就職して二か月でドロップアウト
第9章 ぼくはこうして本屋になった(3)
出版業界を変えるには、内側に入り込んではいけないとも思った。仮に狭き門を突破して入り込むことができたとしても、一年目の新入社員がそれを内側から変えるなんて、何十年かかるかわからない。そのくらい硬直した業界だということも、奇しくも本が教えてくれていた。
それで、やや外側から出版業界に関わるような会社がないかと探した。見つけたのは大手の国際見本市の主催会社。出版社がブースを出す見本市を開催していて、当時の自分にはそれは、出版業界に風穴を空ける取り組みのように感じられた。ここしかないと心に決めて入ったのだが、結局二〇〇三年四月に入社して、同年六月半ばには退社することになる。理由をことばにするのは難しいが、自分の理想はあまりに大きく、並行して理想に近づくにはあまりに激務だった。そしてなにより、自分が会社に向いていなかった。
学生の頃に活動していた仲間の中には、まだ大学や大学院にいる者もいた。とりあえず、インターネットで古本が売れる、と知っていたのは大きかった。当時二三歳。第二新卒の年齢制限はだいたい二五歳で、それまでまだ二年ある。とにかく三年は諦めず、同じ会社に勤めろという人もいたが、なんの根拠もないように思えた。しばらくアルバイトで食べていきながら、とりあえずできることからはじめてみて、二年間で何のきっかけもつかめなければ、もう一度就職活動しよう。そう決めて、辞めるなら早いほうがよいだろうと結論した。
※『これからの本屋読本』P298-299より転載
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