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ブランディングのために

第7章 本屋を本業に取り込む(4)

 友達の家の本棚を見ると、その人の考え方や趣味がわかってしまう。それと似て、どんな店舗やオフィスでも、そこに本棚があれば、その店や会社の思想や美意識を示す強いメッセージを発することになる。法「人」というように、会社もひとつの人格をもっている。個人の本棚に人格があらわれるように、法人の人格もまた、本棚にあらわれてくる。そこにどんな本が、どのように並んでいるかということが、良くも悪くもブランドイメージを規定することになる。逆にいえば、それを正しくコントロールできれば、本棚を通じてブランドが伝えたいことを発信することができる。

 それは個人であっても同様だ。多くの人の目に触れる場所で、いま本業として取り組んでいること、これから取り組んでいきたいことについての本を並べて発信することは、いわゆるセルフブランディングの一環となる。

 なお、ここではブランド側のメッセージを発信するという目的に焦点を当てているが、ケースによっては結果的に、集客や営業に役立ったり、顧客満足度を上げたりすることも起こるだろう。

CASE 7:自動車の期間限定キャンペーンで旅の書店をする

 自動車メーカーの販売店。旅の相棒をコンセプトとした、新モデルの発表に合わせたキャンペーンとして、期間限定で旅をテーマにした書店を開くことにした。

 実際は、どんな自動車であっても旅には出ることができる。そんな中で、旅といえばこのモデル、というブランド認知を生み出すことを狙った。CMの撮影に使った小道具なども配置し、旅先で本を読んでいるような空間を再現している。

CASE 8:食品メーカーが食文化のライブラリをつくる

 大手食品メーカー。大量生産の食品を作っていると、どうしてもメーカー側の理念やこだわりは消費者に伝わりにくい。そこで、社内ライブラリをリニューアルし、一般に開放することにした。

 世界の食文化に関する専門的な資料を、誰でも閲覧できるようにすることで、開発までの背景にはこうした膨大な知見があるのだ、というメッセージを発することを狙った。週末は様々な国の料理教室や、調味料に関する勉強会なども行い、多くの人が集まる。

CASE 9:シェアオフィスの一角を古書店にする

 フリーランスのデザイナーや編集者、ライターが数名集まり、オフィスをシェアすることにした。たまたま広い物件が格安で借りられたので、その一角を古書店にすることにした。

 交代でレジに座り、そこでも仕事をする。自分の蔵書や仕事の資料を並べているだけでそれほど売れないが、「あの本屋をやっている人たち」として名前も売れてきたし、棚を見ればこちらの得意分野がわかるのか、前からやりたかった種類の仕事も来るようになった。

CASE 10:知的なイメージで売り出しているタレントが書店をプロデュースする

 知的なイメージで、本を紹介する番組にも出演する人気女優。所属事務所は、自社ビルの一階で、彼女を店長として書店を経営することにした。

 自著でなくても、オススメ本にはすべて彼女のサインが入っているのが特徴だ。もちろん実務は書店経験者がやっているが、彼女も不定期で店に立つため、一目見たさに訪れるファンも多い。好奇心で覗いた本好きも、その本格的なセレクトに唸る。

CASE 11:地元企業が周辺住民のためのライブラリを運営する

とある街が創業の地で、いまもそこに本社工場がある企業。周辺に住む人たちが集う憩いの場として、長年にわたってオープンなライブラリを運営している。

 子どものころからこのライブラリに親しみ、それがきっかけで入社した社員もいる。地域コミュニティに貢献し、自社の事業についても知ってもらうことで、街の人々から愛されながら、安定した成長を続けている。

※『これからの本屋読本』P273-278より転載/イラスト:芦野公平


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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