秦さきよ

医療ノンフィクションライター秦佐起代です!医療や介護、教育をつうじて【人】を描きます。…

秦さきよ

医療ノンフィクションライター秦佐起代です!医療や介護、教育をつうじて【人】を描きます。ポートフォリオはこちらです⇒https://note.com/nursewritersaki/n/n915daade08ed

最近の記事

  • 固定された記事

秦佐起代|ポートフォリオ

秦佐起代のポートフォリオをご覧くださいまして、誠にありがとうございます!福岡を拠点に活動するルポライターです。 得意分野は糖尿病、介護、認知症、慢性疾患、看護教育、子育て、インタビュー取材・執筆などです。 看護師として、医師や病院経営者、患者サイド、両方の視点で切り込んだ取材が可能です。 単なる情報伝達ではなく、読者に感動を与える原稿の執筆を目指しています。 以下、実績の一部を掲載しておりますので、どうぞご覧くださいませ。 最後にお問い合わせフォームを掲載しております

    • 愛とシゴトとナイチンゲール(8)アパートの床に崩れ落ちる新人看護師の闇

      新人看護師の『勤務後』は壊滅している 芽以はその日の勤務を終え、1人暮らしのアパートに自転車で帰った。就職が決まってから急いで借りたアパートは、病院を出て大通りを5分走るだけで、すぐの距離だ。玄関を開けるや否や、その場にドサリとカバンを放る。 ただでさえものぐさな性格の芽以には、仕事が終わった後お風呂に入る気力がないらしい。芽以はものぐさだけど、清潔観念がないわけではない。体が汗や汚れにまみれているので、さすがに布団には入らない。 崩れるようにアパートの床に横たわると、

      • 愛とシゴトとナチンゲール(7)自由に入浴する権利は、平等に与えられてはいない

        入浴介助の大変さとやりがい ベッドの周りをそろそろと数歩しか歩けない吉井さんは、もちろん自分一人ではお風呂に入れない。吉井さんは週に一度、入浴介助というケアを受けてお風呂に入る。 ただお風呂に入るだけでしょ?と思うなかれ。入浴介助とは、看護師にとってなかなか骨が折れるケアだ。 ふつう入浴するときは浴室で衣服を脱ぐけど、吉田さんは自分では着脱できないため、入浴前に病室で2人がかりで衣服を脱いでもらう。裸の上にバスタオルなどを掛けて準備する。次に介護リフトで吉井さんを寝た状

        • 愛とシゴトとナイチンゲール(6)待合室の長椅子に離れて座る他人のごとき夫婦

          これはある日、外来の待合室で見かけた光景だ。 ある片麻痺の高齢男性患者さんが、奥さんに伴われて外来に来ていた。待合室はガラガラでふたり一緒に座れるのに、この夫婦は別々の長椅子に座り、目も合わさなかった。 ご主人は麻痺がありながらも陽気に看護師や事務員に話しかけて楽しそうだが、奥さんの方を振り向くことはなく、まるで面識のない人同士のように振舞っていた。 やがてご主人は名前を呼ばれると杖をつき、足を引きずりながら診察室に入った。一方、奥さんは寄り添うでもなく、待合室に座った

        • 固定された記事

        秦佐起代|ポートフォリオ

        • 愛とシゴトとナイチンゲール(8)アパートの床に崩れ落ちる新人看護師の闇

        • 愛とシゴトとナチンゲール(7)自由に入浴する権利は、平等に与えられてはいない

        • 愛とシゴトとナイチンゲール(6)待合室の長椅子に離れて座る他人のごとき夫婦

          愛とジゴトとナイチンゲール(2)いい看護師の定義って?

          看護師は患者さんにジャッジされている いい看護師が辞めるというのは、実は患者さんにとっても、いや本来は患者さんにこそ大事件である。確かに『看護師』は病院にはたくさんいる。しかし患者さんにとって、看護師は大勢の中の看護師でありながら、実はそうではないからだ。 それは一体どういうことか。 患者さんの中には、看護師の『名前』を覚えていない人も少なくない。白衣を着て病院内を歩いていれば、みんな『看護師さん』と思っている患者さんが多い。 それでいて患者さんは『話しやすい看護師』

          愛とジゴトとナイチンゲール(2)いい看護師の定義って?

          愛とシゴトとナイチンゲール(5)お年玉が意味する関係性があるから

          孫へのお年玉ある年末のこと。いつものように吉井さんに呼ばれた。 「そこの引き出しにポチ袋が入っているから、取ってくれない?」 床頭台の引き出しを開けると、ピンク色にクマさんがついたポチ袋が入っていた。 「これ?」 「そうそう」 吉田さんは嬉しそうだ。 「お年玉?」 「そう。孫がね、正月に会いに来るっていうから、お年玉を準備しようと思って」 吉田さんが手を伸ばしたのでポチ袋を渡す。私はいつも自分から吉田さんの行動を誘導するのではなく、吉田さんのペースに合わせて行動す

