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カレン族のヒーロー、スアブラックが同胞の前でONE6連勝目を飾る。手塚裕之も5連勝 ~One fight night 21

ONE CHAMPIONSHIPは、4月6日にルンピニースタジアムでムエタイ、キックボクシング、MMAのイベント、One fight night 21を行った。このイベントには、タイで人気のカレン族ファイター、スアブラック・トープラン9(スーブラック)が登場し、ロシアのウラジミール・クズミンに判定勝ちを収めた。スアブラックは、これでONE CHAMPIONSHIP参戦後6連勝となった。

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この日のイベントは、月に1回ルンピニースタジアムで行われている朝7時に第1試合開始というもので、金曜夜のムエタイファイト中心のイベント、フライデーナイトに比べると出場選手の国際色が豊かで、MMAやキックボクシング色が強い。早朝の開始時間は、アメリカでの中継時間に合わせたもの。

メインイベントはレギン・アーセル(スリナム)対アレクシ・二コラ(フランス)のONEライト級キックボクシング世界タイトルマッチで、セミはタイ・ルオトロ(アメリカ)対アイザック・ミッシェル(オーストラリア)のONEウェルター級グラップリングタイトルマッチといずれもタイ人が絡まない試合が組まれた。そして、セミセミにスアブラック対クズミンが組まれ、これが地元タイの観客にとってのメインとも言える。

セミセミに組まれたスアブラック対クズミン、様々な国の選手が出場のプログラム


会場にはペッブリー県のカレン族集落より、子供たちを中心に約50人が会場の一角を陣取った。カレン族の衣装を羽織り、ペッブリーカレン族の英雄となった、スアブラックを熱い声援を送っていた。

試合前のスアブラックと記念撮影するカレン族の同胞

スアブラックは、ペッブリーのカレン族集落に”スアブラックムエタイジム”を創設し、同胞の子供たちにムエタイを教えているが、このジム設立には、ONEの代表であるチャトリ氏も資金を提供したという。

「(カレン族を取り巻く環境から)集落では勉学の機会、良い仕事を得る機会も少ない。ムエタイはそんな環境を抜け出す良い助けになると思い、ジムを始めた。でも、ジムを始めた当初はサンドバックひとつ吊るしただけで、牛小屋のようなところだった。チャトリさんが資金を応援してくれて立派なジムを作ることができた。子供たちはスポーツなど、することがなければ悪い道に進んでいってしまう。以前、ジムがない頃は、子供たちもだらけた生活で学校をさぼったりしていた」と、試合前の紹介ビデオ中でコメントしていたスアブラック、さらに「私はONE に参戦してから、ペッブリーの子供たちのヒーローになることができた。どのようにして強くなれたかを子供たちに魅せて、彼らがプロの選手になるのであれば最大限のサポートをしたい」とも語った。

開設当初のスアブラックジム
現在のスアブラックジム
リング上で対峙するスアブラックとクズミン

スアブラックは通算戦績はONEの発表では59勝18敗(80勝以上と紹介するデータもあり)、ONEでは5勝(4KO)と全勝の27歳。対戦相手のクズミンはロシア出身の26歳、通算戦績は21勝3敗でONEではこの試合まで3勝2敗で5試合はいずれも判定決着、2022年11月には、現ONEバンタム級のムエタイ&キックボクシング世界王者、ジョナサン・ハガディーに判定負けしているが、その後は2連勝としている。

スアブラック対クズミンの試合はクズミンのテクニックがスアブラックの攻撃をうまく封じる展開、得意技の前蹴りの脚をキャッチしてからの右ストレートもクズミンは研究しているのか、なかなか決められない。逆にクズミンの攻撃もスアブラックはうまくカットし、被弾は少ない。

なかなかクズミンを捕まえられないスアブラック

2ラウンドが過ぎ、3ラウンドになると、スアブラックの首相撲からの投げが再三決まる。幼いころからの畑仕事で発達したスアブラックの太ももの筋肉から見てとれるように、スアブラックの下半身は非常に安定していて、もみ合い、首相撲の展開はスアブラック有利。しかし、なかなかクズミンを詰め切ることはできない。

いつになく慎重なスアブラックと技巧を魅せたクズミン

この試合、結局ノックアウト勝利は叶わなかったが、高いディフェンス技術を持つクズミンを文句なしの判定で下したスアブラック、勝利者インタビューでは「クズミンは上手い選手で、試合は短く終わることができないと感じました」と答えた。また「今日、初めて私のジムの生徒たちが会場に来てくれました。今日応援してくれた人、みんなにお礼を言いたいです。私はいつも言ってるのですけど、私は自分自身の為だけに戦っているのではありません。集落(カレン族の集落)の子供たちの為に戦っています」と最後に語った。スアブラックは、普段からスーパーレックとも同じジムで練習をしており、盟友とも言える仲。スーパーレック同様にタイトルマッチ戦線に浮上し、更にブレイクする可能性もある。

試合を終えたスアブラックとクズミン

当日は手塚裕之内藤大樹のふたりの日本人選手が登場、手塚は一本勝ちでONE5連勝となったが、内藤は不運な判定負けを屈した。

ジャパニーズビースト、手塚裕之対ヴァミール・デ・シウバ

手塚は「キッズリターン」で入場、MMAマッチでシウバに2ラウンドでノースサウスチョークで一本勝ち。勝利後、リング上でバク転を披露し、英語で勝利者インタビューのやり取りを行い、会場からの反応も良かった。「クリスチャン・リー(ONEウェルター級、MMA世界王者)はどこだ?でも、長く試合をしていない。カデスタムとベルトを掛けてやりたい。チャトリさん愛しています。タイトルマッチのチャンスを下さい」とタイトルマッチ出場をPRした。

デッドゥアンレック・ティーデ99対内藤大樹

内藤は3月15日のフライデーナイトに続き、間を置かず連戦。前戦はキルギスのシャーゾット・ガフトフに判定勝ち。 今回も小差~中差で判定勝ちを収めたように見えたが、デッドゥアンレックの手が上がった。あからさまな地元判定とまでは言えないが、かなり惜しい印象。前日のフライデーナイトのセクサン対麻火戦(麻火の判定勝ち)のようにダウンシーンがあれば良かった。内藤は、スーパーレック、ゴントラニー・ソー・ソンマイといった有名選手とONEで対戦し、敗北したものの判定まで持ち込んでいる。今後のONEでの活躍を期待したい。

※ルンピニースタジアム現地での観戦、写真は著者撮影のものOne ChampionshipのYoutubeより。photo credit : One championship youtube 

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