これからの

本屋で生計を立てられるか

第3章 本屋になるとはどういうことか (3) 

 マスメディアで頻繁に取り上げられるような目立つ本屋も増えているので、たまに勘違いされていることがあるが、もしそうした本屋を単に「最近流行の儲かっているビジネス」として捉えている人がいたら、ここで考えをあらためたほうがよい。

 たとえば、落ち着いた内装で、雑貨なども売っていて、カフェを併設しているようなスタイルの本屋は、たしかに最近増えている。ビジネスとして、うまくいっているように見えるかもしれない。けれどぼくの知る限り、それらの多くはまだ実際は試行錯誤の段階で、利益の出ていない店もたくさんある。もともとそのまま続けるのは厳しいような状況にあって、成功事例の表面だけをなぞってリニューアルしたとしか感じられない店もあり、そういうところは概して苦しんでいるように見える。

 何かビジネスをはじめたい。どうやら本屋が流行っていそうだ。そういう順番で本屋という選択肢にたどり着いた人がいても、もちろん構わない。とにかく本屋が増えるのは喜ばしいことで、むしろそういう人にこそ変革ができるという考え方もあるかもしれない。けれど、本を売ることをビジネスとして成り立たせる、それでひとりの人間が生計を立てるということが、簡単な道ではないことは、覚悟しておく必要がある。

 どちらかといえば、厳しいことは最初からわかっている、それでもどうしても本屋がやりたい、という人を想定して本書は書かれている。なんとしても本屋を本業として生計を立てていきたいという人も、やれないことはない。とくに、家賃がかからない物件を持っていたり、書店員として勤めた十分な経験があったりする人は有利だ。また、物件も経験もなくとも、本を売ることと、自分の得意とする別のこととを上手に掛け算することができれば、可能性は広がる。

 その可能性をできる限り具体的に、網羅的に示すことも、本書の大きな目的のひとつだ。後半ではそこに多くのページを割く。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P94-96より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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