズ方法を知らなければいけない。
広告モデルからインフルエンサー2.0のスポンサー提携への進化
今までのクリエイターはオーディエンスを作り上げて、信頼関係を築き、それでブランドからのスポンサー契約(商品プロモーション)で儲かっていた。実際にインフルエンサーマーケティングの2019年の市場規模は$8BだったとBusiness Insiderが調査している。
ただ、まずAdSenseなどプラットフォームからの広告収入は正直そこまでスケールしない。登録者1100万人のKevin DavidさんはAdSenseで年間$400K、登録者1120万人のMarina Mogikoさんは150万再生回数の動画でAdSenseから$10K、そして登録者150万人のShelby ChurchさんはYouTubeから年間で$140Kしかもらっていない。
しかもYouTubeのコンテンツによってはAdSense収入をもらえない。例えば560万人のYouTube登録者のいるNelkは合計600万再生回数の動画でも放送禁止用語などの使用によってAdSense収入はゼロ。David Dobrikも同じく、毎月$275Kから今では$2K以下のAdSense収入となっている。
そこで次の広告収入がブランドからのスポンサー契約。これはブランドが自社商品をインフルエンサーにプロモーションしてもらうように、プロダクトを動画内で説明してもらう仕組み。クリエイターがブランドから商品をもらって、同時に動画内で話してもらいたい特徴を聞かされて、それを上手くコンテンツの中に組み込むようにしている。よく見たことがあるのが、動画の途中で、このようにブランドの商品を説明する形:
これはインフルエンサー1.0のパターン。これは過去のセレブがCMでブランドの顔となることとほぼ同じ。これを変え始めているのがDavid Dobrik。DavidさんはよくSeatGeekと言うチケット販売サービスからスポンサーされる。実際にSeatGeekのスポンサーによってDavidさんは何台もテスラや高級車を友達にプレゼントしている。実際に以下動画はSeatGeekがスポンサーでDavidさんがアシスタントにベンツをプレゼントした動画。
このSeatGeekとDavidさんの関係性はかなり特殊な物。実際に最初にSeatGeekがDavidさんと組んだときに、SeatGeekが「talking points」、いわゆるDavidさんにSeatGeekについて何を伝えてもらいたいかを送ったが、Davidさんはそれを断った。自分なりに、自分のコンテンツの一部としてSeatGeekを取り組み、一人のキャラクターとしてSeatGeekを動画に組み込みたいと語った。SeatGeek担当者のIan Borthwickさんはかなり渋ったが、承認を出した。その結果が以下動画。
この動画で重要なのは、SeatGeekがどれだけDavidさんのコンテンツで重要な存在なのか。SeatGeekがいなければ、ワールドシリーズのチケットを友達にプレゼントできなかった。実際にSeatGeekのIan BorthwickさんはDavidさんの動画に何回も出演してますし、DavidさんがSeatGeekのIanさんを電話してお金や車を要求するのがDavidさんの動画で自然に起きいる出来事となった。
クリエイターのコンテンツ内としての重要キャラクターとして登場させるのが今後のインフルエンサーマーケティング2.0となる。実際にSeatGeekはDavidさん以外にも、上手く動画にブランドを組み込ませている。その良い事例は「Broke Bitch」というミュージックビデオ。
ちょうど2:37あたりで動画が止まって、ミュージックビデオのストーリーの一貫で交通事故を起こしたアーティストのTMGはSeatGeekに車を買うようにお願いして、最終的にはミュージックビデオの制作予算を払ってもらう。このようにインフルエンサー2.0では、ブランドがクリエイター内のコンテンツの一部として入ってくるようになる。
ブランドはクリエイターに対して今後はより自由度を与えないといけない時代になってきている。
How should brands work with creators?
— TZ • TIFFANY ZHONG (@TZhongg) October 16, 2020
Trust them.
