「そこのみにて光輝く」 (映画 2013)

どうしようもない底辺な境遇を生きる者たちの、どうしようもない日々における葛藤と愛情を、第三者的に見つめつつも救いを求める物語。

綾野剛と菅田将暉、そこに池脇千鶴が絡むなら秀作間違いなしだと。意気込んで見た私を予想以上に打ちのめしてくれた映画だった。

作者・佐藤泰志氏の複雑な境遇と重ね合わせて見ると、更に悲劇的な印象を受けてしまうのだが、物語と作者の人生は別物。
しかし全体的にダークネスが漂う、独特な一作だった。
それは主演の綾野剛が醸し出す「普通でない」オーラのせいでもあり、そこに明るくも訳ありな菅田将暉との関係は、まさに陰陽を際立たせていた。
海辺のバラックのような家で、寝たきりの父親を介護するだらしない母親。保護観察中の弟(菅田将暉)の為に弟の雇い主の愛人をしつつ売春もこなし、更に父親の下半身の世話をする姉=池脇千鶴。彼女の存在感は、気安くヒロインとは呼べない屈折した雰囲気がその年齢を超えた大女優の貫禄を感じさせていた。

俳優陣の熱演と、それを支えるスタッフの職人技が何とも贅沢に思えた2時間。日本映画にもここまでやれるパワーがあるのかと、底力を見た思いがした。
こういう底無しの閉塞感は映画だけにしてもらいたいが、昨今の日本の社会情勢を鑑みると他所事ではないようにも思えて、そこもこの映画の提示する怖さの一因かもしれない。

綾野剛、菅田将暉、池脇千鶴には、これからも秀作に出続けてもらいたい実力派の俳優である事を改めて思い知った一作だった。