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おらが秋、暁雨館の「山と人」展へ行ったら

人は失ってから、その存在の有り難みを知る

「大切なものは、失ってから気付く」「覆水盆に返らず」など、人生で一度は、見たり聞いたりしているであろう、ここら辺のフレーズ。多くの先人たちが後世の人々に「気ぃつけていきやぁ!!」とゆりあん並みに身体を張って、自分たちの失敗を伝えてきてくれたからこそ、たくさんの国で諺や物語などでも残っているのだと思います。
そんな人類の置き土産の意味を、私が初めて痛感したのは、就職したての頃、ピカピカ青二才の時でした。

四国中央市のお山

高校を卒業したと同時に地元を離れて、京都やイギリスで好き勝手な生活をしていたこともあり、ホームシックという感覚には、あまりならなかった私は、

こりゃ〜〜アタイどこでも生きていけるわ〜〜

なんてノンキに、ふわふわ考えていました。大学卒業後、そのまま京都で就職したのですが、そこから見えていた景色が一変します。自分の好きなことに囲まれ、ぬるま湯に浸かっていた私は、社会の荒波に揉み揉まれて浅漬け状態、ある日突然、自分の居場所はどこなのか、わからなくなる感覚に陥りました。

こ、こ、これが、俗に言うホームシックなのか!?

今までは、「そうだ!実家に行こう!」と、思い立ったが吉日で、帰りたい時には、いつでもすぐに帰ることができていたふるさと。
しかし、就職してからは当然、そんなことは難しくなり、ふるさとの海や山、そこにいる人たちに無性に逢いたくなるモーレツな郷愁感にたびたび襲われました。

仕事終わりの帰り道、人目もはばからず涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、大声で仕事の愚痴を母に電話していました。
社会人としての洗礼をガンガンに受けていたあの頃、、今思えば、京の都に舞い降りた、雅なうら若き乙女の様相からは、到底かけ離れ、化粧は崩れ落ち、全身全霊で泣きわめける妖怪の形相になり果てていました、、夜毎夜道ですれ違う町びとたちは、それはそれは恐ろしかったことでしょう(申し訳ない)

しかし、それから、ふるさとについてよく考えるようになりました。まだ高校生の頃「ユニバ行きてぇ〜!!」「本州に住みたい!!」とのたまう私に、母が

「四国中央市にしかないような美しい山並みが好きでねぇ。海と山がこんなにも近い場所なんてなかなかないよ〜」

と、言っていたのを思い出します。その時は、山じゃんとしか思っていなかったのですが、いつの日か、帰ってくるたび。四国中央市の山並みを見るのが楽しみになっていました。

四国中央市の山山の風景

高速道路の山山から、四国中央市のシンボルのひとつである大きな煙突が見えたら、嬉しくなり、逆に煙突が遠ざかっていくのを見るたび、心にポッカリ穴があいたように寂しくなったことを覚えています。

さて、紆余曲折を経て、ふるさと大好きマンになった私に、ある日、村上さんからラインが届きました。

『暁雨館の素敵な展示へ行ってみませんか?素敵な学芸員の石川さんもご紹介します。』

興味をそそるおチラシ


ギョッ、ギョギョッ、ぎょううかんんん!!!

ご存知の方も多いと思うのですが、四国中央市の郷土資料館である暁雨館。実は、コロナや出産などが重なり、行きたくても行けていなかった、片思いしていた場所のひとつでした。

あまりの嬉しさに、スマホにめり込む勢いで返信を打ちだします。しかし、そこでふと我に返りました。
あかんあかん、普段から誤字が散乱し、ラインなのに「ちょっと、なに言ってるかわからない」と言われることも多い、私です。早る気持ちを抑え、今回こそ、インテリジェンスな女だと思われるような返信をしなければ、とクールダウンをしました。

『ぜひ、ご一緒させてください!ぎょううううかん』

知的な女どこいった?ドラミングしたんか?という勢いで返信し、気が付けば、知的なゴリラになってしまいました。これだから、オタクは(お前だけや)

そんなアホな私に村上さんは、

『興奮伝わったよ(笑)』

と、女神のような温かさで見守ってくださりました。何はともあれ、暁雨館の学芸員、石川さんの前ではこんな失態はしてはいけない!当日、変な笑い方とかしないように細心の注意を払わねば、と気合いをいれました。

いざ、暁雨館へいくぜよ!!