Learn from these brands:
🎟️ @SeatGeek + @DavidDobrik, @codyko @tinymeatgang (@ianrborthwick)
🔋 @GFuelEnergy + gamers, @DavidDobrik Tesla giveaway (2.8M comments)
🌯 @ChipotleTweets + @100Thieves
👟 @Nike + @Casey pic.twitter.com/SugK3hC8hY
そしてブランド・スポンサーがよりコンテンツに入り込むと同時に、トップクリエイターたちはスポンサー契約でもらったプロダクトやお金を自分たちの収入ではなく、コンテンツの一環として扱い始めている。David DobrikはSeatGeekからもらうテスラを自分のためではなく、友人や知り合いにプレゼントし、そのリアクション動画でYouTube再生回数を獲得している。同時にMrBeastもスポンサーからのお金を使って家や無人島まで購入して、それをチャレンジ動画というコンテンツに変えている。
スポンサー金を動画に取り組むことで、より膨大な制作予算で今まで出来なかったこと(例:無人島を購入してチャレンジ動画にする)が可能になる一方、そうなるとクリエイターはこのスポンサー契約から収入が期待できなくなる。
グッズ化、コンテンツ化、コミュニティ化
最近だとスポンサー契約や広告モデル以外でクリエイターはマネタイズ方法を探っている中、最も活用されるパターンはグッズ・アパレル販売。大体Tシャツ、パーカー、ステッカー、iPhoneケースなど、基本的にはありがちな商品が多い。FanjoyやYouToozみたいなクリエイターのグッズ販売サイトも立ち上がっている。
引用:Fanjoyサイト
Fanjoyは最近EC販売だけしてたのを、大手アパレル企業のMadEngineと提携して大手小売店へのオフライン販売を始めることを発表している。
インフルエンサーのアパレルグッズなどをECで販売するFanjoyが大手アパレル企業Mad Engineと提携、大手リテーラーへのオフライン販売を実行予定。https://t.co/Yp9LMj4DDJ
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) August 21, 2020
Logan Paulさんが初年度のグッズ販売で$40M〜$50M儲かったと同じく、トップティアのクリエイターはグッズ販売でめちゃくちゃ儲かることが出来る。
さらに有料コンテンツや課金型コミュニティを通してマネタイズするクリエイターも増えている。OnlyFans、YouTube、Patreonなどを活用するパターンが多い。最近だとCardi BもOnlyFansページを作成した。
引用:OnlyFans
この課金型コミュニティを一番上手く活用しているのはLogan PaulのMaverick Clubというコミュニティ。後ほどこの「Maverick」というネーミングの良さについて説明するが、彼はどのクリエイターよりもクリエイターエコノミーの研究を実戦を行っている。以下Maverick Clubの紹介動画の通り、彼はコミュニティメンバーに対して限定コンテンツ、限定グッズ、無料配送、ディスカウント、毎月100万円当たれる抽選、毎週メンバーにランダムでFacetime、定期的にメンバーとディナー会の開催、そしてLoganさんの私物(初回は彼がカスタム車のドッジチャレンジャー)など、かなりの価値を提供しようとしている。
しかも毎月$20という、Netflixのプレミアムプランの毎月$16より高い、かなりプレミアムなプロダクト。
実際に優良コンテンツとか見たことあるが、かなり面白い。例えば、どういう風にLoganさんが自分のポッドキャスト「Impaulsive」のタイトルを決めるかを、チームのチャットのスクリーンショットをメンバーに公開している。
引用:Maverick Club
クリエイターやブランドも、このような形でチーム内のコミュニケーションのスクリーンショットを撮って公開するというマーケティング戦略は今後増えそう。ファンとして必ずチェックしたくなるようなコンテンツ。
色んな課金型コミュニティの中身を見たい方は、YouTuberのColin and Samirが作った動画をご覧ください。
今後は大手クリエイターたちが課金型コミュニティだけで毎年数十億円、場合によっては100億円規模の売上を作れるようになる。例えばDavid DobrikさんがMaverick Clubと同じような課金型コミュニティを作った場合、彼の2,000万人以上のフォロワーの1%が毎月$20払っただけで、年間約50億円の売上になる。David Dobrikの影響力を見ると、1%のコンバージョンではなく、5%〜20%のコンバージョンがあっても、おかしくないかもしれない。
コモディティー商品から会社作りへのシフト
今まではリアルな商品だとグッズ、デジタルなプロダクトだとオンライン授業、コンテンツ、コミュニティ、Ebookなどを販売していたクリエイターは進化していて、マネタイズするマインドセットから会社作りのマインドセットへ変わってきている。
Barstool Sportsがギャンブルのソフトウェアアプリを提供したり、MrBeastがMSCHFと提携してゲームアプリを作るなど、今はソフトウェア開発を行っているクリエイターもいる。さらに自社商品を作っている人たちもいる。コスメブランドを作ったAddison RaeさんはCharli D’AmelioとDixie D’Amelio、コーヒーブランドを作ったEmma Chamberlain、そしてBryce HallとJosh Richardsが作ったエナジードリンクブランドの「Ani」など、クリエイターが真剣にビジネス領域を広げているのが明らか。
引用:Tubefilter
Aniのドリンクを作るのに3〜4ヶ月ぐらいちゃんと時間をかけて、BryceさんとJoshさんは工場のツアーなどもちゃんとやっている。もちろん事業アドバイザーもいるが、二人が手動で動いているビジネス。David Dobrikも最近自分の香水ブランドを立ち上げているが、それ以外にも色んな事業を立ち上げている。
