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【北欧視察】ウォーカブルシティと自立支援

フィンエアーの深夜便でヘルシンキに到着したのが現地時間の早朝のこと。
ヘルシンキ中央駅へ移動して、アパートメントホテルのチェックイン時間までスーツケースを預け、まち歩きをしました。

この日のまち歩きは、ヘルシンキ中央駅周辺をウォーカブルシティの視点でめぐります。

ウォーカブルシティとは

ウォーカブルシティとは
「歩行者を中心にデザインされた街やその考え方のこと。車がなくても、徒歩や自転車、公共交通機関によってどこにでもアクセスできる利便性や、歩いていて楽しく、安全な歩行環境が整っていることが重視される」
と説明されていて、その条件として、

  • 快適な歩行環境が整っている

  • 公共交通機関が整備されていて、自動車がなくても移動が快適

  • 医療や教育などの公共施設が徒歩圏内にあり、日常の用事を徒歩で済ませられる

  • 公園や飲食店などの憩いの場が充実していて、出歩きたくなるような環境である

があげられています。

私自身は、「IoTと独居支援」に非常に関心のあるOTですが、人生の最期まで自宅で自立して暮らしていくためには、生活の中である程度の身体活動性を確保しなくてはなりません。それは、ひとり暮らしに必要な筋力や運動能力を維持していくためです。

都会の高齢者より、田舎の高齢者のほうが「フレイル」や「サルコペニア」の状態になりやすいのは、日々の外出が田舎はどうしても車移動になってしまうためです。

世界一の図書館「Oodi」

まず訪れたのは、世界一の図書館とも言われる「Oodi」。2018年にオープンし、国際図書館連盟2019年の公共図書館アワードを受賞しました。

ヘルシンキ中央駅から徒歩7分ほどで行けるこの図書館は、図書館としてゆったり読書が楽しめるだけでなく、個人が勉強や作業に使える個室ブース、会議や集会に使えるカンファレンスルームはもちろん、3Dプリンタや巨大な裁断機、音楽スタジオやキッチンまで、市民が「やってみたい」と思ったことができる環境を、市民サービスとして提供しています。

階段状のフリーゾーンに座ってみた。他にも足を投げ出してPC作業など行っている人が。奥に見えるのは工作室のような、さまざまな機器を使える部屋。
3階の書架をキッズスペースから見る。子どもたちが自由に遊び、親子連れでにぎわっている。
反対側はデスクがあり、調べ物やPC作業を行っている人が
本棚は背が低く、車いすユーザーも自分で本を取り出すことができる
デッキへ出ると正面に国会議事堂が見える。ここはカフェテラスになっており、コーヒーや軽食を楽しめる。
螺旋階段には「Dedication」と題されたパブリックアート。この図書館がどんな人のために存在するのかを市民にアンケートして、そこで集まった「~な人のために」の言葉が並んでいる。「考える人のために」「弱い人のために」「怠け者のために」など

その機能から、多世代が集まる場となっており、ここに訪れてただ座っているだけで、活気を感じることができます。

街を歩くと、いたるところにシェアキックボードやシェア自転車のステーションがあります。後日通訳のヨーナス氏に聞いてみたところ、1シーズン35ユーロほどの安価で使い放題なのでみな利用するのだそう(1シーズンといっても10か月間なので、雪深い時期以外は使えます)

太陽光パネルで充電しているの?

歩行者専用、自転車専用の道路もあり、車やバス、トラムを気にせず安全に移動できます。また、自動車用の道路を渡るにしても、歩行者を見つけたら必ず車のほうが止まってくれます。

岩盤を切り通して造られた、自転車と歩行者の専用道路。

近所のジムから汗だくのトレーニングウェアのまま自宅へ徒歩で帰っていく女性や、ノルディックポールで散歩している高齢者も多く見かけました。

ランチはかもめ食堂で。

日本は明治以降人口が急激に増加し、昭和の高度成長で東京隣接県の多くの原野を開拓して住宅地を造りました。そのため、人口減少が進む現在、スポンジ状に人が抜けていって、変に街の中心部から離れた場所に住んでいる高齢者もたくさんいます。

歩いて行ける距離で用が足せる。歩いて行ける距離に楽しい交流の場がある。これは健康で自立して暮らすために重要な条件かもしれません。

日本でも全国でウォーカブルシティの取り組みが始まっています。今後、自立度を高める居住環境として、日本での状況も追っていきたいと思います。

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