見出し画像

ぼくがここに / まど・みちお

ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば
そのゾウだけ

マメが いるならば
その一つぶの マメだけ
しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは
こんなに だいじに
まもられているのだ
どんなものが どんなところに
いるときにも

その「いること」こそが
なににも まして
すばらしいこと として

ぼくがここに / まど・みちお

「ぼく」や「ゾウ」や「マメ」は、それぞれに一定の体積を持ち、侵し難く空間を占有している。

それは「このちきゅうの うえでは こんなに だいじに まもられている」原理というか法則というか、事実なのである。

この圧倒的な事実。

観念ではなく物質としてある、この事実が「すばらしいこと」。

そして、生命が終わった後もなお、分子や原子に変わって同じだけ空間を占有し続けるのだから、私たちは、時間すら占有している。


あなたの御寄附は直接的に生活の足しになります。