David Dobrikがどんどん拡大している:
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 1, 2020
📺 YouTube
🕺 TikTok
🎙️ ポッドキャスト
👕 グッズ
📱 アプリ
🏟️ ライブイベント
そして新しく、香水ブランドを立ち上げることになった。 https://t.co/Q97lGCBf8G pic.twitter.com/Ra7mS9hSv9
最近DavidさんのSNSアプリは$4M調達していて、260万ダウンロードを達成している。
Dispoが$4M調達!チーム写真がめっちゃ良いw。
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 8, 2020
2019年12月でローンチしてから260万ダウンロードを達成している。https://t.co/cDZ87AC4j3 pic.twitter.com/fNSvweeNPn
これは一社のプラットフォーム依存、一つのマネタイズ方法に頼るのがどれだけリスクがあるかをクリエイター業界が理解し始めているから。過去にシャットダウンしたVineも色んなクリエイターがいなくなったり、最近だとTikTokが禁止になる話もあってから、余計にクリエイターは色んなプラットフォームとマネタイズ方法を作りに行っている。
TikTokで最もフォロワー数(2020年10月16日時点で9,330万人)がいるCharli D’AmelioはTikTokからYouTube、Triller、Instagram、ポッドキャスト、リアリティー番組、コスメ商品などへ拡大している。そして最近だと大手アメリカタレントエージェンシーの人を引き抜いて、自社のメディア企業を作ることを発表。
Charli D'Amelioをはじめ、Amelio家族がメディアカンパニーを立ち上げる。
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 16, 2020
アメリカの大手タレントエージェンシーのUTAのGreg Goodfriedがジョインする。
完全にKardashian家族と同じ立ち位置になろうとしている。https://t.co/gBcnOozNEk
ちなみにCharli D’Amelioはまだ16歳。今ではYouTubeで最も稼いだのが7際の子供だったり、TikTok経由でKardashian家族と同じレベルの人気度とマネタイズ能力を持つのが16歳の子と考えると、クリエイターエコノミーのインパクトに思いやられる。そしてこのような会社化するクリエイター、色んなマネタイズをするクリエイターたちは必ず増えます。
ただ、明らかなのは、クリエイターはコンテンツからグッズ、そしてグッズからそれ以外の商品やソフトウェアへ展開したがっている。それはグッズ販売自体がコモディティー化しているから。そうすると次に何が来るかというと、プロダクト。ヒップホップ業界を見ると、この流れがあった。ヒップホップと同じ流れであれば、Dr. DreがBeats、50 CentsがVitamin Water、JayZがUberへ投資するように、他のプロダクトをクリエイターが開発すると思われる。
実際にLogan Paulがこのグッズ販売の凄さ、そして今それがどう進化しているかを説明しているのがこちら。
そして重要なのは、クリエイターがプロダクトを作るには自分のブランドと相性が良いものを出さないと売れないこと。パーティー好きなNelk Boysとかはどこかのタイミングでアルコールブランドを出せば、めちゃくちゃ購入する人が出てくるはずだが、彼らが子供向けの絵本を出したらそこまで売れないはず。
自社商品を作っているクリエイターは既にオーディエンスもいるし、ライフスタイルを提供しているから、かなり信頼されてユーザーのコンバージョン率も高い。しかも元々はグッズや簡単なアパレルだけだったのが、徐々にD2C領域やソフトウェア領域に入り始めている。これだけの影響力を持つ競合、そしてこれだけのテックリテラシーやコンテンツ力を持つ競合を相手としてこなかったD2Cブランドたちは、ここ数年でかなりインパクトを感じるはず。
そんな中、どうやったら既存のブランド、もしくはクリエイターではない人が成功出来るのか?もちろんコンテンツ作りをする必要はあると思うが、それと同時にクリエイターとコラボする戦略も最近出てきている。
ブランド x クリエイターのコラボ商品
昔からセレブやクリエイターがプロダクトのスポンサーや「商品の顔になる」ということが起きていたが、一緒にコラボ商品を作るのはそこまで多くなかった。1992年にマクドナルドはマイケル・ジョーダンと「McJordan Special」というコラボ商品を作った。アメリカ中で話題にはなったが、社内の商人が降りなくて結局シカゴ市近辺でしか販売されなかった。ブランドとして未だにかなり売れているジョーダンブランドがマクドナルド社内の政治や推しがなかったため、結果としてMcJordan Specialのパフォーマンスはあまり高くなかった。
McJordan Specialから約30年後、マクドナルドは同じミスをしないように近い、McJordan Specialと同じ年に生まれたTravis Scott、通称「Cactus Jack」とコラボ商品をリリースした。マイケル・ジョーダン以来のバーガーのコラボ商品だったが、今回はマクドナルドは社内の承認を得られて、全国展開を行った。
マクドナルドはTravis Scottと提携する前には競合のPopeyesが超人気チキンサンドをリリースして、焦っていた。どのファストフードチェーン店も似た商品をPopeyesと作ったが、同じバズ、PR、行列、SNSでのエンゲージメントを作れなかった。
引用:Hawaii News
