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江國香織さんの『すいかの匂い』を読んで。

こんな夏休みの読書感想文のようなことを大学生にまでなって、自発的に書くことになるとは思わなかった。小学生のころ最後の最後までのこっていた夏休みの宿題は読書感想文であった僕からしたら人生の節目を迎えているのかもしれない。タイトルにもあるように江國香織さんの『すいかの匂い』の感想を、僕の夏の思い出を少し書こうと思う。

この本は11人の少女が過ごした夏の思い出、というよりトラウマに近いような、大人になった今も心に残り続けている記憶の回顧録のような短編集。不思議な話から少し怖い話まで、でもとにかくいえることは今、大人の人にはこういう思い出が誰にでもあると思った。読めば読むほど自分自身の小学生の時の情景が鮮明に浮かんできた。どの話にも言えることは自分だけが知ってる世界、大人は知りえない子供の秘密そんなのがテーマにあるように感じた。満たされるけど、決してやってもいいことではないものをひそかに満たされるまでする、小さい虫を殺したり。(あの行為から人は命の重さを学ぶとかっていう人もいる、簡単に死んでしまう虫としぶとく生き続ける自分、どちらにも同じ命が。正気か、って思う。あの行為は子供がただ人間の優位性をひしひしと味わう、満足するまでの幼稚な行為。でもどんな大人も通っている道だと思う。)

読んでいると、彼女たちと同じ帰り道を帰っているような、匂いもまぶしい西日も夕方の不安な感じも追体験している気分になった。あとがきにも書いてあった通り、江國さんの表現は的確で無駄がない。(僕の文章は無駄だらけ)読んでいると同じ学校に通っている少年Aになった気持ちになり、書かれていないところで少年Aが30点満点中2点の漢字小テストを焼却炉に捨てたり、1週間前にほかのクラスが埋めたタイムカプセルを掘りおこして、まったく違う木の下に埋めたり、持ち帰るのを忘れた水着が次の日臭くなっていたり。そんなことを少年Aがしている気がしてならなかった。(このうち2つが本当)

今、自分が大人だって思う人にはぜひ読んでほしい。自分でも忘れていた思い出をふわっと思い出すカギにこの本がなると思う。

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