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巨額寄付金ランキング、Harvard7兆円!Yale6兆円!揺らぐ学の独立、言論の自由


ハーバード大学年間寄付金$50billion(約7.5兆円)以上、120の国々のGDPより大きい


アメリカには4000の大学があります(List of Universities in USA)。そのうちの多くが経営難で喘いでる中、一握りのトップ校は莫大な寄付金を集め経営は順調でますます人気を集めています。とりわけハーバード大学はダントツ1位です。2023年11月13日付けアメリカCBS News のMoneyWatchでHow rich is Harvard?Its economy is bigger than 120 nations. (ハーバードどれだけリッチ?その経済規模は120の国々より大きい)によると、2023年会計年度に集まった寄付金(endowment)だけで$50.7billion (約7兆3000億円/$1=145円)というから驚きです。(尚、最新データは15 National Universities with the Biggest Endowments (US NEWS)にあります。)これはチュニジア、バーレーン、アイスランドを含む120カ国のGDPを上回ります。

ちなみに、ハーバード大学の2023年予算総額は約$73billion(約10兆5000億円)、その半分近くを寄付金が占めていることになります。ニューヨーク市2023年予算総額$107billion (約15兆5000億円)の約半分、ロサンゼルス市2023年予算総額$13.15billion (約1兆9500億円)の約4倍、東京都2023年度総予算の約$58.2 billion(8兆4433億円)とほぼ同額です。東京大学2021年予算総額約$2.6 billion(2798億円 $1 =106円rate)の約25倍、そして、日本大学2023年予算総額約$1.9billion(約2723億円)と慶應義塾大学2023年予算総額約$1.91billion($2745億円)の約30倍もの寄付金を集めていることになります。

その原資は、個人、企業、団体からの寄付で、それを投資基金(fund)として運用して多額の収入を得ているようです。Harvard Businesss School が運用に関わっているものと思われ、世界トップのビジネス・スクールは実も兼ねています。

120の国々のGDPを上回るのはハーバード大学以外にも


もちろんハーバードだけではありません。他のIvy校やIvy-plus校(Ivy校同等の名門校)の寄付金も発展途上国や低開発国120の国々のGDPを上回ります。2021年のthe National Center for Education Statisticsによる統計でトップ20位校の実額は以下の通りです。

USA大学寄付金総学 $927,174,812,000(約134兆円)
1位
Harvard University 私立 $53,165,753,000(約7.3兆円)
2位 Yale University  私立  $42,282,852,000 (約6兆円)                              
3位 The University of Texas System 州立  $40,414,914,000(5.8兆円)
4位 Stanford University 私立  $37,788,187,000 (約5.4兆円)
5位 Princeton University  私立   $37,026,442,000 (約5.3兆円)
6位 Massachusetts Institute of Technology 私立 $27,394,039,000
(約3.9兆円)
7位 University of Notre Dame 私立   $21,838,535,000 (約3兆円)                      8位 University of Pennsylvania  私立  $20,523,546,000 (約2.9兆円)
9位 Texas A & M University–College Station  州立 $16,895,504,000
(約2.4兆)
10位 University of Michigan–Ann Arbor 州立 $16,795,776,000
(約2.4兆円)
11位 University of California–System 州立  $16,463,910,000
(約2.3兆円)
12位 Columbia University 私立  $14,349,970,000 (約2兆円)
13位 Washington University (St. Louis) 私立  $13,668,081,000
(約1.8兆円)
14位 Duke University 私立  $12,692,472,000(約1.7兆円)
15位 Emory University  私立  $12,218,693(約1.7兆円)
16位 Northwestern University 私立   $11,361,182,000(約1.6兆円)
17位 Vanderbilt University 私立  $10,928,512,000(約1.6兆円)
18位 University of Virginia  州立  $10,366,578,000(約1.4兆円)
19位 University of Chicago 私立  $9,594,956,000(約1.3兆円)
20位 Cornell University  私立  $9,474,388,000(約1.3兆円)

2021年時点で20位コーネル大学の寄付金総額は約$9.4billion(約1.3兆円)東京大学予算総額$2.6billion(約3770億円)の3倍もあるわけです。東京大学の予算総額です、寄付金ではありません。東京大学2021年寄付金総額 (東京大学基金)は40億円、慶應義塾大学には三田会という強力な組織があり私学トップの寄付金を集めていますが、235億円です。

それにしてもアメリカ全大学寄付金総額が約$927billion(約143兆円)とは驚きです。2024年日本の国家予算総額114兆円より多いのですから。公的交付金・補助金ではありません。大部分は個人、団体、企業からの寄付金です。日本の大学とアメリカの大学は予算規模からして何桁も違い、まるで月とスッポン比較しようがありません。