ここに対抗するためにTravis Scottと提携することを決めたマクドナルドだったが、ちょうど直近Travis ScottはNetflixのドキュメンタリーがリリースされたり、フォートナイトでコンサートを実行して1,200万人が同時アクセスで視聴、合計2,800万人弱が参加した、全米で話題になっていたアーティストだった。
Z世代はDavid Dobrikと組んでいるChipotle、SNS運営が上手いWendy’s、そして人気商品を出すPopeyesなどにいく傾向になっていて、マクドナルドは明らかにマーケットシェアを失っていた。それを復活させるためにTravis Scottとコラボ商品だけではなく、Travis Scottとコラボ商品に関するグッズ作成と広告にかなり投資した(広告だけで$100M以上使ったと言われている)。
しかも若い世代に響いたため、Z世代の子供たちがTikTok上でTravis Scott Burgerをドライブスルーで頼む時に「You know what I want」(何が欲しいかわかるよな?)と言ってからTravis Scottの曲「Sicko Mode」をかけているのがTikTokミームとなった。
結果としてグッズは即完売、多くのメディアから取り上げられ、TikTokでバズり、若い世代からの認知とエンゲージメントが高まり、それが株価にも影響があった。株価が歴代最高になったのと、購入意欲がコラボ商品をローンチした7日間で90%増。
引用:2pm
そして味をしめたマクドナルドは既に次のコラボ企画を始めている。
Travis Scottとのコラボがうまく行ったので、マクドナルドは次にJ Balvinとコラボすることになった。 pic.twitter.com/AB5W0ihpmX
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) October 6, 2020
このコラボ商品をクリエイターと作るのは最近大手ブランドがよく行っていること。AdidasはフォートナイトをTwitch配信するNinjaとスニーカーをリリースしたり、David DobrikはChipotleと新しいブリトー商品「Dobrik Burrito」を作り、Charli D’AmelioはDunkin’ Donutsとコラボした「The Charli」を作った。
Charli D’AmelioさんがDunkin Donutsとコラボした「The Charli」のローンチ後の実績を見ると、どれだけクリエイターとうまくやれば成功できるかが明らか:
・「The Charli」ローンチした日には歴代最高のDunkin Donutsアプリユーザー数を達成
・アプリダウンロードが57%増
・初日に全体の水出しコーヒーの売上が20%増、2日目に45%増
・ローンチして5日で数十万個のThe Charliが売れた
さらにTikTok上のハッシュタグ「#thecharli」が付いている動画は商品がローンチしてから48時間以内でTikTok上で1,000万再生回数を突破している。
今となってはクリエイター・インフルエンサーは商品プロモーションだけでは足りなくなっている。今はプロダクトに組み込む時代に入った。
Brand Ambassador → Product Creator
— Ian Borthwick (@ianrborthwick) October 22, 2020
Influencers can’t just promote your product, they have to be part of the product.
• Dunkin x “The Charli”
• Calm x LeBron “Mental Fitness”
• Chipotle x “Dobrik Burrito”
• McDonalds x Travis Scott
This is influencer 2.0
ブランドとブランド(例:ナイキとOff White)がコラボ商品を出すトレンドもストリートウェアとかでもあるが、これもクリエイターとブランドのコラボ商品と似ていて、お互いのオーディエンスにアピール出来るためのもの。ただ、トレンドだからやっている感じ、もしくはコラボをする意味合いが分からなければ批判もされる。最近だとSlackとCole Haansが出したコラボスニーカーもかなりの批判を浴びている。
引用:GQ
David DobrikとSeatGeekと同じく、お互いのブランドストーリーにとってフィットしなければいけない時代になっている。過去のMSCHFの解説記事でも説明した通り、このコラボ文化にはいくつかのパターンがあって、新しいブランド同士のコラボ、新しいブランド x 大手ブランド、大手ブランド x 大手ブランドでの戦略が存在する。
引用:MSCHFサイト
ブランドとクリエイターの差は、クリエイターはコンテンツなどを通してより簡単に色んなブランドとコラボが出来てしまう。Charli D’AmelioとDunkin’ Donutsのコラボ商品が売れた理由は、彼女がコーヒー好きだから。David Dobrikも同じくChipotleのファンだったから、コラボ商品を出すのはDavidさんのファンからしても、Davidさんを応援して一緒にコラボ商品を作れた気分になるが、ブランドとブランドのコラボ商品は場合によっては無理矢理感が半端ない。そのため、今後はブランド同士ではなく、クリエイターとコラボ商品を出す頻度が増えるかもしれない。
ChipotleやDunkin' Donuts以外に、Publicがクリエイターやセレブがどう言う公開株に投資しているかのプロフィールを見せたり、Fanjoyはグッズ販売、MorpheはCharliとDixie D'Amelioの別プロダクトラインアップMorphe 2をリリース、そしてGFuel Energyはクリエイター専用の味をリリースしている。
このような形でブランドがクリエイターとコラボして商品を作るトレンドも出てきている。そんな中、より新しいマネタイズ方法やビジネス化を考えているクリエイターたちは、ブランドとスポンサー契約やコラボ商品の作成をする際に、キャッシュだけではなく、株の要求もするようになってきた。
クリエイターが次世代投資家?
