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【小説】ジュリアン・バトラーの真実の生涯 (川本 直)

アメリカの文学史を彩ったジュリアンバトラーという架空の作家の評伝の翻訳という形をとった小説。

メタにつぐメタ的な作品でいてリアリティに余念が無いのが凄い!
こんなんその時代をリアルタイムで生きてきでもしないと書けないのでは?と驚愕した。
コレが初の長編作品ってのも凄まじいよ。
いったいこの虚構のために、どれほど膨大な読書が積み重ねられてきたんだよ!?
主要参考文献にまでおよぶ虚構にはお口あんぐり。
秀逸なタイミングで、アクロバティックに「事実」の合間に作者が望んだ空間を押し広げられるかの如くな絶技開放。
冒頭からかっとばしている勢いには脱帽。
いつも良書を読むと「とにかく古典を読め」と頭上鳴り響くんだけど、この本がまさにそう。

「もしもの文学史」という構造はタランティーノ監督の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を想起させる。
もしもあの時代にあんなやつら、こんなやつらがいたら的な。
そんなこんなで、いつのまにかジュリアンの一挙手一投足に夢中になっている。

表紙の絵の構図については既視感があったけれど、読んでいくうちに成程と納得しニヤける。

本書がフィクションであると表記を認めてから何故だかホッと一安心してしまう自分がいた。

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