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コロナで分かれるスタートアップの命運?

いわゆるコロナショックで株式市場が荒れ、スタートアップ企業のなかにIPOを見送る事例が散見される。20年前のITバブルを思い出す。windowが開いている間にIPOできたか否かがその後の各社に与えた影響は大きかった。近年の好況下でアクセル全開だったスタートアップ企業も足元を見つめ、ブレーキとのバランスを考える必要性が増しているように思える。

近年、スタートアップ企業(昔の言い方ではベンチャー企業)を巡る環境は非常に恵まれたものだった。起業に関する情報は巷に溢れ、各地でピッチ、コンテスト、○○アワードの表彰式などイベントも盛んに開かれていた。

先に成功した起業家が指南役として後続する起業家の相談に乗るような環境もできていたし、次の経済の担い手が欲しい行政も創業支援等様々な形で起業を応援してきた。

何よりジャブジャブのマネーが起業家、スタートアップ企業に流れ込んでいた。当面の事業運営を、赤字を許容してもらえる経済環境にあった。

キャッシュリッチながらイノベーションを創出できない、デジタルトランスフォーメーションに焦る大手事業会社も、波に乗ろうとするベンチャーキャピタルも、カネ余りの他の金融機関も、個人投資家も彼らへの資金提供者となっていた。

しかし、しばらく前からそうしたトレンドの変化を示す兆候が出ていた。
ベンチャーキャピタルでは”スタートアップ企業の時価総額が高くなりすぎて投資できない”という声はとうに出ていただろうし、初値が公開価格を割る、上場後の株価がさえない、といったケースも出ていた。昨秋には積極的な投資で知られるソフトバンクグループが運営するファンドで投資先ウィーワーク等を巡り、巨額の赤字を計上したことも報じられていた。

そんな風にスタートアップ企業を巡るトレンドが変化している中で現れたのが新型コロナウィルスである。この影響はなかなか深刻で長引きそうである。近年の恵まれた環境で船出したスタートアップ企業にとって、今orこれから直面する困難は大きな戸惑いを感じるものかもしれない。

ITバブルの頃、楽天やサイバーエージェントのようにギリギリのタイミングでIPOできた企業の陰でIPO windowが開いている間に上場できなかった多くの企業があった。

それらの企業も楽天やサイバーエージェントと同じようにIPOを目指してIPOを前提に駆け抜けてきていた。IPOが延期・頓挫すれば社内のモチベーションは下がる、資金に狂いが生じる・枯渇する、内紛が起きたり、優秀な社員が離脱したり、、、

IPOで調達するつもりの資金が手に入らず、資金繰りに窮して消えていった企業もある。急激な変化に戸惑いながら存続した企業もあるが、こちらは大きく2つのケースに分かれたと思う。

ひとつはいわゆる中小企業として事業を維持、その後IPOを目指すことなく存続したケース。もうひとつは緩やかな成長or何らかのヒットにより、時間をかけつつもIPOに辿り着いたケース(ただし、この場合はそれなりの年月を要していた)。

当時と今では環境は異なる。当時のベンチャー企業と今のスタートアップ企業では異なる部分も多いだろう。コロナがあろうが、デジタルトランスフォーメーションの流れは変わらない、むしろ加速する、だからIT系はあまり影響がない、そんな意見もあるだろう。

それでもスタートアップ企業、IT系といってもいろいろあるし、外部環境がこれだけ変化している状況では楽観は禁物だろう。今現在における影響が”自社主催のイベントが自粛になった”、”テレワーク社員が増えて労務管理が大変だ”という程度であったとしても、経営の基盤、足元の状況、手許現金、バーンレート、資金計画をもう一度見直してみた方がよいと思う。

経営に攻めと守りのバランスは大切だが、これまで恵まれた環境であったがゆえに攻めに偏重し過ぎている企業もあるのではないか。重心をもう少し守りに寄せた方がよい企業もあるのではないか。

シナリオは複数もっているか、最悪のシナリオへの備えは十分か?

楽天もサイバーエージェントもあの時IPOできていなければその後の展開は今とは大きく異なるものになっていたのではないかと思う。

およそターニングポイント”というのは渦中にいるときはわかりづらいものである。


<追伸>
既に経営のバランスを崩し、資金繰りに支障が出ているスタートアップ企業の経営者、起業家が身近にいらっしゃる方はメンタル面をケアして差し上げてください。渦中にある人は自身の心をケアする余裕はない。最後に大事なのは会社でも事業でもなく、人の命。。。

<ご参考>
以下は生存期間、バーンレートに関して中小事業者向けに書いたもの。


歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。