カバ

オリヴィア/禁断のルームメイト 23

ああ、どうしても彼が忘れられない。ぜんぜん忘れられない。欲望と快楽をつかさどる脳の部分の制御が効かない。痩せたいけど飲んだ後ピザ食べちゃうし、タバコも辞めたと公言しつつまだ実は吸ってる、私の方がサラより絶対に体が合っているのに。彼の体と私の体はパーフェクトに求め合っていたのに。

私は、彼の事を忘れる為に4ヶ月前から、トラウマ セラピーに毎週1回通っている。愛人だった彼との失恋の悩みを友人に相談する事もあまり出来ないし。どうせ「彼は諦めなよ、悪い人だよ」と言われるだけ。彼はそんなに悪い人じゃない!。カオリにも、ルームメイトと関係を持った事ある?って聞いたら、「お陰様で、今までハンサムなルームメイトと住んだ事はございません、笑」だって。
セラピーの先生からは自分に起こった辛い出来事を受け流す方法を学び、自分の体のどこにストレスを抱えているのかを感じ、それを解放して、ポジティブな考え方が出来る思考回路を作って行きましょうと言われた。

ポジティブね、そう考えられないから、セラピーに通ってるんだけど。

はてさて、どうやってポジティブな思考回路を作るか、、「最近、誰ともsexしてない、それって体に悪いわよね?」、「最近、女性ホルモンが減って来て、胸の張りの元になっている乳腺がもうパサついてきているの」って話す同世代の友達と比べれば、彼に遊ばれたとネガティヴに考えるより、彼との関係のお陰で私の体は女性ホルモンに満たされ。結果、私は自分の体を健康にできたのだからありがたい、なんてポジティブに考えられる??、、、そんなの無理。


なのに3日前、FBで彼に赤ちゃんが出来た事を知った。(吐き気がする)

OMGosh.....

電車の中で、Facebookのタイムラインをスクロールしていた時、全く予期せずサラと赤ちゃんの写真を目にした。。。逆に今日は天気もいいし、駅までの途中、道で知らないおじさんから「ハロー ゴージャス!」と言われて気分が良かったのに。その写真をみつけてしまった瞬間、脳が物事を把握して体に反応が出るまで3秒ぐらいかかって、What the fuc* is going on here??(えっ!なにが起こってんの??)となって、その後、ショックで過呼吸に襲われた。ハァー ハァー ハァー。肺か胸あたりが内側から張り裂けて、そこから液体とほろほろした中身が全て、少し混み合う車内の床にドボドボってこぼれ落ちて、他の乗客達はそのこぼれ落ちた欠片に気がつく事も無く、ぐちゃぐちゃ踏みつけにして、ユニオンスクエアの駅で降りて行った。そして、その空っぽになった所の感覚が一瞬無くなり、穴の部分が空気に触れて急激にひりひりして、もの凄く胸が痛くなってきた。しかも何度、呼吸を繰り返しても両サイドが開きっぱなしのパイプに風が通り過ぎるだけで、酸素が足りることはなくて呼吸が苦しい。

あの写真が頭から離れない、このままじゃ鬱への道まっしぐら。当然のごとく、何ヶ月か通っていたトラウマ セラピーの効果は全て水に流れた。

2人は結婚していないみたいだけど。。。彼のFBにはなにもポストされていない、血眼になってサラのFBの写真を見た、彼とサラの親友の写真も全部見た。友人達からのコメントも読んだ。2人が近くに住んでる所までは調べあげた。でも結婚はしてないみたい、でもサラの赤ちゃんが産まれている事は確か。うぅ、吐き気がする。先月出産したとすると、そこから10ヶ月を引いたとしても、私が最後に彼に会った時期とサラの妊娠時期がかぶっている、あの男、、、でも彼の赤ちゃんかどうかはまだ100パーセント確定していない。


昔はSNSなんて無くて、別れたボーイフレンド達の、その後の人生を知る術なんて無くて心が平和だった。どこかでお幸せに〜ぐらいにしか考えていなかった。自然に新しい彼氏が出来れば、前の彼氏のことなんてどうでも良くなっていた、私から別れを切り出した場合は特に。でも、知る事ができるとなると、なぜ、知りたくなってしまうんだろう。。。みんなが私は幸せ一杯です、充実してますって写真を自分もスターですって顔でポストし、SNSが人々を不幸にするという研究がされ結果が発表されましたと言われても、情報が人々の間に誤解を生んで諍いが起ころうとも、みんなそんな事にはおかまい無し。圧倒的に好奇心と利便性が勝って中毒化し、逆にプライバシーが守られていたSNSの無かったあの時代に後退する事はもう無い。見ない方が良いとわかっているのに、見てしまう。そして今、それが私に吐き気を催させている。

知らぬが仏時代を経験している中でも若い方の私達は、SNSが物心ついたときから有りました世代からすると古い人間で、微妙なお年頃。かといって完全にSNSを拒否して生きて行く事はもうほぼほぼ不可能で、新しい時代のスタンドードとなったSNSに私みたいな繊細で弱い心を順応させて行くということは、(特に人間関係面でいえば、)何度かのこういった苦痛と回復って作業を繰り返し、そのうちいっそのこと慣れてください、って事なんだろう。もうFBなんて絶対に見ない!

