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【第二号】作品解説【サクラビト】
- 本文|紺 -
この度は、桜賀創藝第二号【サクラビト】に触れてくださり有難うございます。貴方好みの作品に出会えるように、一読者として(または一作者として)、貴方の為の案内をさせて頂きます。
素敵なめぐり合わせがありますように。
「でも本当は、桜の木の下には●●が埋まってたんだと思う」
それを聞いてあの子は目を丸くして変な顔をしていた。
この話は桜を挟んだ男女の掛け合いが書かれています。あちらと、こちら、上と、下。桜は二人を繋ぐものでもあり、隔てるものとしても存在していました。
ライトな恋愛モノやミステリーが読みたい方、互いが桜に掛けた想いが気になる方はこちらがオススメです。
「怒りなどの衝動的な感情や自分のための利益を求めてする殺人は犯罪だ。でも苦しむかもしれない未来への不安という感情から救いあげる殺人は犯罪じゃない」
主人公の「春原(かすはら)」、バディの「菜花(なばな)」、それからお客様の「金雀枝(えにしだ)」。菜の花は二月から五月の間、エニシダという花は四月下旬から五月一杯まで花を付けます。実は難しい漢字も「春」で繋がっているのです。現代にあったかもしれない安楽死のシステムや春の奥深さ、読み進めた分だけ考えさせられる作品です。
バディものがお好きな方、生死観に興味のある方はこちらをどうぞ。
「事実は痛々しい。人形を通して受け止めるのがちょうどいい」
波で始まり珈琲で終わるこの物語は、多くを語りません。しかし心情の深いところを撫ぜていきます。二人の人物の音のない痛みを本当の意味で理解できるのは当人だけです。それでも時と言葉を交えるのは何故でしょうか。
言葉の繊細さを知りたい方、揺蕩う問答がお好きな方はぜひ読んでみてください。
滴るルビーがとても美しい。僕の大切な桜たち、実らなかった愛と恋は美しい桜によく映える。
こちらはホラー、ファンタジー、ミステリーなどを集めた短編集となっています。一話につき一つの事実が隠れていますので飽きのこない展開です。
短いものは250字程度となっていますので、活字や小説に馴染みのない方、短時間で様々な種類を読みたい方にオススメです。
「ノーテ、確かに私の作るサクラは一瞬で散って枯れてしまいます。でもだからこそ私たちはその一瞬を楽しみ、愛で、そして惜しむのですよ」
「ある」と「ない」、それぞれは異なる価値を持っています。このお話の中で語られるサクラは「ない」の象徴として書かれています。しかし価値とは移ろいゆくものです。
緩やかで丁寧に流れていく作品となっていますので、文学らしい風情のある読み物がお好きな方や時間のゆとりを持つ方にオススメです。
目を開けた。随分と美しい光景があった。桜の花弁が風に踊るその中を、美しいものたちが歩いていた。
「鷟」という字は鳳凰を意味するそうです。読み方は「サク」ですので題名は「サクラミル」でしょうか。「鷟」-つづくイノチ、「羅」-薄衣、「美」-人ならざる者、「留」-残る・とどまる。どの漢字にも意味が込められています。
日本らしい仄かな不気味さや言い回し、現代に隣合うファンタジーがお好きな方にオススメの作品です。
- 謝辞 -
本誌掲載にあたり執筆いただいた当サークルメンバーの皆様に感謝申し上げます。また、本号への挨拶・解説を寄せていただいた方々に深くお礼申し上げます。
桜賀創藝が、読者の皆様に愛されるよう今後とも豊かな作品世界の創造を続けてまいります。本誌を手にとっていただき、ありがとうございました。
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