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なんでもない最高の1日

朝からポカポカ陽気。

その日は午後から夫が固定の仕事。

午前中のうちに、息子を連れて、近所の神社まで家族3人でお散歩。

絶賛、人見知り、場所見知りの息子は、このお散歩コースは苦手。すれ違う人や公園ではしゃいでいるお兄ちゃん、お姉ちゃんたちが怖いようだ。

でも、この日は、通る車や停まっている車を指差してものすごく上機嫌。トミカですっかり車が大好きになった息子にとっては公園よりも近所の路地の方が楽しくなってきたのかもしれない。息子の成長に驚かされる。

神社に到着。桜は散ってしまっていると思っていたのに、ソメイヨシノとは違う種類の桜が咲いている。

ソメイヨシノの花びらが少し舞っている。

ああ、去年の今頃は、不安でいっぱいだったなあ、と思い出して、今の穏やかな気持ちをより幸せに感じる。

息子と夫の上に花びらが舞い落ちる。その光景を眺める私。

これ以上の幸せはない。

帰り道、お散歩中は少し緊張してか、なかなか笑ったりしない息子が、私とじゃれ合って声を出して笑う。

春なのに、夏のような日差しが痛いくらい。

3人で笑いながら、汗をかきながら、歩く。

春が来た。

息子がお昼寝している隙に、ばあばとじいじに息子を頼み、私は仕事をする。

1人で車で出かけようとエンジンをかけると、ショパンの英雄ポロネーズが車内に響き渡る。

耳が心地良い。

用事を済ませて、駐車場から出ようとしたら、左車線は渋滞で、右車線は駐車場から見えにくく、なかなか出られない。

しまったなあ、と困っていると、左車線に1台の車が停まってくれて、中から年配の男性が手招きしている。

精一杯頭を下げて、駐車場から出る。

ハザードランプを何度もカチカチとさせた。

小さな優しさが心に染みる。

まるで世界が私に微笑みかけているような気さえしてくる。

ショパンが幸せな気持ちに拍車をかける。

信号で右折をしようとしたら、途切れることなく車が続く。

しまったな、後ろ渋滞してるな、と思っていると、前から来た車がライトをピカッとさせた。

遠くまで見えるように大きく大きく頭を下げて右折した。

なんだか泣きそうになった。

今日はなんて良い日なんだろう。

信号のない横断歩道に女性が立っている。

そっと停まると、女性は頭を下げて渡ってゆく。

なんだか春が優しさを運んで来たような気がした。

紛れもなく、この日は、最高の1日だった。

全ての人が、なんでもない1日を過ごす権利を奪われませんように。

そっと、心の中でつぶやいた。

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