隣のルームメイトの部屋から Adeleの『Someone like you』が聴こえてくる。あなたの様な、他の男を見つけるわ〜、なんて悟ったイイ女風なこと、全然考えられない。(しかも、そんな重い事、歌われたら元カレ困るでしょ。)

ひたすら、眠れないから、風邪も引いてないのにNyQuil(風邪薬)を飲んで、ブランケットを頭までかぶってベッドにもぐり込んだ。

こんな時に限って、壁に霊でも見えるのかシーズー犬のローズが、私には見えない何かに向かって壁に吠えまくっている。  あぁーーもーう! うるさーい。

半年前に彼と寝た時、彼はサラとは別れたと言っていたのに。あれは嘘だったんだ、サラは妊娠中だったんだ、あの男!WTF!!  何を期待してたの私?。わかってた、わかっていたんだけど、心の中のどこかでは、最終的に彼は私を選ぶんじゃないかって期待していた。けど。。。やっぱり嘘だったんだ。

ガリガリにfake tits(偽物の胸)のあのブロンドのサラと違って、彼は肉感的な私の体をとことん貪り尽くして好きだと言ってくれたのに。体だけが好きだったの?じゃあ、でも、なんで私じゃないの? 私だって彼の子供が欲しかった。

悔しい気持ちとやるせない気持ち、嫉妬でいろいろもうわからない、彼の嘘、彼の気持ち、裏切り、サラの笑顔、サラの抱く子供、本当に彼の子供なのか?、全部読んだサラの赤ちゃんに対する友人達からのFBコメント、彼とサラと私の時系列、サラは私達の関係を知っていたのか?知っているのか?、脳の中の赤、青、黄色、緑の電線が絡み合ってどこをどこに繋いで、なにから先に考えたらいいのかわからない、あーー!。

今日、私はサラに、私達の愛人関係をすべてを打ち明ける事に決めた。


私はデトロイト出身、名前はオリヴィア、18歳からニューヨークに住み始めて、今年で20年が経つ、色々な仕事を経験して、今は演劇のワークショップで演技を学ぶ生徒達を教えている。

5年前からブルックリンのパークスロープにある赤茶色のレンガアパートの4階の3ベッドの部屋を借りていて。3つのベッドルームのうち1部屋は私、もう1部屋をトルコ人ルームメイトのオマーに貸している。そして、彼は2年前、その前に住んでいた中国系アメリカ人のロンが出た後、その部屋へ越して来た。

本当は自分ではそう思わない様に努めていたけど、彼が最初にあの玄関のドアから入って来た瞬間から私は彼に完全にクラッシュ(crush 夢中になる)していた。OMG! He is so cute!!(オーマイガー 彼、キュートすぎる!!)

顔はヒース レジャー似。昔アイスホッケーの選手だった彼の体は、ジムで鍛えたわざとらしい筋肉でなく、練習で鍛えられたナチュラルな筋肉が程よくついていて、セクシーなのがTシャツを着ていたってわかる。性格も優しいしチャーミング。

本当に私のタイプ、でも彼には彼女がいる。

彼女のサラはブロンド、背はそこまで高くないけど、顔も小さくて、モデル体形、胸はフェイク(私が思うに)、2人とも美男美女、本当にお似合いのカップル。つまらないカップル。

私は少しぽっちゃりだし、眼鏡でブルネット。この間カオリにブラジャーの位置が下過ぎるから新しいのを買い替えろって言われて、新しいブラジャーを買いに行って、胸の位置を少し上に見せる努力もしている。髪もお尻が隠れる長さだったけど、カルト教団の女性信者みたいだし、若さに欠けるから短くしろって言われたからセミロングぐらいに切った。もっと痩せていたときはモテてたし、かといって今だってそんなにモテなくもない。

サラは、あまり賢くはない、いわいるBIMBO(美人だけど馬鹿)。性格はさっぱりしていて鈍感、だから彼女は私達の関係に全く気がついていない様子だった。 それとも彼が私に魅力を感じているとは思いもよらなかったのかも。(ライバル視すらしてない?、、、それはそれで、、、、ダメだそんな事考えるの辞めよう。)

あれは私達が一緒に住み始めて、1ヶ月半が過ぎた頃の金曜の夜、9時をすぎたぐらいだった、赤ワインを飲みながらリビングのソファーの肘掛けにもたれながらでドラマ を見ていたら、少し酔っぱらった彼が帰って来た。

「Hey, How are you doing?   はーっ 疲れた。」

彼はジャケット脱いで近くにあった木の椅子の背もたれに掛け、冷蔵庫からビールのボトルを取って、いつもより陽気に、私の隣に、しかも私の近くに座って、ブルックリンラガービールを飲み始めた。(ちょっと、近くない? 緊張する)、彼の髪からは夜の外の匂い、シャツからは少しのアルコールと汗の匂いがする。