スタートアップとしては株は命であり、アップサイドでもある。スタートアップが成長して株価がどんどん高く評価されることによって、株を持っている人たちがお金持ちになれる。ただ、同時に初期のスタートアップはそこまでキャッシュを持っていない。高い給料も払えないから従業員に市場より低い給料と一緒に株(ストックオプション)を渡すことが多い。これはクリエイターに対しても同じことが起こりいる。
一番極端なシリコンバレー事例はグラフィックアーティストのDavid Choeさん。彼は2005年に当時のFacebook PresidentだったSean Parkerに頼まれて、Facebook本社に壁画を描いた。
壁画の報酬として、Sean ParkerはDavid Choeさんに二つのオプションを提供した。一つは$60K(約630万円)のキャッシュ、二つ目はFacebook株をもらえるオプション。当時はまだFacebookが小さかったが、Davidさんは株を選んだ。Davidさんみたいに、Facebookは色んな人と「アドバイザー契約」を提携して、0.1%〜0.25%ぐらいの株を渡していた。
もちろん0.1%と聞くと、かなり小さく聞こえるが、Facebookの株の0.1%を持つととんでもない額になる。実際に、Facebookが上場した7年後にはDavidさんの株は$200M以上の価値があり、今もし保有し続けていれば$1.4Bぐらいの価値がある壁画になる。
クリエイターやインフルエンサーが自分の影響力は人気度を株と引き換えにするのは新しくはない。過去だとUberの全従業員向けにラスベガスでビヨンセがコンサートを開催した際に、ビヨンセとジェイ・ZはUber株をもらった。$6Mのコンサートパフォーマンス費用を受け取らなかった結果、ビヨンセはUber株で$300M儲かった。
セレブ以外にも賢いアスリートもキャッシュではなく株をもらうような契約を締結している。レブロン・ジェームズは2011年に2011年にFenway Sports Groupとのパートナー契約でキャッシュではなく、Liverpool FCの株をもらった。当時の評価額が$.65Mだった株が今では約7倍の$44Mになっている。
Instead of cash, LeBron James accepted a 2% stake in Liverpool FC as part of a 2011 business deal with Fenway Sports Group.
— Joe Pompliano (@JoePompliano) August 16, 2020
Originally valued at $6.5M, the investment is now worth ~$44M - almost 7x more.
Lebron is one of the greatest athlete investors of our generation. pic.twitter.com/32CahosAUc
実際にMrBeastもよくスポンサーしてくれるクーポンコードサービスのHoneyに株を取得できるかを聞いたが、Honeyから断られた。もちろん自分のキャッシュフローを気にしないといけないし、スポンサー契約の金額は最近コンテンツ制作費として見ると株の要求をするのは厳しいかもしれないが、今後はよりアーリーステージのスタートアップに対してクリエイターが株を要求できるようになる気がする。
実際にCharli D’Amelioは若者向けモバイルバンクのStepのローンチパートナーとして提携した。株をもらったかは分からないが、恐らくもらっている。そしてStepは金融系のアプリランキングで103位から17位まで一気に上がった。
このようにクリエイターを株などで引き寄せてアテンションとロイヤリティー・ファン作りをする会社が増えてくる。今後は一部キャッシュ、一部株のディールや、株を目標達成ベースで提供するパターンなども増えている。
そして今後クリエイターがファンドが作る時代が出てくるかもしれない。実際にAshton Kutcherさんやスポーツ選手もやっているように、Charli D’Amelioさんが$10MのC向けアプリに投資するファンドを作れば、恐らく出資してもらいたいスタートアップは群がる。
実際にMrBeastのマネージャーのReed Duchscherさんはタレントエージェンシー会社のNight Media経由で今年から投資も始めている。
引用:Dallas News
最近だとNight MediaはノーコードのインタラクティブストーリーテリングプラットフォームのDorianのシードラウンドに参加したが、色んな投資家を断っていた中、Dorianの創業メンバーはNight Mediaの出資を非常に魅力的と感じたのはReedさんが持っているMrBeastはじめのクリエイターネットワーク。
今ではAngelListのおかげで簡単にファンドが作れるようになり、一人で始めるマイクロファンドも増えた中、クリエイターが自社ファンドを作るのは時間の問題。
クリエイターマネタイズまとめ
結局オーディエンスがいると、今では大きく三つの大きなマネタイズ方法が出てきている。
実際に、ここ数年でのマネタイズの進化を見るために、YouTubeクリエイターのLinus Media Groupの売上のブレイクダウンを見てみよう。まずは2016年の売上だが、グッズ販売が3%、アフィリエイトが16%とコマース系のマネタイズは少なく、ほとんどが広告より(Vesselは有料コンテンツ)。
