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本屋×読書会

第6章 本屋と掛け算する(8)

 近年、読書会が多く開催されるようになった。SNS以降、ごく狭い同じ趣味をもった人同士が繫がり、情報を共有し合うことがしやすくなったことが、その盛り上がりの背景にあるといえるだろう。カフェの一角など、どんな場所でも気軽に自発的に行えることも魅力だが、本屋が主催して本屋で行われることも多い。

 読書会の基本の形は、ある特定の本を事前に読んできた人たち同士が、その本について語り合うことだ。そのほか、より参加ハードルの低いものとして、自分が読んで面白かった本を紹介し合う会や、これから読みたいと思っている本について語る会、集まったその場で同時に読む会など、さまざまな形のものが行われている。

 イベントにはゲストが、教室には講師が必要であることに比べ、読書会は本を決めて呼びかけるだけで開催できる。より気軽にはじめられるのが、読書会のよいところだ。

 そのぶん、読書会の時間が実のあるものになるかどうかは、はじめてみるまで未知数だ。もちろん参加者も重要だが、その場を仕切るファシリテーターの役割が大きい。参加者にまんべんなく話をしてもらいながら深い議論に導いていくのは、いきなり誰でもできるようなことではない。最初はだれか慣れた人にお願いするのもよいし、慣れないことを承知で友人知人が中心の小さな会としてはじめ、店主自らが試みるのもよい。

 本ごとに単発で告知して異なるメンバーが集まる形も、固定のメンバーで連続して複数の本を読み続ける形も、どちらもあり得る。前者はイベントに、後者は教室により近いスタイルになるため、それぞれと近いメリットがある。

 ただしどちらの場合も、あまり人数が多いと深い話をするのが難しいことや、著者が来る場合以外は付加価値をつけるのが難しいことなどから、主な収益源とするのはハードルが高い。有料にするとしても、収入源としてはあくまでサブ的なものと考えておき、本屋としての宣伝や、小さなコミュニティをつくったりすることを目的とするのがよいだろう。

 韓国・ソウルには「BOOKTIQUE」という、読書会専門の本屋もある。業態としてはブックカフェに近く、左右の壁二面に本棚があり、入り口から中央にかけて広々とした平台がある。ひとつの平台に、読書会の対象書籍が並ぶ。それ以外のスペースは飲食の席だ。そして奥にガラス張りの部屋があり、そこで毎日のように読書会が行われている。かつては四室に分かれていたが、いまはひとつの読書会当たりの参加者が増えたことや、ギャラリーとしても使えるようにという目的もあって、改装され一室につなげられた。読書会のファシリテーターはスタッフがつとめる。

 読書会は、本を読むことと直接的につながっているため、そこで生まれるコミュニティは、イベントや教室でできるもの以上に、本屋そのものに直結しやすい。読書会の対象にどんな本を選ぶかということは、その本屋のスタンスを示し、ファンを増やすことにもつながっていくはずだ。

※『これからの本屋読本』(NHK出版)P218-P220より転載


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」(東京・下北沢)と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「神保町ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。
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