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2023年日本経済のリスクシナリオ

金融引き締めと増税でデフレスパイラルか

2023年の日本経済は厳しい見通し

 残念なことだが、2023年の日本経済について、現時点における見通しは、非常に厳しいシナリオを描かざるを得ない。これまでは、海外要因がリスクだったが、それに加えて、国内要因もかなりマイナス方向に働く可能性が高まっている。
 本来であれば、コロナ禍からの回復過程にあるはずだったが、回復を遂げる前に、成長阻害要因が見えてしまったというのが現状であろう。12月20日に発表された、長期金利に関する実質上の利上げによって、今後の日本経済の回復ペースは、低下してしまったと評価される。
 最悪の場合、いわゆるデフレスパイラルが再現され、それが長期化してしまうことすら懸念される状況である。

経済成長率低下は避けられない見通し

経済成長率低下は避けられない見通し

 現時点で、新たな状況を織り込んだ経済成長率予想などは、公になっているものとしては、存在しないが、私個人の見方を明らかにしておく。
 まず、ベースとなる予想としては、日本経済新聞社のNEEDSというシステムで計算された結果が報道されているので、これを使って説明したい。日経NEEDSによれば、2023年の日本の実質GDP成長率は、0.8%になるという。この予想を作成した時点では、日銀の政策修正は織り込まれていなかったため、新たな状況を受けて、それを織り込むと、どの程度の下振れがあるのかを見極める必要がある。
 細かい予想の前提が明らかではないので、確定的なピンポイントの予想はできないが、少なくとも外需の面がマイナスになるだろうと見込まれるのに加えて、内需についても、設備投資や個人消費は、下振れすることになるであろう。
 これらを勘案すると、2023年の実質GDP成長率は、マイナス圏に沈む可能性が高いと見られる。私の個人的かつ大雑把な予想に過ぎないが、おそらく日経NEEDSの予想よりは、1%以上下回る、つまりはマイナス成長に陥るものと考えている。
 マイナス成長であれば、政府の言っているような、コロナからの緩やかな回復というシナリオは、完全に崩れることになる。主要国の中でも、落ち込みが激しい部類に入るのではないだろうか。確かにEU諸国は落ち込みが予想されているし、中国についても、公式統計はさておき、実勢ベースで言えば、かなり大幅な経済の低迷が見込まれている。また、アメリカ経済についても、依然として不況に転落するリスクが指摘されている。
 しかし、日本の場合は、そもそもコロナ禍からの回復も果たせないまま、再度、不況に沈むことになるわけで、その深刻度は、相対的に高いと考えられよう。

世界的に2023年の経済見通しは厳しい

 2023年については、世界的に経済が停滞するものと見られている。まず、はっきりしているのは、中国の経済活動が混乱に陥っていて、2023年についても、明確な回復シナリオが描けない状況であることだ。
 中国は、長らくゼロコロナ政策を堅持してきたが、民衆の抗議活動なども影響して、習近平政権としては異例のことだが、方針転換を行った。しかし、余りにも急な規制緩和措置であったため、現場は大混乱に陥っている。
 北京などの大都市部においては、コロナ感染者が急増し、医療体制の貧弱さもあって、ほとんど治療らしい治療を受けられないまま放置されている患者が急増している模様である。重症化した患者の中には、生命の危機を迎えるものも少なくないようで、実際、大都市における葬儀場は、順番待ちが生じるほどの状態になっているとされる。
 おそらく、2023年の前半までは、感染者増に伴う社会的混乱が広がっていくことになり、経済活動は、さらに停滞するものと見られる。生産停止に陥る工場や、物流拠点の機能停止なども伝えられており、その影響は広範に及んでいる。
 日本企業も含めて、中国依存度が高い企業の中には、サプライチェーンを組みなおす動きも出ており、中国の長期的な成長性についても疑問が生じつつある。
 ヨーロッパの状況も好転しているとは言い難い。ロシアによるウクライナ侵攻の影響は、いまだに甚大であり、EU諸国のエネルギー資源の調達に関して、不安が残っている。国によって程度の差こそあれ、全体的に経済活動を阻害する要因になっていることは間違いない。結論としては、2023年もEU諸国の経済活動は、停滞を余儀なくされると考えている。2023年に、エネルギー事情が劇的に改善する見込みはないからである。
 アメリカについては、FRBの金融政策次第の面もあるが、依然として、深刻な不況のリスクが払しょくされていない。私自身は、アメリカ経済がソフトランディングできるのではないかと期待しているが、確実にそうだとは言い切れないとも考えている。2023年の夏場頃までに景気後退のシグナルが出た場合、FRBには速やかな政策転換が求められるが、その対応如何によっては、下振れリスクは残っている。
 こうして主要地域・国家の経済見通しを検討してみると、いわゆる牽引車となるだけの確実に強い経済状況になると見込まれるところが見当たらない。日本経済について、外需に期待することは適切ではないだろう。もともと、日本経済の貿易依存度は低いが、それ以外の直接投資の成果についても、2023年は、あまり大きな期待はしない方が賢明であろう。

まとめ

 12月20日の日銀の政策決定会合における金融緩和の修正は、おそらく2023年を通じて金融政策が引き締め方向に動くことを示唆するものだったと解釈される。引き締め方向に金融政策が変更されるとすれば、日本経済は、コロナ禍からの本格的回復を見ることなく、景気が落ち込む過程に入る可能性が高まっている。
 日本経済については、財政政策面からも抑制的な要因が指摘される。岸田政権は、増税意欲が当初から見え隠れしており、現在でも防衛費増額に伴う増税や、金融所得課税の強化などが視野に入っている。この状況で、増税を検討するというのは、余りにもタイミングが悪いと言えるが、その姿勢は強硬にも見えるため、2023年並びにそれ以降の日本経済にとってリスク要因として認識される。
 2023年は、日本経済にとって、厳しい年となることが予想される。そうした厳しい経済環境への備えを念頭において、行動することが求められよう。

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