言葉を、聞かない
『言葉を失ったあとで』(信田さよ子✕上間陽子)は、至るところに読み返したい部分がある本だったが、特に「第5章 言葉を禁じて残るもの」がよかった。
「言葉を禁じる」ということ。臨床心理士の信田さよ子さんは、相談者の方に、自分の固有の体験を近代的家族言語で語らせないのだという。
昨日、自分の携帯電話の番号を公開して、もう10年以上、死にたい人からの電話を聞いている坂口恭平さんが、Twitterで近いことを言われていた。
こちらは、「言葉を聞かない」ということだ。
私たちの日常は、小説でもドラマでもない。誰もが定義を間違えながら言葉を使い、話し手と聞き手の認識は頻繁にズレる。
自分の感情をありふれた言葉に当てはめようとして、歪める。
そこにあなたはいないし、何の魅力もないんだよ。
「傾聴」をテーマにした本が売れたと思えば、「人の話は聞くな」という本が出る。
本当の「傾聴」というのは、言葉の奥にあるものを聴くこと。
そういう本を読んだことはないけれど、おそらくそんなことが書かれているのではないだろうか。
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