秋麗、いよいよ楽しみにしていた暁雨館、当日です。
暁雨館は、四国中央市の土居町にある郷土資料館です。その見た目は、まるで文豪の邸宅のように立派な門構え、入る前からワクワクが止まりません。オラ、ワクワクすっぞ!と、気持ちだけは小林一茶で入っていきました。(小林一茶の代表作、おらが春とかけてみたつもりですが、おらが春をちゃんと読んだことは、ありません、すいません🙏)

※小林一茶さんが修行時代に暁雨館(当日、入野村庄屋さんである山中時風さんの邸宅だった)へ訪れていたそうです。俳諧で有名な方というイメージだったのですが、調べると波瀾万丈な生涯すぎて泣きました🥺

素敵すぎる門構え
木漏れ日が好きすぎて連写しました
さり気ない展示大好きです。アケビおいしそう。


江戸時代から残るお庭は後ほど、ゆっくり見学させてもらおうと思い、暁雨館の中へ。木の暖かみがたっぷりの館内は、優しい雰囲気に満ち溢れていて、とても落ち着きます。むしろ、住みたい!!
そんな雰囲気の中、女神村上さんと可愛い娘ちゃん、笑顔が可憐な学芸員さんの石川さんが出迎えてくださりました。

学芸員の石川さん、村上さん、娘ちゃん
学芸員の石川さん、館長の三宅さん、おかめ

館長の三宅さんも、すごく暖かくて優しい方です。暁雨館に来る前から、素敵な方だとよく聞いていたのですが、お噂以上に優しく素敵なお方でした。

お待ちかねの、山と人の展示へ向かいます


まず最初に「山と海が近い」という特徴をもつ四国中央市が、なぜそのような地形になったのか!?という疑問を紐解いてくれます。この四国中央市の独特な地形、密かな疑問だったのですが、地形とか死ぬほど苦手なので、疑問に思いつつ、調べたことがありませんでした。ちゃんと理解できるか不安でしたが、学芸員の石川さんの解説と資料が本当にわかりやすくて、地形のお話、めちゃくちゃ楽しく学べました。

四国中央市の山並み

学芸員さんたちが、実際にその場所へ行き、調査などをされているそうで、まるで現地を一緒に歩いてるかのように楽しむことができるからかもしれません。石川さんがお手すきでしたら、ぜひ、解説をプラスで見学されることをオススメします。

とってもわかりやすい説明をしてくれた石川さん

続いての展示は、山と人々の暮らし。私たちのご先祖様がこの法皇山脈の麓でどのような暮らしを営み、どんなことに悩んでいたのかがわかる生の資料、古文書や絵図があります。

ちょっとだけネタバレすると、私たちのご先祖たちが住んでいた四国中央市は、領地が結構ややこしい所もあり(西条藩、今治藩、幕府領と3つくらい領地が入り混じっているところもあったそう)領地が違えば、様々な生活のルールなども違っていたそうで

「あ、お前んとこ、明日から今治藩な?」

みたいな急な領地替もあったりで、結構大変だったみたいです。それ故に、喧嘩することもあったりして、なんとか解決していこうとがんばった、ご先祖様たちの涙ぐましい努力が生の古文書や絵図、資料から伝わってきました。

この絵図がまた美しいんです!!
天狗だけのかしら??
からすがとまりさかい?

石川さん曰く、不思議な地名には、なにか物語や伝承があったのかもしれないと教えてくれました。もちろん、今に残っている地名もたくさんあります。私たちのご先祖たちが、どのようにして現代までつないでくれたのかが、色彩豊かな絵図からも、つまびらかになりました。

続いては、本日のメインとも言える展示、山と人々の信仰です。山にまつわる3つのお祭りを取り上げてくれています。土居の法皇神社例大祭、豊岡の風穴祭り、中之庄地区で盛んだった水波念仏踊りです。

土居の法皇神社例大祭は、とても高い標高で行われるお祭りで、みんなガッツリ登山するそうです。そして頂上の岩のところに、祠があり、神様が祀られているそうです。すんごいところにありました。

ん?よく見ると、、

「あれ??なんか手前にありませんか?」

「お気づきになりましたか?こちら宝剣がございます」

「宝剣!?」

岩に刺さるっているように見えた宝剣

ていうかこれ、

エクスカリバーやないかーーーーー!!!!!

