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思い出のカレーを目指して

私が御幼少の頃、国鉄と云う組織が存在し、近所に在ったその職員の社宅は「国鉄アパート」と呼ばれており、最寄り驛を走る電車は「国電」と呼ばれていました。

しかし残念な事に私が物心附いた頃には既に食堂車は編成から外されるか營業休止となっており、辛うじて新幹線のビュッフェやカフェテリヤが細々と營業していた位でした。

そんな私でもあのカレーの味が忘れられないのです。
こんな私でも御幼少の頃に度々それを味わっていたのです。

そう、今は亡き神田は万世橋に存在していたあの博物館で…。

よく休日には親父に連れて行ってもらった交通博物館の、あの最上階に在った特急こだまをモチーフにした食堂でよく食べていたのです。
(氣分によっては新幹線の食器に盛られた「お子様ランチ」だったのですが、カレーは食堂での定番でした)

まだそのテの博物館が「テーマパーク」になってしまう前の話です。
色々な鐵道の仕組みを學べる展示が多く、單に實物を並べてあるだけとは違う、知的好奇心を大いに奮い立たせた空間でした。
當時最新鋭の車輛を模した「こちら指令…」と語り掛けてくる運転台はその頃からの憧れでもありました。
また、鐵道以外にも自動車や船舶、航空機、果ては自轉車や駕籠等の展示も有ってイマドキのものからは考えられない程とても面白かった、まさに博物館だったのです。

閉館になってもう随分と經ちますが、思い出は幾ら經っても無くなりません。
そこで今日は丁度金曜日でしたのでカレーを作る事に致しました。
思い出のあのカレーを目指して、自分なりに仕上げた「国鉄風カレー」でございます。

今でも数少ない機會に「食堂車のカレー」を食べてはあの頃の記憶を呼び覺まし、何とか家で同じ様な物が出來ないかと色々やっておりました。
無論これが完成形ではなく、その味は日々研究して試行錯誤の上、レシピも変わってくるのです。

作り方

特にこれと云って特別な作り方や材料はございません。
普通のカレーの如く作ります。

強いて言えば2種類のルーを使う事と赤ワインとウスターソース、ケチャップを入れる事、そして牛肉を使う事位です。

国鉄1

牛肉は國産です。変な成長剤がふんだんに入っていると困りますので……。

2種類のルーとは辛口と中辛のルーを3:1若しくは1:1の割合で使う事です。
こうすると辛口とも中辛とも受け取り難いあの絶妙な味に近附けるのだと思います。

そして煮込む際に赤ワインを概ね150cc程入れてウスターソースとケチャップを極少量入れておきます(分量4人前位の場合)

あとはなるべく長時間煮込む事が大切です。
私は1時間程煮込んでおりました。
(その間に弓道の胴着を洗ったりだの弓の弦を直していたりだの色々やっておりました…)

こう云う料理はこうした時間を他の用事に充てて活用出來るので便利です。
勿論、作り置きが出來るので尚結構です。

国鉄9

くれぐれも火からは目を離さぬ様にします。

国鉄2

出來上がりです。

国鉄4

食卓に飾り立てて完成です。

食堂車のメニューに倣っておくと「カレーライス」「コンビネーションサラダ」そして「ビール」と云ったトコロです。

碓氷峠の釜飯の小型版容器には福神漬けが入っています。

国鉄3

こう見えても麥酒を注ぐのは少しだけ巧いのです。
これも下積み時代の賜物ですね…。今回のは少々泡が多いので70点位です。
器具を使わずとも、こんもりと泡を盛り上げるのがポイントです。

国鉄5

恰も食堂車に乗っているかの如く、車窓の動画を見乍ら戴きます。
絶え間なく響くジョイント音、流れゆく車窓…。
星が、光が、きらめく車窓が、旅人を素晴らしい郷愁の世界へと誘う…。

そうです。思い出と想像の入り混じった不思議な列車に乗って空想の旅行に出掛けましょう!

国鉄8

食後はデザートも忘れずに…。
お茶と冷凍ミカンです。

このポリ茶瓶は鐵道の旅に出る際には必ず魔法瓶と一緒に持って行った物で、これまでも色々な場所へ一緒に行った良き旅の伴侶でした。
これで淹れたお茶には旅の香りがするのです。

国鉄7

食べた後はゴミを片付けましょう。
「エチケット」ですから…。

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