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EP03 巻き込んでくる人との関わり方

このnoteは2020年6月2日に収録した音声を文字起こししたものです。

こんにちは! ニューヨークから松村亜里です。

今日は「ポジティブ心理学動画セミナー」を見ての質問に、もう1つお答えしていきたいと思います。セミナー動画全8回の第6回目、「悪い人間関係を良い人間関係に転換する方法」についての質問で、「相手がどうであれ、トライアングルはひっくり返せますか?」ということです。

人間関係のトライアングルとは?

まずは人間関係のトライアングルとは何かということについてです。すごく心理学的な話になりますが、ある精神科の先生が様々な人を治療する中で悪い人間関係には決まったパターンがあるということを発見しました。

逆三角形を想像してみてください。逆三角形の下の部分に犠牲者である患者( クライアント)さんがいて、左上の部分には迫害者(患者さんを痛めつけている人)がいて、右側の部分は救済者(患者さんを救う人)です。

この3つの役割のうち、犠牲者の人は自分の夢が断たれ、自分をかわいそうだと思っていたり、色々な犠牲になったりしている人のことです。迫害者とは犠牲者に対して迫害している人や状況のことで、問題の原因です。人のときもありますしコロナや災害などの状況であることもあります。救済者は迫害者をやっつけ、犠牲者を助ける人です。

このトライアングルの中を人が入れ替わり抜け出せないということを、DDT(dreaded drama triangle)と言います。直訳すると恐怖のドラマトライアングルという意味です。私の受講生はこれをドロドロトライアングルと呼んでいます(笑)。

例えばドラえもんで例えると、犠牲者がのび太、迫害者がジャイアン、ヒーローである救済者がドラえもん、というような具合です。しかしのび太がドラえもんからいい道具をもらってジャイアンに仕返しすることもありますよね。このときのび太は犠牲者から迫害者に変わっているんです。また、他の人がトライアングルに入ってくることもあります。

私は日本のニュースはあんまり見ないのですが、ほとんどの事件はDDTの成れの果てという感じがします。このドロドロトライアングル(DDT)の中にいる限り人はドロドロしてしまうのです。

そこで三角形を反対にひっくり返すと低角が2つある普通の三角形になります。この時、犠牲者が上の角になって創造者(クリエイター)、迫害者が創造者の人生をよりよくする挑戦者、救済者はコーチまたは応援者になるのです。このように上向きの三角形になるとみんなが成長する構造になるのです。

下向きの三角形はみんなが恐れから役割を演じています。犠牲者は自己肯定感が低いため自分では何もできないと思っていて人から助けてもらわないといけないですし、迫害者は自分が迫害しないと犠牲者側に回ってしまうのを恐れて迫害してしまうし(いじめっ子も似ていますね)、救済者は自分が助けたり人の役に立っていないと価値がないと思ってしまうのが怖いのです。

共通点としては、みんな自己肯定感が低く、幸せを自分で作り出すことができないため、幸せを人から奪おうとしたり、人に幸せにしてもらおうとしたり、幸せにしてあげようとしたりドロドロです。

上向きのトライアングルを「ザ・エンパワメントトライアングル」といい、エメラルドさん(コーチ/『The Power of TED』の著者)という方が、「TED」と提唱したのですが、このTEDではみんなが愛やパッションから活動しています。

クリエイター(創造者)は問題があっても自分の夢を叶えようとか、どういう理想の状態が欲しくて今何が必要とということを考えたりします。コーチは自分が役に立たなければ価値がないという恐怖からではなく、クリエイターの人を心から応援したいという気持ちです。迫害者は挑戦者となって、その人の成長を促す人になります。

人には人生で辛かった経験があると思いますが、例えば私の場合は大学で働いていた時に嫌な人がいたのですが、今思えばその人がいなければ私は大学を辞めてなかっと思います。そうすると今みたいに自分らしく活動することはできてなかったと思うので、あの人は私にとっての挑戦者だったんだろうなと思います。

人間関係の負のスパイラスから抜け出すには?