          愛とシゴトとナイチンゲール(5)お年玉が意味する関係性があるから

          愛とシゴトとナイチンゲール(4)それは看護じゃないかもしれない

          ある日私は、先輩に呼ばれた。吉井さんのことでちょっと話したいと言う。先輩は、日勤者が帰宅した後のナースステーションに静かに待っていた。日勤が終わった後は本当にけだるい。早く帰りたいのになあという思いと何を言われるのかなという緊張感が入り混じる。 「何でしょうか?」と立ったまま尋ねた。 「ねえ国武さん。ハッキリ言うね。あなた、吉井さんのナースコール取りすぎだと思うのよね」先輩が話しを切り出した。 「わかってると思うけど、吉井さんがうちらを呼ぶのって、そんなに大事な用じゃな

          愛とシゴトとナイチンゲール(4)それは看護じゃないかもしれない

          愛とシゴトとナイチンゲール(3)ナースコール取らなくていいから

          無視せよ「あの患者のナースコール、取らなくていいから。あなたは別の仕事して」 新人看護師だった頃、先輩から言われた言葉である。「あの患者」とは、重症リウマチで入院中の吉井さんのことだ。 患者さんのナースコールは、取るものであって無視するものではないはずだ。看護師になりたての私には、まるで「自分が無視される対象」になったかのようにショックを受けた。 吉井さんのナースコールは回数に限度がなかった。用件も些細なことだった。「ベッドの下に置いている箱を取って!」「床頭台の小帚を

          愛とシゴトとナイチンゲール(3)ナースコール取らなくていいから

          【書評】戦火と政府から命がけで逃げた全裸の少女ー「ナパーム弾の少女」五〇年の物語を読んでー

          書店で見つけ、手に取らずにはいられなかった"「ナパーム弾の少女 」50年の物語"を読了した。表紙の写真は誰もが目にしたことがあるのではないだろうか。ピュリッツァー賞を受賞した有名な写真である。 ベトナムを南北に真っ二つにし、米ソが熾烈な戦いを繰り広げたベトナム戦争。この戦争では、ナパーム弾という悪名高き非人道兵器が使用された。この兵器は、ガソリンに化学薬品を混ぜて粘度を上げ、爆発したら対象にガソリンがへばりつき、900℃~1000℃の高温で焼き尽くすものだ。原料にヤシ油が使

          【書評】戦火と政府から命がけで逃げた全裸の少女ー「ナパーム弾の少女」五〇年の物語を読んでー

          愛とシゴトとナイチンゲール(1)いい看護師はすぐに辞めてしまう

          いい人はすぐに辞めてしまう 「えっ、あの看護師さん辞めちゃったの?いい人だったのに残念だねー。」 あなたも、かかりつけのクリニックや病院でこんな経験はないだろうか? 私は新人看護師だった頃、勤め先の病院で「いい看護師さんが辞めていなくなる」という事態に遭遇した。「いい看護師さん」の退職は、病棟ではちょっとした事件になる。 私は、今年4月に薬師寺総合病院に就職した看護師、国武芽以、23歳。看護大学を卒業したばかり。秋は深まり、1年目も半分以上過ぎたのに、成長の兆しが見え

          愛とシゴトとナイチンゲール(1)いい看護師はすぐに辞めてしまう

          チャット風インタビュー記事は難しいのか|スマホ世代と黒電話世代ライター、歴然とするコミュ力の差

          Q&Aのインタビュー記事よりも、さらに短いやり取りで読ませる、チャット風のインタビュー記事がある。自然な会話文が吹き出し形式で繰り出され、実に小気味よく展開していく。インタビュアーとインタビュイーの対話を目の前で聞いているかのようなテンポだ。 活字離れと言われる昨今、読者に記事を読了してもらうため、ライターや編集者はありとあらゆる知恵を絞る。一説では、若者が読了する記事は3500字が限界なのだそうだ。小説のカテゴリーにケータイ小説なるものが出現して久しいが、ツイッターのよう

          チャット風インタビュー記事は難しいのか|スマホ世代と黒電話世代ライター、歴然とするコミュ力の差

          コロナ禍における糖尿病エンパワーメント―エビデンスでスティグマを癒す方法―

          2020年に世界中で新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)が広がり始め、一年が経過しました。コロナ収束の糸口がいまだ見えない中、私たちは今後も感染拡大を防止する生活を続けなくてはなりません。 コロナ禍において糖尿病患者が抱える問題点を挙げ、コロナ禍での糖尿病エンパワーメントについて述べたいと思います。 1.コロナ禍における糖尿病患者のスティグマコロナ禍での糖尿病自己管理について、ある糖尿病患者の方が「糖尿病であることで家族や周囲の人から過剰に心配され、とても不愉快だった」

          コロナ禍における糖尿病エンパワーメント―エビデンスでスティグマを癒す方法―

          ナース妻はなぜ謝らないのか?~ジェンダーバイアスを手放そう~

          夫や子どもに対して絶対に謝らない。これは新たに発見されたナース妻の生態です。 ナース妻はなぜ謝らないのでしょうか?その謎に迫ります。​ ナース妻シリーズ#01 ナース妻はなぜ強い?〜気になるその生態とは〜まずはこちらをどうぞ♡ https://note.com/nurselab/n/n7717f8526d0b 1. 本当はわかっているけれど 「お母さん、今日お弁当にお箸入ってなかったよ」と、学校から帰宅した子どもに言われても、謝罪の言葉は出てきません。 ナース妻は「自

          ナース妻はなぜ謝らないのか?~ジェンダーバイアスを手放そう~