リッチ校はUS News & World Report社Best Collegesで上位常連校


これらリッチ校の殆どが、US News & World Report社の Best Collegesでトップ20校にランキングされる常連校です。

尚、このランキングは、アメリカの全大学を次の4つに分類してランク付けしています。

1. National Universities (幅広い領域で学士号、修士号、博士号プログラム設置した私立大学及び州立大学)
2.National Liberal Arts Colleges(人文科学系の単科大学)
3. Regional Universities (幅広い領域の学士号と修士号プログラム設置した私立大学及び公立大学)
4. Regional Colleges(主として2年制のCommunity colleges)

当然National Universities Rankingsに注目が集まります。もちろん、2. National Liberal Arts Collegesにも根強い人気を持つ伝統的small town collegesがあります。National University Rankings上位50校は超難関校とされ、とりわけ上位20校は超超難関校です。以下News Best National University Rankings2024年の上位20校です。

1位 Princeton University 私立 Ivy
2位 Massachusetts Institute of Technology 私立
3位 Harvard University 私立 Ivy
3位 Stanford University 私立
5位 Yale University 私立 Ivy
6位  University of Pennsylvania 私立 Ivy
6位 California Institute of Technology 私立
7位 Duke University 私立
8位 Brown University 私立 Ivy
9位 Johns Hopkins University 私立
9位 Northwestern University 私立
12位 Columbia University 私立 Ivy
12位 University of Chicago 私立
12位 Cornell University, 私立 Ivy
15位 University of California, Berkeley 州立
15位 University of California, Los Angeles 州立
17位 Rice University 私立
18位 Dartmouth College 私立 Ivy
18位 Vanderbilt 私立
19位 University of Notre Dame 私立
20位 University of Michigan, Ann Arbor 州立

寄付金総額と大学ランキングは正比例であることが一目瞭然です。これらの大学はGlobal University Rankingsでも上位にランクされています。

トップ校は授業料・諸費用が高いが全額奨学金を出すので人気も難易度もうなぎのぼり


これらIvy校の授業料・諸費用(tuition and fees)は平均$80,000(11,600,000円以上します。年収$150,000 (約22,000,000円)中間所得層の子女でさえ尻込みする額です。そこでハーバードでは潤沢な寄付金のうちの2.9%(目標8%)$850million(1,232億円)を年収$150,000以下の家庭の子女対象全額奨学金に割り当てています。他のIvy校やIvy-plus校 も同様な対策をとっています。これが人気を呼び、これらの大学では応募者数が増え、難易度が上がり、名声も高まり経営が安定するという好循環を享受しています。

それに対し、寄付金が少ない大学は悲劇です。授業料はIvy校ほどではないとしても平均すると、私立約$42,162 (約6,200,000円)、公立州外生$23,630 ( 約3,420,000円)州内生$10,662(約1,549,000円)です。寄付金を得られず全額自己負担です。4000校の大部分がこのケースに当てはまり、結果、全米約2000万人にのぼる大学生(うち公立大生73%、私大生27%)が学生ローンを抱えることになります。Student Loan Statsisticsによると、学生ローンの総額は$1.77trillion (約250兆円)、卒業時に1人当たり平均$29,100 (4,200,000円)、私大生$33,000(約478万円)、公立大生$27,400(約397万円)ということです。そんな借金を抱えてまで大学に?と考え直すことになり、奨学金が少ない大学は志願者は激減し、定員割れを起こし、経営難にという負のスパイラルに陥ります。

Ivy校とIvy-plus校には多くの志願者が殺到しますが、年間$80,000以上、4年間$320,000(46,4000,000円)以上の授業料・諸費用が掛かかります。中間所得層や低所得層の子女は奨学金がもらえることを条件に応募するでしょう。公的ローン、それがダメなら民間ローンになりますが、借りられるかどうか分かりません。奨学金がもらえなければ断念せざるを得ません。ハーバードでさえ奨学金の総額$850 millionですから130名程度しか全額奨学金を受けられません。結果、奨学金をあてにする必要がない一握りの富裕層の子女が埋めることになり彼らに有利になります。この事態を受けCBS Newsリポート"Ivy favors rich kids for admission while middle-class face obstacles, study funds"が痛烈に批判しています。

ハーバードの学費は、冒頭のCBSの記事が指摘するよう1975年に $5,350で、それ以後の50年間の消費者物価指数(the Consumer Price Index)を反映するとしたら、$30,000(4,350,000円)が妥当で、$80,000 (12,000,000円)はインフレーション率を遥かに超えると批判されています。多額の寄付金の一部を回して低所得層、中間所得層合格者対象の奨学金で救済しておけば、是が非でも子女を入学させたいと願う$1million所得層3000万人(2020統計)が控えているわけです。そうした安易な考えが学費高騰の要因になっていなければと願うのみです。 