比較して、2020年の売上を見ると、グッズ販売が5倍になっている。意外とYouTube Adsenseが伸びているが、明らかに広告以外のマネタイズ方法を見つけようとしているクリエイターが増えていることが分かる。しかもコマース系のマネタイズはコアファン層から来ているので、YouTubeの登録者数の割合からするとごくわずかにしか過ぎない。実際に1,200万人ほどの登録者の中から、1%以下のおよそ10万人しか購入してないとLinus Techは予測している。そう考えると、1%以下のユーザーが約30%ぐらいの売上を作ってくれていると言うこと。
そんな中、クリエイターにはまだ超えなければいけない弱みがいくつかある。
クリエイターの弱み
クリエイターの弱みはプラットフォーム依存しない・直接的な関係性作りする思考をそこまで持っていないこと、そして長期的にどうクリエイターから会社化、いわゆる個人の領域を超えたブランド作りが出来るのか。
課題①:直接的な関係性作り
クリエイターのマネタイズ方法が増えている中、結局各プラットフォームに依存してしまう。YouTube、TikTok、Instagram、Patreonなどもプラットフォームにいるユーザーとしてクリエイターをフォローするので、クリエイターとしてはプラットフォームが急遽なくなったらそのファンとの繋がりが消える。
TikTokが禁止になりそうになった際に、多くのTikTokクリエイターが焦ってInstagramでもフォローしてくれとフォロワーにお願いしていた。今後アメリカ政府も大手SNS企業をより厳しく見ていく中で、プラットフォームがどう変わるかが分からない。そしてクリエイターとしてはそれを避けるために色んなプラットフォームにプレゼンスを上げている中、ファンがついてきているかが分からない。実際にライブ配信プラットフォームのMixerも今年急遽シャットダウンされた。
例えばDavid Dobrikは2020年4月25日以降、今現在(2020年10月17日)ではYouTube動画を投稿していない。半年も投稿してなければ、カジュアルなファンからするとDavidさんはコンテンツ制作を諦めたのかなと思ってしまってもおかしくない。ただ、実際はDavidさんはTikTokにフォーカスしていて、そこでかなり投稿をしている。
もしDavidさんが全David Dobrikファンのメールアドレスもしくは電話番号を持っていれば、YouTubeからTikTokに移行したという連絡が出来るし、色んなプラットフォームでコンテンツを配信・投稿しても一つの場所でファンに連絡が出来る。Davidさんは実はTikTok以外にTwitch配信も始めているが、それを知っている人はそこまで多くない(まだ60万人しかフォロワーがいないのと比較して、TikTokでは2,330万人のフォロワーがいる)。
First stream, first win
— Ian Borthwick (@ianrborthwick) August 30, 2020
This would happen to only David
pic.twitter.com/A2w7pToLWr
実際にCameoなど1対1の動画メッセージを送れるプラットフォームでも、クリエイター側は実はユーザーの情報をあまりもらってなく、Cameoが何かしらの理由でそのクリエイターをプラットフォームから追い出してしまうと、クリエイターは過去話した人たちに連絡するオプションがない。結局プラットフォーム側がユーザーをキープすることになってしまう。YouTubeも最近はアカウントを禁止にしていなくても、コンテンツによってAdSenseでお金儲けできなくなるようにしている。ここ数年間で恐らくYouTubeは多くのYouTuberの広告のマネタイズオプションを減らすはず(エッジのあるコンテンツに対して動画広告を入れるレピュテーションリスクがあるため)。
MrBeastでさえ、今現在はYouTubeからスペースをレンタルしているのと一緒。もちろんYouTubeはMrBeastは重要人物として見ているので色々情報提供などはしていると思うが、MrBeastとしてはいつでもファンにメッセージを直接送れないし、ファンの情報もYouTubeが提供するものしかもらえない。大体各プラットフォームだとファンのハイレベルな属性データなどはあるが、誰が1番のファンなのか、最も古いフォロワーは誰なのか、誰がコアファン層なのかが分からない。
どのクリエイターでも、より直接的にファンと繋がって、関係性作りにフォーカスしなければいけない。そしてそれはプラットフォームがなくなっても一人一人のファンと繋がれるようにしなければいけない。だからこそ最近だとSubstackなどのメルマガ配信プラットフォーム、そしてCommunityのようなSMSプラットフォームが人気になっている。最近だとオバマ大統領もCommunityを使い始めた(※Communityは個人で出資しています)。
All right, let's try something new. If you’re in the United States, send me a text at 773-365-9687 — I want to hear how you're doing, what's on your mind, and how you're planning on voting this year.