少し無言で ドラマの続きを二人で見て、コマーシャルになった時、彼は

「今日はどうだった?」とTVの画面から目線を外さすに訊ねた。

私は近距離の彼の方に振り返って、彼の端正な横顔を3秒ぐらいみつめて、

「うーん、今日は、教師が一人お休みを取って、そのクラスの生徒にも教える事になって、少し疲れちゃった、、」と答えた。

「そっか、、、俺は、帰りに、同僚と一杯飲んできたよ。」

、、、、

またドラマが始まったけど、彼が近くに座りすぎてて、続きが、あまり頭に入ってこない。

「オリヴィア疲れてみえるけど? 大丈夫?」

「うん、、、」

「マッサージしてあげようか? 俺、スポーツマッサージできるから。うつ伏せになって」

「awsome! (いいわね!)but, well... yeah....(う、うん。。。)」(いけないんだけど、無意識に顔がにやける、ダメなのはわかってる。ごめんサラ、彼女のプレイメイトみたいなブロンドが風になびき微笑んでいる顔が頭によぎる。いや、でも、マッサージだけだし。それ以上は無いから、、、私なにを期待してるんだろう。はは)

ソファーの上にうつ伏せになった私の太もものあたりに彼が股がってきた。はーーっ、私の体にかかる彼の重みすら心地いい。私は、完全にリラックスして体を預けた、彼は温かく少し湿った手で首や肩、腰をマッサージしてくれた。起き上がろうと振り返ると、彼がキスをしてきた。。。(きた、当然こうなるよね、、)

いつも思うんだけど、このソファーからキスが始まって、ベッドに行くまでの、この少し冷める変な間、どうにかならないものなのかな、、、人間の気持ちを読み取って、ソファーがベッドに瞬時に変身する時代はくるのかしら、、、

そして私達は、もう一人のルームメイトにもばれない様に、そっと、私の部屋のベッドに入った。

ベッドの上で重なる彼と私の脚元で、愛犬のローズが、吠えてる。少し気が散る。ローズいつもタイミング悪いんだから、、でも、今日はいいか、どうでもいい。

彼女がいる事は、わかっているけど、自分を押さえられない。正直、ずっと彼を触ってみたかった、私は、彼の背中の筋肉の凹凸からウエスト、腰へのカーブに手を這わせてずっと欲しかった彼の体を味わった。ウーッ、お互いの体がだんだん熱くなってきて、あぁ、生きてる感じがする。2人の肌が吸い付き合う。この人絶対に私の体が好きだ。。。私も。。。


それから、サラがここに訪ねて来る時は、頑張って普段通りにふるまった。理由を付けては、なるべくすぐ自分の部屋に逃げた。彼女のキャピキャピした笑い声が、キッチンから聞こえて来て私の神経にさわる。 仕方ないから、ヘッドホンで Brandy & Monica の『The Boy Is Mine』(彼は私の物)をボリューム大にして聴いた。

二人がいちゃついてる所なんて絶対に見たくない、彼女が来ると自然と顔がひきつる。平然な顔で2人にハーイと言って、どうでもいい会話ができるのは最長で3分。でも、彼にサラをここへ呼ぶなとも言えない。あーっ!モヤモヤする。

そして、サラが、「明日早いから、」と帰り。私が自分の部屋のドアを開けると、サラのつけてる香水『Romance』の彼女らしい甘いピンクっぽい香りがまだこのアパートのキッチンやバスルームのあちこちに漂っている。彼の着ているTシャツの胸元からもそのRomanceの香りがして、さっきまでここにいた彼女の存在感を主張している。それなのに、彼はそんな事には気にも留めずに無邪気に私を求めて来た。

「僕には彼女がいるし、、、君を彼女にする事はできない」と何度も言われた。けど、、、この状態から抜けられない。バッド エンディングが裕に予想出来るのにヤメられない。

禁じられた快楽の後には罰がくる。罰を受ける時が、酷だから禁じられているのだろうな大抵の気持ちがいい事は。。。しかも気持ちよければ気持ちいいほど罰も厳しい。。

彼にNOと言えないそんな生活が約11ヶ月間続き、部屋の更新の時に彼は引っ越して行った。

けれど彼はここを出て行った後も、1ヶ月に1回は私の部屋に訪ねて来た。

最後に会ったのは、半年前の11月

その後、彼に何度か電話をかけたけど出ない、着信拒否。私のナンバーから電話すると出ないから、彼の番号とは告げずにカオリのナンバーから電話をかけてもらったけど、「誰も出なかったよ」とカオリは言った。彼は出なかった。。。

私も多少の罪悪感はある、だけど嘘つきな彼が一番悪い。私は悪くない。それにしても彼は、サラ、赤ちゃん、私で性欲を満たし、、、それで幸せな家族?生活? 私はこんなに病んで苦しんでるのに?

ああー、、それでも、でも、彼に又ここに戻って来て欲しい。

今からこの文章をサラにFBのメッセンジャーから送る、

これを読んで、サラが彼を捨ててくれればいいのにな。。。。



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