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第二次世界大戦の証言と出会うワークショップ

2023年が終わりに近づいてきましたね。Kokoro代表・石岡史子(ふみこ)です。今年は計68回の「問いづくり」を実施しました。最後の12月20日のワークショップは年齢も居場所も異なるも皆さんとじっくり対面で対話ができて、今でもじんわりと余韻が残っています。

感想をたくさん寄せていただいたので、一部抜粋を掲載します。初めて「問いづくり」を体験する時は、何のためにコレやるのかな?と「問いづくり」に対しての「問い」がたくさん浮かんできますが、ふりかえってみると、皆さんの感想の中にいつも答えを見つけることができます。

12/20は、第二次世界大戦の、とある兵士のことを「問いの焦点」に用いて、こんなプログラムを実施しました。

  1. アイスブレイク←グループ内で自己紹介を入れるはずだったのですがうっかり忘れてしまいました(^▽^;)

  2. 問いづくり とある兵士の体験についての一言を「問いの焦点」に用いました

  3. 朗読 問いの答えを探しながら、兵士の証言を皆で朗読しました

  4. 哲学対話 皆で話し合ってみたいことを一人ずつ問いにして出し合い、その理由を共有して、最後に一つの問いを選び、対話しました

問いづくりをふりかえって

とても良かった。答えを探すのではなく問いを立てるという作業自体と向き合う機会は普段全くないので、新鮮だった。同じ文章を読んでもみんなそれぞれ違うところに注目して問いをつくっていたのが興味深かった。また、問いを共有することで新しい視点を得ることができたり、その人が重視していることが分かったりしてとても楽しかった。(20代)

参加者アンケートより

今まで、何かしなければならないという気持ちはあっても行動の仕方がわからなかったので、今回「問いづくり」という具体的な手法を知ることができてためになった。このようなアプローチを身の回りでも実践していきたい。(20代)

参加者アンケートより

開いた問い~閉じた問いの変換は頭の体操になります。(60代)

参加者アンケートより

問い作りが難しいと感じてしまうことに、自分の固定観念の強さを感じました。(50代)

参加者アンケートより

問い作りのアプローチの個々のステップの意味するところ、問いを変換するところとか、を少し知りたかった。(60代)

参加者アンケートより

「問いの変換」は私もつまづいた時のことを覚えています。この作業にはどんな意味があるのだろうと初めは思ったのですが、このメソッドを開発した「ライト・クエスチョン研究所」の日本担当の方によると「視点をずらして考えてみる」ということだそうです。

例えば、「その兵士はどんな気持ちだったのだろう?」という「開いた問い」をAさんが作ります。Bさんが「閉じた問い」に変換してみます。「その兵士は命令だから仕方ないという思いだったのだろうか?」Cさんは「その兵士は後に後悔しただろうか?」と変換します。問いには、それぞれの視点や先入観や考え方が反映されていて、共同作業を通して様々な気づきが与えられます。

一つの問いを作ったときに、それで終わりではなく、そこから「こんな風に問い方を変えてみたらどうかな」「その問いを聞いて、こんな問いも新しく思いついた」など、マインドマップや曼陀羅のように、問いから問いを生み出して、考えを膨らませていくイメージと私は理解しています。

問いをつくる、分類する、変換する、選ぶという四つの行程は、下記の図が示すように、発散思考、収束思考、メタ認知思考の三つの思考力を育むためにデザインされています。

非常に面白かったし、勉強になった

参加者アンケートより

問いづくりという一連の活動の中で、問いに対する暫定的な答えを出し、そしてまた自分の中で新たな問いを作るという作業の往還がなされたと思いました。その中で戦争という状況に対し主体的に関わろうとする見方が作られたと感じました。このWSの後、私自身も別テーマではありますが、教育実践の中で問いづくりを行なってみました。学生たちが積極的に問いを作り、話し合う姿が見られ、問いづくりの手法を今後さらに学んでみたいと思いました。(50代)

参加者アンケートより

問いを自分で作ることによって、気づきが広がっていく感覚を実感することができました。(20代)

参加者アンケートより

全体の感想より

終始雰囲気がとても良かった。ワークショップの最後に全体で一つの問いを中心に対話をする場面では、みんなが思い思いに意見を述べていて、お互いの存在を一人の人間として認め合う空間ができていたと感じた。私自身も、評価されるかな、変に思われないかな、という不安を感じることなく安心して自分の意見を他の参加者と共有することができた。自分の考えを自由に表現できるこのような場がもっと増えてほしいと感じた。〇〇さんの証言はかなり生々しくて読みながらドキドキした。しかし、今の日本では話しづらいこのようなテーマも、問いづくりのプロセスを丁寧に追って自由に意見を表明できる安心感をその場につくることで、一人一人が向き合えたり対話の材料になり得たりするのだと感じた。

参加者アンケートより

ありきたりな表現になってしまうが、とても有意義で濃い時間だった。普段、ディベートや論議の時間はあったとしても、対話の時間は持てない事が多いように感じるので、このような場がもっと広がって欲しいと感じた。

参加者アンケートより

時間の経過を忘れるほど集中できたのは、人数と時間配分がちょうどよかったのと、ファシリテーションによる場づくりが素晴らしかったのだと思います。

参加者アンケートより

普段、自分だけでは思い浮かばない、発想にない他の方のアイディアが聞けて本当にハッとしたり、なるほどと感じたり。自分自身に無意識の固定概念があるな、等々。考えさせられました。総じて、楽しかったです。また参加したいです。

参加者アンケートより

最初に投げかけてくださった「私にできることはあるのか」という問いから「私はどんな世界を生きたいのか」という問いへの変換にビビッときました。私が関わっている日本語教師研究界隈においても、「どのような社会をめざして日本語教育活動を行うのか」を日本語教師として活動する人に問いかけていかなければならないと議論している最中です。日本語教師の皆さんが「めざす社会」を言語化する取り組みを現在行なっているのですが、こうした問いづくりを通して、参加者の当事者意識が芽生え、問題に対する主体性が涵養されると感じています。今回のWSが、自分の活動と通じるものがあることを実感しました。

参加者アンケートより

戦争の証言を朗読したのは初めてでしたが、話を聴いたり読んだりする時とは違い、まさしく「証言に出会う」という体験でした。普段なかなか戦争や平和について人と対話する機会はありませんでしたが、人が集って話すことの大切さを改めて実感しました。日本中、世界中、こうして人が集い、戦争や平和について対話する空間が日常に当たり前ようにある状態を目指して、私自身もこういう機会作りを行っていきたいと思います。

参加者アンケートより

参考資料

アメリカの市民運動から生まれた「問いづくり」という手法については、いろんな資料や教材がありますので、ぜひ下記を参考にご覧ください。

こちらは「問いづくり」を開発した「ライト・クエスチョン研究所」のHPです。登録(無料)すると様々な教材(英語)にアクセスできます。

日本語で「問いづくり」について学びたい方はこちらの本が出版されています。

ハーバード教育大学院ではオンラインで「問いづくり」について学べるコースが開講されています。

日本では、NPO法人ハテナソン共創ラボで、問いづくりファシリテーターの養成講座などが開かれています。

来年も「問いづくり」を取り入れたワークショップを開催しますので、ぜひ皆さん、ご参加ください。

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