— Barack Obama (@BarackObama) September 23, 2020
I'll be in touch from time to time to share what's on my mind, too. pic.twitter.com/NX91bSqbtG
もちろん上記ツイートに記載がある番号は彼の個人携帯の番号ではなく、Communityがオバマのために作ったSMS専用の番号。ただ、ファンからするとオバマ大統領が自分の連絡先ページに入り、直接コミュニケーションしている感覚になる。
そしてクリエイター側としても、万が一CommunityやSubstackが潰れても、各プラットフォームで獲得した電話番号とメールアドレスを活用して、ファンとコミュニケーションを引き続き取れる。
クリエイターが自分のオーディエンスを本当に持てる瞬間にクリエイター側の立ち位置が一気に変わる。よりマネタイズ出来るようになるのと、より自由にプラットフォームからプラットフォームへ移行出来るようになる。
課題②:個人ブランドから会社化されたブランディング
直接な繋がり以外に、クリエイター側で最も大きな課題は今後のスケールする際に、個人の人格以上のブランド・会社になれるのか。人格が優位性でそのおかげでオーディエンス作り、アテンション集め、信頼関係作り、そしてマネタイズが出来る一方で、クリエイターとしてあり続けないと会社として成り立たないのが現実。クリエイターとしては、今後自分の存在の大きさをメリットとしてみるか、リスクとして見るかを判断しなければいけない。
逆に個人以上のブランド・会社を作れると、クリエイター1人では成し遂げないスケールや事業展開が可能になってくる。この良い事例はEmily WeissさんがInto the GlossとGlossierを立ち上げたところ。YouTuberや動画系のクリエイターでこれを上手くやっているところは少ないのは、動画になるとより人格やパーソナリティーが重要になってくるから。
クリエイターが大きくなる際に自分の名前を使い続けるかが重要な分かれ道になる気がする。Logan Paulさんは自分のコミュニティやブランドを「Logan Paul」ではなく、「Maverick」と読んでいるのは、将来的にLogan Paulがいなくても継続して事業として成り立たせるため。もちろん名前を使ったブランドで成功する事例(例:ジョーダン・ブランド)もあるが、かなり少ない。違う名前にすると生き残れる違うブランドアイデンティティーを作ることが可能になる。
将来的にはこのリスクを避けるために一人のクリエイターではなく一つのブランドが中心となったアプローチが増えるかもしれない。今現在だとNelk Boys、Yes Theory、FaZe Clan、100 Thieves、Dude Perfect、Vlog Squadなどこの戦略をとっている気がする。
引用:週刊動画RANKING!、Medium、Sportskeeda、Seventeen、The Loadout、New York Times
Dude Perfect、Yes Theory、そしてNelk Boysは固定のメンバーが揃っている。一人一人自分のSNSアカウントなどはあるかもしれないが、基本的にはコンテンツ制作は全てメインブランドに寄せ集めるようにしている。結果、Dude PerfectであればTyler Toneyさんではなく、Dude PerfectのTylerさんとして知られるようになる。全ての価値(アテンション、ロイヤリティー、マネタイズ)を一つのチャネル・ブランドに寄せることに専念することを決めた。
グループでコンテンツ制作する違いは、同じブランドでも人の入れ替えが可能となる。Dude Perfectは2009年4月に最初に動画を投稿して、今となっては11年以上YouTuberとして勤めている。全員30歳以上となった今、今後のDude Perfectを継ぐメンバーも徐々に出てくるかもしれない。それによって元々Dude Perfectを作ったメンバーたちも引退しても収入を得ることが出来る。
Dude Perfect、Yes Theory、Nelk Boysは恐らく初期からグループでコンテンツを作り、チームとして一つのブランドを立ち上げることを決めたが、圧倒的に一人のクリエイターに力が集まった場合にどうするかというと、David DobrikのVlog Squadみたいな事例を思い浮かぶ。過去の記事でも説明した通り、David Dobrikさんは友達を動画などに呼び込み、彼が率いる「Vlog Squad」を作った。Davidさんの動画によく出演するメンバーは自分たちのチャネルも持ち、自分たちでもコンテンツを作り、お互いDavidさんのオーディエンスを活用してエンゲージさせる仕組み。
これをワンステップ先に行ったのがFaZe Clan、100 Thieves、そして過去にはTeam 10という組織。彼らは人の入れ替えをしてもブランドとして成り立つことができる証拠でもある。Team 10はLogan Paulさんの弟のJake Paulさんが作った、インフルエンサーのインキュベーター、いわゆるインフルエンサーを作るタレントエージェンシーに近しいもの。結果として色んな問題があってTeam 10はシャットダウンされたが、実際に実績をみると、事業自体はワークしていた。Team 10に入ったおかげでSNS上で爆発的に伸びた人もかなりいるし、その影響でいまだにクリエイターとして成り立っている人もいる。逆にTeam 10を辞めた人で人気が急激に下がった人もいる。
引用:Tubefilter
Team 10の課題は会社のストラクチャーとクリエイターのためのインフラをもっと提供するべきだったこと。各クリエイターに対してグッズ担当者、オペレーション担当者など提供すれば、成り立ったビジネスモデルかもしれなかった。
人の入れ替えで上手く成り立っているのはゲームのコンテンツクリエイターのFaZe Clanと100 Thieves。実際に今ではFaZe ClanはFaZe Rugさんなどで有名だが、初代FaZe Clanで有名だったFaZe RainさんはFaZe Adaptさんを知っている人は少なくなってきた。初期は大手クリエイターたちが集まったからこそブランドとして人気になった。100 Thievesも同じくNadeshotさんの権力のおかげで作り、Nadeshotも100 Thievesというブランドを押し切ったため、今となっては新しいメンバーを追加してブランドとしてスケールさせることが出来る。
