【小説】蛇にピアス (金原 ひとみ)
蛇の様に二つに割れた舌を持つアマ。
アマと同棲しながらサディストな彫り師シバと関係を持つルイ。
彼女は自らの舌にピアスを入れ、背中に刺青を彫り、肉体改造にはまっていく...というお話。
前半は兎にも角にも痛々しい描写や会話が繰り広げられる。
痛みと文才が爆発している。
何となしに初期の村上龍を彷彿とさせる雰囲気。
3人の不均衡な関係の描写もさることながら、退廃的に見えつつ実際には社会から落ちぶれていない辺りとか絶妙にリアルだし、性的な描写も遠慮がない。
純文学おなじみのぶん投げて読者に委ねる辺りもさもありなん。
「私が生きていることを実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ」この思いが主人公の生き様をよく表しているのではと思える。
終盤、自身を大丈夫だと肯定するルイ。
大切なのはそれを知った上でのルイの感情なのだろう。
不確定な感情を抱えて感じたもの。
それは、言葉では言い表せない何かであり、一見荒唐無稽に見える終わり方はむしろ生々しい現実だと感じる。
いつの時代も、生きている実感を求めるのは人間の性(さが)なのだろう。
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