なんと土居にエクスカリバーがありました。(抜いちゃダメ)そして、このエクスカリバーこそが、こちらのお祭りの発祥にも関わっていたとても重要な存在でした。山と人展では、謎の宝剣、エクスカリバーのことも明らかにしてくれています。

法皇神社にて記念写真

「あと、皆さんもうお気づきだと思うのですが、この写真にイケメンが、いるんですよ〜」

「あ、思ってました〜!!!!」

「ウヒヒッ、私も!」

古写真の隠れ醍醐味といえば、イケメン探しだと思っています。この時、ちょっと気持ち悪い笑い方をしてしまいましたが、石川さんになら、私が土方歳三の写真を懐に忍ばせて生活していた過去も、伊藤博文の泣きぼくろってちょっとセクシーかもしれないと語っていた黒歴史も、わかってもらえるかもしれないと思った瞬間でした。そして、このお写真のイケメンさんの正体も明らかにしてくれています、ドキドキ。

お次は、我ら四国中央市民を悩ますアレに関係するお祭りです。なんと私の家族も実際に参加していたお祭りでした。

その名も風穴祭り(ちょっとヒントどころか大ヒント)

お餅を365個作り、お供えする…
のではなく、
風穴に放り込む!という少々ワルイドなお祭りです。

お団子たくさんつくるそうです

このワイルドお祭り、案外、豊岡に住んでても知らない方も多くて、友人に話すと「え!?放り込むの!?」とびっくりしていました。だって四国中央市を悩ますアレを封じ込めるためですよ!ここでは、言えませんが、みなさん毎年、絶対アレに悩んでます。

「豊岡地区の方々が、アレと戦ってるなんて、初めて知ったよ」と労ってくれました。そして、このお祭り結構古い歴史があるそうで、そう考えると、ご先祖様たちも毎年アレに悩んでたんだなぁ〜としみじみ思いを馳せることができました。こちらも必見です!!

悩ますアレのために、もちを放り込んでいます
お祭りの映像資料もあります♪子供もわかりやすい

最後は、独特な歌詞、1度耳にすると忘れられない。必ずあなたの脳内でエンドレスリピートされる非常に中毒性のある踊り、水波念仏踊りです。

水がとってもエモい

とにかく、ここで一回、歌詞を見てほしいのですが、

え〜なっぱいどうや〜♪
え〜なんまいどうや〜♪

んんんん!?どゆ意味!?

ってなりますよね。山と人展では、水波念仏踊りのVTRや録音もあります。一度聞くと忘れられない歌詞!!あなたの脳内でも、もれなく、なっぱいどうや〜が流れてくるはずです。今これを書いてる私の頭の中でも、すでに、なっぱいどうや〜状態です。 

ちなみに、石川さんは、聞きすぎて、気がつけば、なっぱいどうやを口ずさんでしまうレベル、玄人の領域でした。

水波踊りで実際に使用されていた道具たち

脅威の中毒性があるだけではなく、この踊りにもたくさんの歴史あり!深い人間ドラマあり!です。私の父も小学生の頃にこの踊りを実際に見ていたそうで、父世代の方には懐かしく、私たちの世代では珍しく、老若男女、存分に楽しめる展示でした。 

すごく迫力のある尾崎星山先生の書


また、四国中央市や法皇山脈にまつわる様々な神話や物語も取り上げられていて、お祭りの発祥や、地名の由来なども発掘することができます。どれも馴染み深い土地のお話なので、難しさを感じず情景を思い描きながら楽しむことができました。中でも私が印象に残ったお話は、四国中央市の女神様のお話でした。

