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2022年5月の記事一覧

言葉を、聞かない

『言葉を失ったあとで』(信田さよ子✕上間陽子)は、至るところに読み返したい部分がある本だったが、特に「第5章 言葉を禁じて残るもの」がよかった。

「言葉を禁じる」ということ。臨床心理士の信田さよ子さんは、相談者の方に、自分の固有の体験を近代的家族言語で語らせないのだという。

昨日、自分の携帯電話の番号を公開して、もう10年以上、死にたい人からの電話を聞いている坂口恭平さんが、Twitterで近

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おはよう、こんにちは、こんばんは

おはよう、こんにちは、こんばんは

今がいつの何時かわからないけど、お読みいただき、ありがとうございます。

あなたも、私と同じ人間なんですよね。当たり前ですけど。

部屋はあったかいでしょうか。外は雨でしょうか。ご飯はもう食べましたか。寝不足ではないですか。コーヒーとか飲みましたか。苦いですか。お風呂入りましたか。

いろいろ、考えていますか。今月の支払いのこととか、好きな人のこととか。明日は仕事ですか。しんどいですか。元気ですか

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本能の脅迫

本能の脅迫

ここ最近、進化論とか生物学に関心を持っています。とは言っても適当な一般書を流し読みしている程度のものですが。

その理由は、私自身が、幼い頃から生物の本能に脅迫されて生きてきたのではないか、という疑問があるからです。

私の初恋は保育園の年長の時でした。初恋と言えば甘美な響きですが、要するに6歳の時点で、「遺伝子を残す」という生物の本能に駆り立てられ始めた、ということです。

そしてその時、私は恋

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ぼくがここに / まど・みちお

ぼくがここに / まど・みちお

「ぼく」や「ゾウ」や「マメ」は、それぞれに一定の体積を持ち、侵し難く空間を占有している。

それは「このちきゅうの うえでは こんなに だいじに まもられている」原理というか法則というか、事実なのである。

この圧倒的な事実。

観念ではなく物質としてある、この事実が「すばらしいこと」。

そして、生命が終わった後もなお、分子や原子に変わって同じだけ空間を占有し続けるのだから、私たちは、時間すら占

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