さて、少し話が飛んでしまいましたが、質問は「今実際に悩んでいることなのですが、私は救済者の立場で、犠牲者と迫害者の立場を行ったり来たりしている人が、パーソナリティー障害を抱えています。どんな相手でもこのサークルから抜け出せますか? 長く続く問題のため、相手の変化がどうしても期待できず、信じられなくなってしまいます」というものでした。

私もカウンセリングをしていたので、パーソナリティー障害の方が難しいということはとても共感できます。鬱や不安障害などの病気などとは違って、パーソナリティー障害は人格障害で、なんとなく培われてきたその人の性格なので、なかなか変わりにくいです。

まず私の考える答えとしては「イエス」です。ただし相手が抜け出したいときに限ります。ですから相手が抜け出したくないのに相手を抜け出させることはできません。

パーソナリティー障害の場合は、その周りの人は苦しんでいても本人が苦しんでないことがよくあるので、まずは今の関わり方が自分にとって役に立っているのかを考え、本人の問題となったときに本人が変わりたいと思うことが大切です。

本質から変えるということ

例えば、私がカウンセラーをするなら理想の未来を聞くと思います。ドロドロした関係を続けていく未来と、良い方向に変わっていく未来です。

パーソナリティー障害の方はDDTを起こすために行動しているといっても過言ではないです。これによってコントロール力とか影響力を感じたいわけです。DDTがTEDになる考え方は、その人たちにとって1番有効な考え方なので、ぜひ活かしてみてください。

人格障害は幸せに生きていたら発達しないので、人格障害の人はとても大変な子ども時代だったと思います。藁をもすがる思いで生きてきたら本当に藁だったというような経験を繰り返し、裏切られるという経験を繰り返している人が多いと思います。小さいころの親のケアや甘えが十分に満たされていなかったため、治療者に親を投影してケアを引き出しているという風に考えることもできます。

そして問題がない(幸せになってしまう)と人とのつながりが切れてしまうと思う人もいるかもしれません。親がずっと忙しかったけれど、病気など問題があったときだけ構ってくれた人とかはそう思うことがあるかもしれません。

私だったら未来を聞くこと以外に、枠をしっかりつくります。振り回されないための枠です。

例えば、予約は遅れたらキャンセルになるとか、人によっては自傷行為をしたらどうする、といった具合に「ここまではいいけど、これ以上の行動は私は許容しません」ということをはっきり言います。

その枠を超えてしまうこともあるかもしれませんが、その時は治療を終わらせて次の人に引き継ぐなどをした方がいいと思います。

その上でACR(積極的建設的傾聴)をします。ACRというのは、相手の良いニュースに関心をもって喜ぶということです。よかったことにプロセスフォーカスをするので、もしカウンセリングをされているのであれば、まず「最近よかったことは?」などと聞きます。「そんないいことがあったんですね。なんでそんないいことがあったのですか?」とその人にプロセスフォーカスして強みを引き出します。

あとはポジティブ心理学にあるVIAの強みの調査票も使うと思います。なぜかというと、自分が問題を持ってなくて人を振り回さなくても幸せに生きていける、人との関係が崩れないということを実感してほしいからです。自分に価値を感じられることが大事です。

先ほども言いましたがDDTの関係者は自己肯定感が低く、自分の幸せに責任を持っておらず、幸せの奪い合いをしているので、自分で幸せをつくれることを学ぶのは、とても役に立つと思います。心理教育としてDDTの話をしたり、ポジティブ心理学で幸せになるエクササイズを実践していくのもいいかもしれません。

とにかくその人に必要なのはヒーローではないのです。このような人たちは「今まで誰も自分を分かってくれる人はいなかった」と言い、カウンセリングをする人をヒーローに見立ててしまいますが、その人自身が解決できると信じることが大事です。ですので、ヒーローとしてではなくその人を応援する仲間の立場としてコーチのような関わり方をするのが良いです。そのためにはその人の強みを見てフィードバックし、ワクワクすることやつくりたい未来に興味をもち、その方向に向かっていくことが大事だと思います。

ポジティブ心理学のVIAの強みの調査票というテストを受けてもらい、動画セミナーにある8パートをそのままやってみることをおすすめします。セッションは毎回良かったことの話からはじめ、なぜそれが起こったのか成功の責任追及をし、そこから強みをフィードバックします。

強みが分かってくると、未来を描きやすくなるので、未来について聞いてそのために今何ができるか考えます。すると人を巻き込んで操作することよりも大事なことがその人の中で分かっていきます。

より専門的な話をすると、親への甘えなどを治療者に投影している場合は、本人が親に辛かったことを伝えるなど、親と向き合うことを勧める場合もあります。参考になったら嬉しいです。

それではこれでおしまいにします。素敵な1日をお過ごしください!


※「ニューヨークライフバランス研究所」では、幸せを科学するポジティブ心理学やウェルビーイング研究を日本語で分かりやすく伝える活動をしています。オンラインサロン、講師養成、各種講座やイベント、メディア配信などを行っています。

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