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NumataTaira
2023年5月28日 00:58
〈嵐の日に〉夢の中、車を運転していた。台風がすぐそこまできていて、凄まじい風が吹いていた。わがスバルのスペックは情けないばかりで、ターボもついてないし、馬力もトルクもやわなもので、台風の風に押し戻されんばかりだった。フォグランプを点け、マニュアルモードに切り替えた。後の座席に二人、家族が乗っていた。子どもたちだろうか…やがて風をつかまえた帆船のように車はスイスイと前進するようになった。帰りはた
2022年2月11日 22:20
〈少年の夢〉その晩のあまりに寒きに少年は思ひを奪はれたり時凍つままに時虚しく流れ去ぬ夢の街に槌音の絶え木々の枝の垂れ沈む雪凍つ晩に思ひの灯は灰燼に消え入りぬ〈終末〉戦争らしい避難所に大勢の人たちが集まりあわてた様子で行き交っている野戦病院なのかわたしが廊下を出口に向かって走っていると涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした女の子に出くわしたどこの誰かもわからず身
2021年12月29日 00:08
〈神隠し〉神隠しにあひたしと思へど隠し神の何処へか隠れ給ひきされば邪教の夢見者となりて裏路地の灯火の下賑わふ人らのあひだを縫ひどこまでも彷徨ひ歩けばマヨヒガの窓の灯りとほく近く明滅し暗き橋は崩れしも街隔てたる河渡るべし〈ゆふべの歌〉芭蕉の〈秋の暮れ〉も柳田国男の〈ゆふぐれ〉もヴェルレエヌの〈池のほとり〉もクジラやトビウオの群れたちとともにマイクロプラステ
2021年11月30日 23:16
〈近接類同相〉野良なれど我が物顔の「ウチの猫」蒸し風呂を背広で泳ぐ夕立後終電を待ち蒸されたり三番線湿気忌む妻は窓閉めエアコン派ほろ酔ひの一人祭りの夏夜かな息子には息子の思ひありと知れども子のレポートに口出し過ぎと妻怒るメルカリで妻に古書を買つてもらふ姪が児を宿しけりとや百日紅休日にあちこち修繕書も読めず老ひ兆す視界に糸くづ稲妻も健診も終へぬ久しき冷や
2021年8月22日 17:37
〈夢の虫〉我夢詠ずれば日々是虚し我夢詠ずれば日々是哀しされど秋の虫のごとただただ夢を詠ずれば時に愉しきこともありなむ〈デパート〉明るい照明ピカピカの床にガラス扉わたしは人の流れの中をあるく二階では新入社員の若者たちが整列して研修を受けているそんなデパートの光景が夢に現れたらわたしの時間は何も選択せず思考が拡散していく日々を送っているということだすると時
2021年7月31日 23:34
〈写生論〉 屋上に冬の山なみ撮る人ら 初磨き踵減りたる老兵や 快晴も気の晴れぬまま初仕事 終電を待ち凍えたり3番線 夜更けまでキーボード打つ娘なり 冬嵐寝覚めに聞けば夢芒 寒風や老義父乗せて神経科 合否如何発表今日日ネットにて 菜の花や入学式の子のスーツ 講義ほぼリモートばかりと息子言ふ 「うちの猫」と子らが呼ぶやつ庭にをり 蛙鳴く常熟の夜の酒一合
2020年7月18日 18:28
忌み嫌う兄は鬱病みA病棟✴︎海馬萎え父は醜く枯れゆけり✴︎生家をば癲狂院と呼び、出でき✴︎泥の山田、埋められたり蛇の死骸✴︎金網のフェンスささくれ葛の餌✴︎車過ぐ轢かれし狸の傍を✴︎廃校の隣の梨棚蟲憑きぬ✴︎誰もが苛め苛められて育つ町✴︎通学路ケバき電飾の城たてり✴︎側道は芥と倫理の捨て
2020年1月19日 20:08
〈季節詠〉 冬ざれの沼地にひとり佇みぬ ✴︎ 枯れ野原古き祈りや草木塔 ✳︎ 冬寒や子らの寝息ぞ夜に満つる ✴︎ 枯れ草に雪は降り積む音なき夜 ✴︎ 寒き夕雲鋼色雀騒がし ✴︎ 妖の宴や夜更の花の下 ✴︎ 五月雨の鉄路に照るはビル灯り ✴︎ こもれ陽や午睡の春に羽虫鳴る ✴︎ こもれ陽の揺れてラジヲのほの聞こゆ ✴︎ 蝉喧