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研究・調査や スキルアップのために

第7章 本屋を本業に取り込む(5)

 ここまでの事例は社外に向けたものであったが、社内向けの本屋もある。たとえば、資料として急に話題の本や雑誌の最新号、その日の新聞などが必要になったとき、ネット書店に頼むよりも、自社ビル内に書店があればそこで買うのが一番早い。

 また、業務上多くの社員に参照される本であれば、社内に充実したライブラリがあるのがよい。研究職など専門的な仕事であればあるほど、資料は高価であったり手に入りにくかったりする。社員がスキルアップのためのトレーニングを行ったり、新たなアイデアを出すために棚を眺めたりするための場所として運営する。

 ワークショップや勉強会などを通じて、有効活用されるように促していくことも大切だ。社員の知識やスキルが高まっていけば、それは直接的に企業の競争力となる。

CASE 12:IT企業が社内に技術書の書店を経営する

 急成長中のIT企業。人が足りないため、どんどん採用を進めている。社員の多くが技術者であるため、自社ビルの一階に技術書の専門書店を開店した。一般の人でも入れる場所にあり、イベントなども頻繁に行っている。

 必要な時にすぐ最新の技術書が手に入るため、社員にも好評だ。まだスキルが低い若手社員が集まって、自主的な勉強会も開かれるようになった。また近隣のオフィスに勤める技術者や学生の利用も多く、店内に貼り出している求人情報から、応募も来るようになった。

CASE13:技術系の会社が膨大なライブラリを管理する

 自動車メーカーのR&D部門。素材からデザインまで、交通から地球環境まで、そして近年ではAIをはじめとする情報技術まで、さまざまな分野の専門的な知識がストックされている。複数の拠点があり、それまで社内にバラバラに散っていたあらゆる本や資料を、一か所にまとめて分類し、ライブラリとして運営をはじめた。

 社内システムからアクセスすることができ、予約した本は、別の拠点であっても翌日にはデスクに届く。いつ誰が借りたかというデータも参照できるため、読む前にかつて同じ本を読んだ人に話を聞いたり、読んでから意見を交換したりすることも可能になった。

※『これからの本屋読本』P278-281より転載/イラスト:芦野公平


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