マガジンのカバー画像

臀物語

181
タイトルをしりとりで繋げる物語、です。 「しりものがたり」と読みます。 第1,第3,第5日曜日に更新予定です。 詳しくはプロフィールに固定してある「臀ペディア」をお読みください。
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

ウミガメ

 勇樹と陽介は今日は連れ立って英一の家に向かっていた。
 英一から誘われた時点で、勇樹はてっきり例のレトロゲームのうちの何かをプレイするのかと思っていたが、どうやら今日はそうではないらしい。
「てっきりゲームかと思ったんだけどな。」
 勇樹は少し残念そうに呟いた。
「まあまあ。ゲームはいつでもできるじゃん。」
「いやいや、英一が持ってるゲームはそんじょそこらじゃプレイできない代物ぞろいだぞ。」

もっとみる

印象

 サークル飲みやゼミ飲みなど、大人数で飲む際にはやはり居酒屋の方がいいことが多く、また学生だけだったりすれば、チェーンの居酒屋の方が値段も手ごろだし、いい。
 しかし、気心が知れた仲間だけで、それこそ少人数だったりすれば、宅飲みという選択も悪くない。
 家主さえ許せば時間の制限もなく、居酒屋でついつい頼んでしまうことに比べれば財布にも優しい。
 学生の住める安宿では部屋と部屋の間の壁が薄く、あまり

もっとみる

置き配

 お昼休みを迎え、石嶺はいつもと同じ色の袋に包んだ弁当箱を持ち、休憩室へと向かった。
 元来、凝り性な石嶺は一度こだわりだすと止まらないタイプで、また意志も強いタイプだったため、今でもくじけずに筋トレに励んでいた。
 休憩室に着き、空いている席を見つけて座る石嶺。ゆっくりと包みを開くと、そこにはいかにも健康を意識しているメニューが。
 筋トレなどと無縁な人間からすれば味気ない弁当に見えるが、石嶺に

もっとみる

 先ほどからほのかは、授業の準備をしている樽井から少し離れた席に座り、何やら本を読んでいるようだった。
いつもなら何気ない話をすることもあったが、何も話さなければならないわけではない。
二人はお互い特に干渉することもなく、それぞれの作業に没頭していた。
 カチカチとパソコンを触りながら作業を進める樽井と、ペラッと、たまにページをめくる音だけをたてるほのか。たまにはそんな静かな過ごし方も悪くない。

もっとみる