【小説】堕天使拷問刑(飛鳥部 勝則)

両親を事故で亡くし、母方の実家に引き取られた中学1年生の如月タクマ。
が、そこではかつて魔術崇拝者の祖父が密室の蔵で怪死した事件が起きていた。
さらに数年前、祖父と町長の座をめぐり争っていた一族の女三人を襲った斬首事件。
二つの異常な死は、祖父が召喚した悪魔の仕業だと囁かれていた。
呪われた町で、タクマは「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗に惹かれた。
残虐な斬首事件が再び起こるとも知らず……というお話し。

初版本から再販されず、数万円ものプレミア価格で出品される本書が再販されたとの事で興味を持ち手に取った次第。

『ジョン・ディクスン・カー ＋ ボーイ・ミーツ・ガール』カー信者なので個人的に帯のこの文句だけで期待値が跳ね上がるが、それを上回る怪作。
癖は強いのであまりオススメはできないが、個人的には十二分に楽しめた。

現実的なロジックを辿っていた筈なのに、突然の非現実感をこれが現実だからと叩きつけられて打ち倒されたと思ったら、また現実に引き戻されて打ちのめされるという魔的でいて滅茶苦茶な目にあわさせられるドライブ感、堪らないな。
基本的にミステリーなんだけど、世界観は幻想小説っぽさがあり、バカミス、多重解決要素もあって、一言で形容するのが難しい魅力的な作品。
リアリティは無い、しかしそれがどうしたと言わんばかりの熱量を肌に感じ、あらゆる怪奇ミステリーのオマージュと愛のある一作。

特典の小冊子短編については割愛。
面白くはあった。
これを機に派生した短編集が出る事を望む。

本編そっちのけの20頁に及ぶ不二男少年のモダンホラー小説レビューは中々に興味深かった。
自分も友人と互いに自作レビューつきのミックスMDを交換し合ったあの日の事を思い出したりしたのであった。

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