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2019/08/19 出発の日

異国に来れば、まず匂いで自分が異邦人であることを自覚する。

私は今、それを痛感している。



独特の肉の脂とソースやスパイスが絡み合った、くどいとも言える臭い。
一瞬にして自分もそのタレを絡められたかのような臭いに染まってしまった。洗濯してもしばらくへばりついてるんではなかろうか。


異国に来れば、まず匂いで自分が異邦人であることを自覚する。

ただし、いま私の足裏に地面はくっついておらず、無機質な化繊の床になんとなくぶら下がった足がつかず離れずだ。

しかも、ここは目指しているイタリアではなく中国だ。


つまり、中国人が多く乗り合わせる中国東方航空の飛行機の中で空に浮いているということだ。


今までの私であれば、ヨーロッパに行くなら関空からその気分に完璧に浸りたいのでヨーロッパ系の航空会社を有無を言わさず選択していた。

思えば、それはどうでもいいこだわりであった。

中国系と言うと、中国の人には悪いけど
なんとなく不安になるところであったが、それもどうでもいいこだわりであることに気付き、中国東方航空を選んだ。何より断然安いのに、他の航空会社と同じ目的地に同じ規模の飛行機で行けるなんて、からくりが気になるが、凄い有難いことじゃないか。

日本を出るなら、とことんだ。


関空から小型機に乗り、上海の浦東(プードン)国際空港で乗り継ぎ、ローマへ向かう。

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浦東国際空港は大きな空港で、セキュリティチェックが厳しく、鍵に付けていた緊急時用のシルバーの細長いホイッスルを危険物じゃないかと随分訝しがられた。

小腹が空いたのでゲートからゲートへの移動中にダンキンドーナツでテイクアウトをした。意外と店員さんが英語が全然話せず、四苦八苦しながら困った笑顔をしていて可愛く、どこか親近感を覚えた。今回の旅の最初の買い物がそれだった。

そしてまだ余裕があるだろうとトイレに行くと、思いのほか並んでいて戻ってきた頃にはボーディングタイムの締め切りギリギリのタイミングであり、ゆっくり楽しもうと思っていたドーナツとコーヒーを急速に平らげた。
いま思えば、これがこの旅の始まりとして相応しいものであった。


そしてやっと自席に落ち着き、ゆったり休もうと思っていたらおもむろに横の中国人ファミリーが大きなパックを取り出し、席から席へとそれとビニール手袋を回し、各自ビニール手袋を当たり前のように装着して骨つき鶏肉を食み始めたのだ。


なんだか日本人からしたら大胆なその光景に、「おおこれが中国人ファミリーの旅スタイルか」と感動するの束の間、きっと食べたらめちゃくちゃ美味しいんだろうけど、匂いだけでも胸焼けしそうなその空気にすっかり中国に足を踏み入れた気分になったのだ。

これはこれで面白いでないか。


イタリアまであと14時間、旅は始まったばかり。

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