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集客や営業のために

第7章 本屋を本業に取り込む(2)

 まず考えられるのは、本業における集客や営業のための本屋だ。本屋はもともと、誰でも気軽に入ることができる。お金を使わなくとも得られるものがあるため、他の業態よりも相対的に集客力がある。

 本業が既に店舗を構えるビジネスをしていれば、その店舗の一部で本を売ること、小さな本屋を混ぜ込むことは、集客につながる可能性がある。これまでその店舗に入りにくいと感じていた層を、新たに取り込むことができるからだ。本のタイトルを眺めたり立ち読みをしたりできるぶん、客当たりの滞在時間も伸び、店ににぎわいも生まれる。

 また、それまで店舗を構えていなかったとしても、ターゲット層に特化した本屋をつくって運営することができれば、見込み客を集める、営業上の拠点になる。新規の顧客が開拓できるだけでなく、既存の顧客をつなぎとめる役割も果たす。

CASE1:インテリアショップが一角で本を売る

 インテリアショップの一角。椅子やテーブル、照明、そして本棚などが、実際の部屋のように並んでいる。ディスプレイのコンセプトは、とある本好きの部屋。本棚に囲まれた生活の心地よさを演出している。本屋としてはそれほどの冊数ではないが、いち個人の趣味のひろがりが見えるような面白い品揃えで、並んでいる本はすべて購入することができる。

 集客を目的にしているので、外からも本が売っているとわかりやすいように工夫した。今までは入店しなかったような通りすがりの人が、気になって入ってくる。また、二人組で来た客のうち一人が家具の購入を真剣に検討している間、もう一人が本を読んで過ごしているような場面もよく見かけるようになった。

CASE 2:住宅メーカーがモデルハウスで書店を経営する

 住宅メーカーが建てたモデルハウス。いわば家の見本であるが、せっかくある空間を生かして、地域住民に親しんでもらえるような何かができないかと考えていた。そのような中、その地域に一軒だけだった街の書店が、残念ながら閉店してしまった。そこで、モデルハウスを書店にすることにした。

「暮らし」を中心的なテーマとして、幅広いジャンルの本を取りそろえ、週末にはイベントやワークショップなども開催する。そこから、自分のライフスタイルについて考えるきっかけを生み出す。いますぐ家を建てるつもりがない人にも、そこで時間を過ごしてもらうことで建物の魅力を実感してもらえれば、いずれは結果にもつながると考えている。

CASE 3:印刷会社が紙や印刷、編集やデザインに関する専門書店を経営する

 自社の印刷技術、クオリティや価格を、より多くの人に知ってほしい印刷会社。新規顧客の開拓はこれまで、口コミやウェブサイトなどに頼るしかなかった。より多くの人に知ってもらうため、営業拠点を兼ねた書店をオープンすることにした。

 紙や印刷、編集やデザインに関する本を、専門的に取り揃えている。ふつうの書店では手に入りにくい海外の本や、出版流通に乗っていないインディペンデントな本も多く取り扱い、ネット通販も積極的に行っている。また、自社で印刷した印刷物を書店として仕入れて販売するサービスも好評だ。営業担当にとっても、紙見本や印刷見本と一緒に、完成した実例を目の前に見せながら話ができるので、さまざまな提案がしやすくなった。

※『これからの本屋読本』P265-269より転載/イラスト:芦野公平


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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