学の独立をおびやかす寄付金―Israel-Hamas問題で岐路に


これら著名大学の寄付で目立つのは巨額寄贈者megadonors存在です。日本では想像もつかない高額寄付です。Here are 15 donations ever to US colleges and universities.(Forbes)に歴代最高額寄贈者15例が挙げられています。冒頭のCBS のMoneyWatchの記事は、巨額寄贈者は多かれ少なかれ大学の政策やカリキュラムに影響を与えていると述べています。

現在、イスラエルとハマスの衝突に伴い、これらIvy校をはじめ各地の大学では、人質解放とハマス撲滅を掲げGaza侵攻を企てるイスラエル政府を支持するグループとそれを非難するグループが激しい抗議活動を繰り広げています。Harvard and UPenn donors are furious. It may have a financial domino effect (CNN10/23/2013)が報告しているように、ハーバード大学、ペンシルバニア大学その他の大学で、イスラエル・ユダヤ支援を掲げる巨額寄贈者が、大学経営側の、ハマス襲撃と学生・教職員による反イスラエル抗議活動に対する反応が生ぬるいとして寄付を打ち切ると迫っています。

ハーバード大学では億万長者 Leslie Wexner とAbigail Wexner氏のThe Wexner Foundationがハマスのイスラエル襲撃に対する大学の姿勢を批判して寄付を打ち切っています。ペンシルバニア大学では、ハマスによる襲撃に対し大学側が抗議せず沈黙を保ったとして、Jon Huntsman元大使が寄付を打ち切ると宣言し、Wall Street CEO Marc Rowan氏は大学経営陣の辞職と他の寄贈者も寄付を打ち切るよう呼びかけました。特筆すべきは、Ronald Lauder氏が大学が反ユダヤ主義(antisemitism)に対し更なる努力をしなければ寄付を打ち切ると断言したことです。氏は長年財政支援の中核を担ってきた中心的存在であるからです。

それに呼応してか、冒頭のCBSの MoneyWatchの記事によると、 Wharton Business School卒業生でヘッジファンド・マネジャーRoss Stevens氏も、学長Liz Magill氏の反ユダヤ主義に関する議会証言を不服とし、$100 million donationを打ち切ると通達しました。同時期に“The Palestine Writes Literature”と称するパレスチナに関する催しが行われており賛否両論入り乱れそれに対する学長の見解が揺れました。結局、Magill氏は辞職 stepped down せざるを得なくなりました。

ハーバード大学でも学長Claudine Gay氏が辞職を迫られましたが、こちらの方は、大学最高決議機関と教授陣多数の援護があり辞職は避けられたとのことです。アメリカの大学は学生が自立、独立できるよう、そのスキルの習得に力を入れています。ハーバードの“Becoming independent: skills you’ll need to survive the first year at college.” (Harvard Summer School)と称するサイトがそれを物語っています。当の大学が渦中の問題でこのように揺れていては説得力に欠けてしまいます。ハーバード大学の対応はそうしたことを踏まえてのギリギリの決断であったものと思えます。

1971年採択されたアメリカ合衆国憲法修正第一条(First Amendment)は、宗教の自由な行使を妨げる法律の制定の禁止、表現の自由報道の自由、平和的に集会する権利請願権を妨げる法律の制定を禁止しています。渦中の一連の行動は第一条に抵触します。 ハーバード大学、イエール大学、コロンビア大学はveritus(truth/真理)とlux(light/光)を、スタンフォード大はfreedom(自由)を、独立宣言と憲法宣言が行われたフィラデルフィアにあるペンシルバニア大はLeges sine moribus vanae(Laws without morals are useless/モラルに基づく法)をモットーに掲げ、約400年、300年、200年もの伝統があります。当然、合衆国憲法修正第一条に基づく真理であり、光であり、モラル、自由を追求する最高学府としての伝統を守り続けなければなりません。それがアメリカのこれらの大学に求められる学の独立につながります。

教育が民主主義(democracy)の根幹であり、その集大成としての最高学府である大学が、先頭に立って言論の自由、平等、よって多様性を死守しなければその存在意義は薄れます。大学教育は貧富分け隔てなく多くの人に開かれるべきです。しかし、昨今の学費高騰は高額所得者に有利であるがため民主主義にブレーキがかかり、寡頭制(oligarchy)、 金権主義(timocracy)、そして、独裁政治(autocracy) に堕落する一歩にならないかと危惧する声がネット上に見受けられます。大学への寄付は、本来ならluxとveritusの促進に向けられるべきですが、寄贈者の思惑(causes)が反映され手っ取り早く言えば条件付き"with a string attched"というのが現実でしょう。多額の寄付金を集めれば集めるほどどうもがいても動きがとれないCatch-22的ディレンマに陥る可能性も高くなるわけです。それが現在起きています。








































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