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普通のオッサンが工具でボコる。「スーパー!」はとんでもない映画だった。

無能力系ヒーロー

かつてキック・アスという映画に衝撃を受けた。

アイアンマンエックスメンといったマーベルのヒーローや、スーパーマンバットマンといったDCのヒーローたちの活劇が、毎年のように映画化されている昨今、ヒーロー全盛といっても過言ではないと思う。

キック・アスは、ごく普通の高校生がスーパーパワーに目覚めることもなく、戦闘用の特殊スーツもなく、ヒーローたちと同じような活動をしたらどういう顛末になるのかという、まさに現代におけるドン・キホーテともいえる傑作だった。

さて、素人ヒーローものという意味でキック・アスと似通った設定のマニアック映画がある。それが「スーパー!」です。

2011年の夏、渋谷のミニシアターでキック・アスみたいな映画をやっていました。赤いタイツのメタボなおじさんがどういう顛末に陥るのか気になり、入場したところ大当たりだった。自分的にはキック・アスよりもスーパー!を推したいと思う。
キック・アスが好きな人には見比べてもらえると楽しいだろうし、スーパーヒーローが活躍する映画が好きな人にも是非見てほしいです。

バイオレンス・アクション・コメディ

うだつのあがらない中年男フランクは美人妻のサラを溺愛していますが、元麻薬中毒者だったサラはフランクをおいてドラッグディーラーと浮気をして立ち去ってしまいます。神の啓示を受けたフランクはクリムゾン・ボルトというヒーローになり、配管用のレンチを武器に自警団的な活動を始めます。

ところどころで爆笑するポイントがあるものの、やがてクリムゾンボルトは相棒のボルティーとともに麻薬組織の邸宅に乗り込み、全面戦争となります。

銃社会のこわさ

街のパトロールをしていたころは近接戦闘用の工具一本で頑張っていたクリムゾン・ボルトさんですが、いざ最終決戦を前にしてガンショップに行きます。そして拳銃にマシンガン、ロケットランチャーなどいろいろと買い込むのです。

アメリカってすごいですよね。街中で普通に銃が販売されているという。守るべきもののなにもない人が大量殺人をおかせる手段を簡単に手に入れてしまうという状況。恐ろしいですよね。暴力に縁のない男だったフランクが殺人鬼になれてしまうという。もちろんヒーロー映画のように悪人たちをぶっ殺してスカッとできるだけではなく、後味も悪く、取り返しのつかない悲劇にもあいます。

小市民の魂の叫び

最後、命乞いをするドラッグディーラーは「処刑しようというのか? お前だって俺と同じだ。割り込んだやつを半殺しにした」それにたいする主人公の叫びが悲痛で共感してしまいました。

割り込みは悪だ。

麻薬密売も悪だ。

児童虐待も悪だ。

私欲のために人を苦しめるな。

遠い昔に定められた不変の掟だ。

声を大にして言えたことのない、真面目な人の心の叫びにグッとくるものがありました。

キックアスとの差異

キックアスでは戦う女子小学生ヒットガールが武装したギャングを相手に大暴れをするなど、ポップな部分もあったのですが(これでクロエ・グレース・モレッツは人気俳優に)スーパー!は終始、現実によせた展開でした。特に後半はシリアスだったので、作品のテーマにたいする着地がうまかったと思う。

なにげに出演陣が豪華

ドラッグディーラー役にケヴィン・ベーコン。妻のサラ役にリヴ・タイラー。相棒のボルティーとしてエレン・ペイジ(いまはエリオット・ペイジ)が出ています。
主人公のオッサンは……レイン・ウィルソン……あんまり知らん人やけどJUNO/ジュノでエレン・ペイジ(エリオット・ペイジ)と共演しているみたいです。ジュノが妊娠検査薬を買った雑貨屋の店員役って、ほんとにチョイ役ですけど。


#映画感想文

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