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スアブラック・トー・プラン49が4連続KOでONEドリームを叶える~ONE Friday Fights 46 

スアブラック(スーブラック)・トー・プラン49は、12月22日に、バンコクのルンピニースタジアムで行われた "ONE Friday Fights 46" において、One バンタム級(135~145ポンド)ノンタイトル戦に出場し、アイルランドのRoad of One 欧州王者、グレイグ・コークリーと対戦、初回KO勝ちを収めた。

第3試合で行われた、スアブラック対コークリー

リングネームである"スアブラック"については、スア "เสือ" はタイ語で虎を意味し、ブラックは英語の黒で、日本語のニュアンスで言うと、”ブラック企業”ならぬ、”ブラック虎”というイメージだろうか。その”ブラック虎”、スアブラックは、これでOne Championship に参戦後、4連続KO勝ちとなり、One と1試合10万ドルの契約を結ぶこととなった。

Oneに参戦前は、タイ国内の様々なイベントで戦い、中堅ファイターとして定着していたスアブラック、コアなムエタイファン以外には、知名度も高くなかった。今年に入ってOneに参戦し、3戦目にDEEP ウェルター級王者でもある鈴木慎吾と対戦したあたりから、ライト層にも一気にブレイクした感がある。

鈴木戦のKO勝ち

スアブラックはタイ中西部のペッチャブリー県出身で、カレン族の出自ということをよく知られている。カレン族ファイターというと、RWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)で2階級で優勝したソムラッサミーがいるが、彼女はタイ北部のチェンマイ出身である。

ペッチャブリー県、カンチャナブリ県などタイ西部では、元々ミャンマーにいたカレン族が、独立運動など影響で迫害され、難民として国境を越えて避難してきたものが多くいる。ペッチャブリー県のカレン族のキャンプで育ったスアブラックは、子供の頃から家族の農作業や、園芸の作業を手伝い、強い足腰を養った。

ムエタイ選手としてリングに上がっていた兄の影響もあって。7歳からグローブをはめており、現在27歳のスアブラックは、20年のムエタイのキャリアがある。

近年は人気テレビファイトである、Muay Thai Super Champや、もう放送が終了してしまったが、Hardcore Muay  、そして RWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)のなどのリングに立っている。Hardcore Muay はオープンフィンガーグローブを使用するの3ラウンドのムエタイで、Oneのルールに近く、スアブラックがOneのルールにアジャストできた要因でもある。

スアブラックはOne Championship のインタビューで「今の成功は全てOne Championship のおかげです。Oneに参戦したことで、今年は人生で最高の年でした。 6 か月で私の人生はずっと良くなりました。私は家族の大黒柱になりました。とても誇りに思います」と語っている。

試合後のインタビューの様子

Oneでは、鈴木戦、グレゴリー戦を含む4試合を全てKOで決めて、ノックアウトボーナスとして、それぞれの試合に35万バーツ(約140万円)をファイトマネーとは別に得ることができた。

Oneは、タイの他の格闘イベントとは、提供されるボーナスも桁外れで、ファンの注目度も高い。One ドリームを目指して、強豪も続々参戦する。ここ1~2年で、One Championship は急速にタイのムエタイ、格闘技の中心に躍り出たと言える。

One の日本大会では、MMA、キックボクシングも多く組まれるが、タイの興行ではオープンフィンガーグローブのムエタイマッチが中心である。12月22日の興行では、全11試合中10試合がムエタイで、女子の1試合が通常グローブでのキックボクシングだった。(金曜夜の興行は、ムエタイ中心、世界配信を見込んだ土曜朝の興行はMMAの試合も組まれる印象)

Oneのオープンフィンガーグローブムエタイは、通常グローブのムエタイよりも過激でノックアウトも多い。対戦相手を倒す攻撃としては、パンチかヒジが多い。もちろん、One の使用するグローブ、ルールに合う選手、合わない選手もいる。

22日の試合内容について紹介すると、スアブラックは、相手の前蹴りの脚を掴んでからのボディへの左ストレートで一発ノックアウト勝ち。

試合開始時は、170センチのスアブラックに対して、182センチ体格で上回るグレゴリーが、ダイナミックな攻撃を魅せて、スアブラックの苦戦を予感させたが、眼が良いスアブラックは、なかなか被弾を許さない。そんな中で、唐突にボディへのパンチでKO勝利を収め、会場の観客を沸かせた。前戦の鈴木戦は左アッパーで倒し、その前のブラシ戦は左ヒジを何度も決めて倒すなど、スアブラックの攻撃のパターンも多彩である。

ボディへの左ストレートでグレゴリーはダウン

スアブラックは、グレゴリー戦について「この試合は私の人生で最も重要な試合です。KOで勝利して、今年最後の試合でONEとの契約を獲得したい。この戦いでうまくいけばと思う。私の希望は叶うかもしれない」と事前にコメントしている。
 
これからの目標については、「私はペッチャブリー・カレン族の戦士です。私をフォローしているカレン兄妹がたくさんいます。私は自分自身を成長させ、すべてのカレン族のファイターの模範となるよう自分を高めたいです。私は世界の舞台に立てるカレン族のファイターになります」と述べている。

グレゴリー戦を終え、ついに10万ドル選手となったスアブラックは、今後、ますます強豪との試合が組まれていくだろう。One参戦直前の今年2月に、スアブラックはロシアに遠征したが、地元のキアムラン・ナバティのヒザがアゴに決まり、初回KO負けを喰らった。

その後、キアムランもOneに参戦、9月にOneでの初戦で判定勝ちを収めている。キアムランはこれまで、キックボクシング、ムエタイで19戦全勝とパーフェクトレコードを記録している。スアブラックとのリベンジマッチもいずれOneのリングで組まれるだろう。

ロシア遠征時の戦績、キアムラン10戦全勝、スアブラック60勝10敗5分となっている。

スアブラックは、リングへの入場時、またリング上での勝者インタビューの際は、ソムラッサミーと同様に、必ずカレン族の民族衣装を羽織る。民族の誇りを忘れず、「家族のため、カレン族皆のため」と常に話す、スアブラックの活躍を期待したい。

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ONE Friday Fights 46の全カード

12月22日の "ONE Friday Fights 46" は、普段はメイン挌の選手の試合をずらっと11試合揃えた豪華興行で、チケットは早々とソールドアウト。

普段は大分県別府市の、BRAVELY GYMでトレーナーを勤めるスリヤンレック・ポーイェンエンが第1試合に出場し、2ラウンドストレート1発でのKO勝ち、第2試合ではチョーファー・トー・センティアンノーイが日本の小笠原瑛作をこれも一発KO。小笠原はOneで勝利の実績もあり、試合でも優勢を見せていただけに残念な結果だった。

メインのOneフェザー級ムエタイ世界タイトルマッチは、注目のタイ人対決で、王者のタワンチャイ・PKセンチャイがスーパーボン・シンハ・マウインを3-0の判定で退けた。

Oneで連勝中のスリヤンレック

※試合はOne Championship のYoutube放送での観戦。 photo from One Championship site.

↓ ↓ ↓ 動画リンク~スアブラック対グレゴリーは48分あたりから開始


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