これからの

出版流通に乗っているものが本か

第2章 本は定義できない (2)

 日本の本の流通は、巨大な流通網としてひとつにつながっている。「仲間卸」といって、卸会社である取次同士でも、本のやりとりを行うからだ。そのため、出版社がどこか一社の取次と契約してそこに商品を納めていれば、その本はいわゆる出版流通に乗ることになる。書店はどこか一社の大手取次と契約すると、出版流通に乗っている本であれば、すべてその一社を通じて仕入れることができる。だから客はどの書店でも本を注文することができて、品質や値段は、どこで買っても変わらない。これも、本という商品の特殊なところだ。

 しかし出版流通に乗っていることと、ISBNなどのコードがついているということは、必ずしもイコールではない。コードは、基準に沿った出版物をつくってお金さえ払えば、誰でも取得して本に付与することができるが、出版流通に乗せるには、取次と契約して商品として納めなければならないからだ。実際にはコードがついていても、出版流通には乗っていない本も存在する。

 とはいえ日本の出版業界においては、出版流通に乗っているものだけが本であると考えられる機会も多い。たとえば多くの統計においてそうだ。『出版指標』を発行している出版科学研究所と、『出版年鑑』を発行している出版ニュース社に問い合わせたところ、やはり取次経由の本を集計しているとのことだ。そんな中、取次の日本出版販売が発行している『出版物販売額の実態』においては、二〇一六年版から「出版物推定販売額」の内訳に、取次を介していない「出版社直販」分を含めるようになった。あくまで推定金額としてではあるが、これは出版流通に乗っていない本の存在感が無視できなくなってきていることのあらわれだといえる。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P61-62より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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