これからの

コードがついているものが本か

第2章 本は定義できない (1)

 本とは何だろうか。ひとつの手掛かりとして「ISBN」と呼ばれるコードがある。

 ISBNは、13桁からなるコード番号によってあらわされ、書籍出版物の書誌を特定することができます。
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 一度でも付与・発行されたISBNコードは、その本が絶版になった後も永久欠番とすることがISBNのルールです。また、同一の書籍に異なる複数のISBNコードを同時に付与されることもあってはいけません。
 このルールが守られることによって、出版者や流通関係者は固有の書籍情報を共有して読者の需要に迅速、的確に応えることができます。また、図書館においては、書誌情報を正確に管理して利用者に提供することができるのです。
 ISBNは、法律や条約で定められたものではありません。世界の出版界が共有する〝社会標準〟です。発行する書籍に必ず付けなくてはならないという法的な拘束力はありません。しかし、苦労をして発行した本が一人でも多くの読者に伝わるためには、その本に関する情報が世の中で広く共有されることが必要です。ISBNは、書誌情報を検索するためのキーとして重要な役割を果たします。

日本図書コード管理センター「ISBNコードの意義と利便性」
https://isbn.jpo.or.jp/index.php/fix__about/fix__about_2/

 このコードは、本にしかつけることができない。「世界の出版界が共有する〝社会標準〟」であることが目指されているのだから、このコードがついて流通しているものは、多くの人が本だと認めているものである、といってよいはずだ。

 書店の現場、少なくとも大きな書店チェーンなどでは、あらかじめ必要な書誌情報が入った専用のレジが使われている。ISBNを読み込めば、売価が表示されるのはもちろん、在庫データと連動して必要な本を自動で補充注文できるようにしている書店もある。管理上、手間が増えることを避け、ISBNがついている本しか扱いたくないと考える書店も多い。

 また、ISBNがつけられるのはいわゆる書籍だけだ。本の卸売を行う会社を日本では「取次」と呼ぶが、日本では書籍も雑誌も、同じ取次が扱っている。これは世界的に見ると必ずしも標準的ではなく、書籍と雑誌はまったく別のものとして、別々に流通をしている国も多い。そのため、国際標準となるコードも、書籍と雑誌とでは異なる。雑誌には、ISBNではなく「定期刊行物コード(雑誌)」もしくは「ISSN」と呼ばれる別のコードが付与されている。

 取次大手のトーハンが窓口業務を受託している「定期刊行物コード(雑誌)」は、出版流通の円滑化のため一九七八年に制定された「雑誌コード」を元に改定され、二〇〇四年から新たに導入されたものだ。一方、国立国会図書館が管理を行っている「ISSN」は、逐次刊行物につけられる国際的な識別番号として、一九七一年に策定され現在まで運用されている。実際は、どちらかのコードだけがついている雑誌もあれば、両方がついている雑誌もある。また、見た目は雑誌でもあくまで書籍という扱いで、ISBNがつけられているものもある。三つのコード体系が、並行して使われているということだ。

 もちろん、コードがついて流通しているものの大半は、誰もが本である、と認めるような書籍や雑誌だ。しかし中には、CDやDVD、トートバッグやポーチ、パンやクッキーの型や、万年筆やキーホルダー、ダイエットのためのチューブやベルトなどにも、ISBNをはじめとするコードがつけられ、流通しているものがある。それらの多くは、建前としては本の付録ということになっていて、便宜上の本体として薄っぺらい冊子がついていたりする。果たして、これらは本であるといえるだろうか。

 それらは、ほかの本と同じように書誌情報がつけられ、書店に並んでいる。あえていうなら、少なくとも流通上においては、食パン型も本であり、腹やせベルトも本である、ということになる。もちろん異論もあるだろう。けれど、少なくとも現状では黙認されているし、それらを売れ筋の商材として力を入れて販売する書店もあるのだから、本でないと言い切るのは難しい。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P58-61より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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