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高まるアメリカの反中意識~Newsweekを読んで感じたアメリカの変化~

AMERICA IS IN A NEW COLD WAR AND THIS TIME COMMUNISTS MIGHT WIN

 私が愛読しているNewsweekでこのような題目のコラムを目にしたときは少しドキッとした。あまりニューズウィークらしくないなと思うと同時に、いかにもアメリカ人が好みそうなタイトルだなあと納得もした。
 記事の内容も明らかにアメリカ国民を意識しており、彼らの愛国心と中国に対する危機感を煽る内容だ。コロナウイルスが蔓延してからは、中国に対するアメリカの態度は明瞭に厳しくなり、中国批判の論調が大衆やマスコミの大半を占めている。元々アメリカは中国に対して疑いの目を向けていたが、中国の経済発展に対しては友好的な態度を示す識者も存在した。そういった態度もコロナ以降はほとんど無くなり、事実上反中の一辺倒になりつつある。アメリカのメディアの中では比較的左寄りのニューズウィークでも、今の中国に対して甘い態度を示す風潮は皆無だ。
 今のアメリカ人は日本人よりも中国が嫌いかもしれない。


 "The era of hope that China might evolve into a normal country is over. No one with any brains denies that."

 これは文中にて、ジョー・バイデンの政策専門家が発した言葉だ。
この論調が私の見る限り、現在のアメリカにおける中国観の基本になっている。中国を民主化「させたり」、中国が自らの手で共産主義を終わらせて罪なきウイグル人達を「再教育」することもやめるだろう、というアメリカにとって楽観的な見方はなくなった。習近平以降の中国は民主主義からは遠ざかり、独裁国家としての道を他国にアピールするかのように堂々と突き進んでいる。この考えは当雑誌の別記事でも取り上げられている。

I've Changed My Mind About China. America Should Too. 
https://www.newsweek.com/ive-changed-my-mind-about-china-america-should-too-opinion-1504210

 中国に対して淡い勝手な期待をしていた筆者の大きな失望と、侮蔑の念が感じられる内容だった。


 米中関係の要とも言える貿易に関しては、中国製品の輸入を制限・禁止するという案と他国と協力しながら中国製品を使わずとも済むように、より経済を多角化していくという案に分かれている。前者は孤立主義のトランプ大統領が好み、後者はグローバリズムのバイデン候補が好む政策だ。
 いずれにせよ自国を守るためだけでなく、中国を潰すことに力を注ぐという面では共通している。
 こうした情勢の中、日本の立ち位置は重要だ。
 記事でも日本の政策の一部が模範となるべきものとして紹介されている。
How he would actually do that is unclear, but aides are looking at the example of Japan. The Japanese legislature recently approved a program in which the government will offer subsidies—up to $2.25 billion worth—to any company that brings its supply chain back home.

 
この産業の国内回帰政策は、特別に中国を意識したものではないが、工場の自国回帰を願うアメリカ人にとっては理想的なものなのだろう。このように日本の施策決定が世界に与える影響について我々はもっと敏感にならなければいけない。


 これから日本はどのように立ち振る舞うべきだろうか。
記事を読んで、日本もアメリカのように中国に対して毅然とした厳しい対応をするべきだと思う人も多いだろう。しかし、私はそうは思わない。
 日本とアメリカの状況は異なる。アメリカと共に対中政策に本腰を入れたところで、アメリカのメリットにはなるかもしれないが、日本のメリットになるとは限らない。中国とはこれからも長く付き合っていかなくてはならないのだ。だからといって、中国と「共に」歩むにしては両国の政治的価値観は違いすぎる。
 今こそ日本は米中のバランサーとしての役割を買って出るべきだ。
調停者としての役割が今後の日本にとって有効なものだと私は考えている。


https://www.newsweek.com/2020/06/05/america-new-cold-war-this-time-communists-might-win-1504447.html
結構長い記事なので、時間があるときにどうぞ

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