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短い営業時間

第5章 本屋をダウンサイジングする(6)

 個人のサイズで考えると、営業時間にもおのずと限界がある。いわゆるサラリーマンの労働時間と合わせるなら、残業なしで八時間だ。毎日ひとりで店に立ち続けるなら、最長でもせいぜい一〇~一二時間くらいの営業時間にしておくのがよいだろう。

「代官山蔦屋書店」の長い営業時間が、新たなライフスタイルを生み出したことについて、前章で書いた。もちろん長く営業できるに越したことはないが、一方でもうひとつの例として挙げた「弐拾dB」は、平日は四時間しか営業していない。残りの二〇時間の中に、開けていればもっと売上があがる時間帯もあるだろう。そのぶんの家賃がもったいない、という考え方もある。けれど、平日の深夜四時間しか開けていないからこそ、名が知られているという面もあるのだから、一概には言い切れない。立地の話とも似て、一等地にあたるような時間帯をあえて外すことで、隠れ家的にしているともいえる。

 そのように考えると、営業時間を短く絞ることもまた、意志をもった人しか来ないようにするための方法として有効だ。来るべき人は、きちんと営業時間を調べて、その時間を目がけて来てくれる。ならば営業時間は、自分の店にとって最も心地よい時間帯、あるいは売上効率のよい時間帯に絞って設定しても構わない。もちろん「弐拾dB」のように、どこかにギュッと短く絞ることで、店の個性を表現する手段に使うのもよい。

 売上のことを考えたら、そう言い切れないときもやってくるかもしれない。けれど客の気持ちになって考えると、営業時間は後から短くするより、後から長くするほうがよい。最初は短くはじめて、じっくりプライベートの時間を取る。本屋なのだから、本を読む時間くらいつくりたい、と考えるほうが真っ当だ。 

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P194-P195より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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