四国中央市には、女神様がお二方もおられると石川さんから聞き、脳内はお花畑状態、わぁ〜ステキ、女神様だなんて、美しいなぁ♪メーテルみたいな感じかなぁって妄想に浸っていたら、このお話、とんでもねぇことになってました。女神VS女神、ぜひ、現地で確かめてみてください。めちゃくちゃ吃驚な結末でした。

展示の内容、お祭りなどは、石川さんたち学芸員さんが自ら足を運び、体験したり、お話を聞いたりして製作されているので、本当にわかりやすく、実感が伝わります。そして、実感のある学びは、その場の空気感や想いが満ち溢れているからこそ、記憶に深く残りました。暁雨館さんだからこそ、伝えて残すことができる素敵な展示だと思います。村上さんともお話したのですが、大人だけでなく、子供たちが、四国中央市について知るきっかけとしても、とても良い展示だと実感しました。

展示を通して、ふるさとについて考えてみた

紅葉も素敵な暁雨館

この展示を見学し、より深く、ふるさとについて考えるきっかけを頂くことができました。ここからは、暁雨館の素敵なお庭のお写真共に、まとめていきたいと思います。

枯山水の石組

山と人展にてバキバキに刺激を受けた私は、後日、友人たちに『あなたのふるさとは、どこ?』と質問してみました。そんな私の質問に答えてくれた方々、ありがとうございました。とても感慨深い回答がたくさんあって「ふるさと」という概念の多様な捉え方を実感しました。

素敵なコケにうっとり

まず、具体的な景色を思い出し、生まれ育った土地の海や山、田園風景、四国中央市なら煙突などから、ふるさとを連想する人たちがいました。

すすきが美しい暁雨館

次に、お母さんの手料理、懐かしいお袋の味や、その土地の特産品など、味覚からふるさとを感じる人たちがいました。

キラキラSHIDA

面白いなとおもったのは、香りからふるさとを連想する人もいて、ふとした香りに癒されたり、郷愁に駆られたりという人もいました。

歴史ある灯篭、かなり神々しかったです

そして、具体的な場所やモノだけでなく、思い出が詰まっているところが自分のふるさとや、子どもが産まれ親になってからは、子どもに見せたい場所へと変わった、という想いそのものが、ふるさとに繋がっている人たちもいました。

暁雨館散策を楽しむ次男

人は五感でふるさとを感じ、その概念も多様で、自分の幼少期から培ってきたモノやコトから様々なふるさとを持っているのだと思います。

かくれんぼする長男

多様な概念である、ふるさとですが、共通している事もありました。それは、いろんな形で人の心の片隅にあって、支えや、拠り所として存在しているということです。そして、知らないうちに、私たちのアイデンティティになったり、誇りになったりしているのだと気付きました。何十年、何百年と受け繋ぎ残してきた宝物です。

どこから撮っても絵になります

山と人展で、私たちの生まれ育った町のルーツやアイデンティティが再発見でき、普段何気なく見ている風景もまた違った角度で楽しめるようになりました。とても面白く趣深い展示です。ぜひ、暁雨館へ自分たちの住んでいる、知っている街の文化や原点を探る旅に行ってみてください。

最後に、暁雨館のお庭でくつろぐ

暁雨館、今後の展示予定など

山と人展
12月18日(日)まで入場料無料
お問合せ 0896-28-6325

ふるさとのたから
〜未来へ届ける写真展III〜
11月27日(日)まで
とても素敵なお写真たちに心が癒されました

終わってしまいましたぁぁあ😭が
フリーライターの村上さんが企画している
ウルトラ参加したくなる婚活✨
山婚活めちゃくちゃ、参加してみたい。

山の男、松本さんに似合いすぎる書(村上さん撮影)

まだお会いしたことはないけれど山如が似合いすぎる、山を愛し、山に愛された男(登山ガイド)松本さんと歩くので初心者さんも安心です。

暁雨館で見つけた素敵なお花

NPO法人紙のまち図書館 暁雨館様
フリーライターの村上さん
今回は、ありがとうございました!

暁雨館
四国中央市土居町入野178-1
0896-28-6325

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