これと似た現象がTikTokクリエイターたちで起きていて、それがコンテンツハウスの概念。ただ、今のところこれは単純にクリエイターたちが集まってコラボをする場所にしかなってなく、ちゃんとしたブランディングや会社化をちゃんとできている所は少ない。
個人に囚われないように、今後はクリエイター同士が集まり、グループとして会社化する時代になるかもしれない。
結論
インターネットが進化していく中、ブランドも進化しなければいけない。SNS、メディア、ブランド・マネタイズの三つの軸が融合化している中でブランドはよりコンテンツ制作に注力しなければいけない時代になっている。コンテンツでユーザーを引き寄せて人格で信頼させ、広告以外のより高いマージンビジネスでコンバージョンさせるのが周流となる。
そういった環境の中、D2C企業、C向け企業、そしてもしかしたら将来的にB向け企業の最も気にしなければいけない競合候補者はクリエイターかもしれない。クリエイターは既に人格を優位性として活用できていて、コンテンツ制作に慣れていて、オーディエンス作りができている。プロダクトではなくオーディエンスから作らないといけない今、ブランド側としてはクリエイターを上手く活用したり、自社の従業員や経営メンバーがより前に出ないといけない時代になってきている。
そんな中、色んなスタートアップが入り込むチャンスも出てくる。今後は広告モデルから直接ファンと繋がるプラットフォーム、マネタイズ方法、クリエイター向けの管理ツールなどが出てくる。クリエイター向けのShopifyが将来的に出てくると信じている。
そしてクリエイター側とすると、広告モデルから撤退し、広告やスポンサー費用をコンテンツ制作費用として扱い、違う形でマネタイズすることが必要になってきた。グッズ作りや限定コンテンツ以外にも、今ではソフトウェア開発やプロダクト開発に手を出し始めているクリエイターが多い。それ以外には株式をもらって自分の影響力を活用する戦略もある。ちなみに投資することにご興味があれば、TwitterのDMなり、ご連絡いただければ、お手伝いできますので是非コンタクトしてみてください!
今すぐに次のパタゴニアを作れと言われたら、恐らく個人的にはYes Theoryみたいな、コンテンツ事業からスタートするだろう。人格ドリブンな世界になってきた中で、コンテンツ・クリエイターは圧倒的に強くなってくるのは間違いない。ここ数十年にわたって作られてきたブランドが今後クリエイターによって違う形で似たブランドが作られる時代になってくる。
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引用:
・https://notboring.substack.com/p/if-i-ruled-the-tweets
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・https://2pml.com/2020/09/25/linear-commerce-1889/
・https://2pml.com/2019/04/22/on-linear-commerce/
・https://www.inc.com/magazine/201707/burt-helm/how-i-did-it-steph-korey-jen-rubio-away.html
・https://nathanbarry.com/billion/
・https://pitchbook.com/news/articles/barstool-sports-valued-at-450m-in-latest-win-for-sports-media
・https://en.wikipedia.org/wiki/Barstool_Sports
・https://subpixel.space/entries/come-for-the-network-pay-for-the-tool/
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・https://notboring.substack.com/p/shopify-and-the-hard-thing-about-a05
・https://www.tubefilter.com/2019/08/01/david-dobrik-seatgeek-branded-dreams-influencer-marketing/
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・https://www.nytimes.com/2012/02/02/technology/for-founders-to-decorators-facebook-riches.html?pagewanted=1&_r=2&ref=business
・https://www.youtube.com/watch?v=BhD8UeN5I6E
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・https://www.cnbc.com/2017/09/07/how-facebook-graffiti-artist-david-choe-earned-200-million.html
・https://www.youtube.com/watch?v=nqDyvtw17zs
・https://www.youtube.com/watch?v=LdaNuGAmTa4
・https://yetidistro.com/fast-launch/
・https://rosieland.substack.com/p/building-a-community-digital-garden
・https://ajasinger.substack.com/p/its-all-fun-and-games
・https://chipsanddips.substack.com/p/dip-028-out-of-bounds
・https://futurecommerce.fm/posts/insiders-054-the-existential-brand-part-1
・https://futurecommerce.fm/posts/insiders-058-the-existential-brand-part-2
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