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Vol.2② 駒場のキャンパスライフ 〜東大1年生スタート!〜

Vol.2① 駒場のキャンパスライフ 〜東大1年生スタート!〜

日本一受けたい授業たち


東大の学期は、一年二学期制なんですか?

そうですね。一年は夏学期と冬学期の二学期で、夏と冬に学期末試験があります。
※現在はそれぞれ「Sセメスター」「Aセメスター」という名称に変わっています。

ではまずは1年生の夏学期ですね。実際に、履修する科目はどのように決めたのでしょうか?

特に1年生のときは、語学などの必修科目が多くて、それらの単位を取らないと進級できなかったりするので、必修を早めに取り切れるように優先して時間割を組みました。

でも、それ以外のコマはある程度は自由にカリキュラムを組めるんです。
選べる範囲はありますけど、空きコマに何を入れるか、自分で選択できるんですね。

膨大な数の科目が開講されているので、新学期が始まった4月は、シラバス(科目の概要が書いてある冊子)をいつも持ち歩いて首っ引きで、興味の赴くままにあの授業この授業とあちこち顔を出して。
結局、空きコマがほぼなくなるくらい入れられるだけ入れました。

これが1年夏学期の時間割ですね!
すごい! 本当にぎっしりじゃないですか?!

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▲ 時間割 教養学部一年夏学期

科目についてのわりと詳しい話を読みたい方はコチラ

この時間割は「履修登録した科目」ということなので、もちろん実際は毎回全部に出てたわけじゃないですよ。
でも仕事関連がない時間帯はほぼ全部行ってたと思います。
物理的に移動可能なときは。

興味ある科目はつい、ほいほい入れてしまって、なるべく出席しようとしてましたけど、結局「基礎統計」だけは難しくて手も回らなくなって、途中で撤退してしまいました。

どれも面白そうですね。
そしていろいろなジャンルの授業があるんですね。

この英語とかスペイン語の「一列」「二列」って何ですか?

取り扱う内容によって、一列は教養英語、二列はアカデミック・ディスカッションとかライティングとかに分かれてるんです。
先生も違う先生が担当されます。
なんで「列」なのか私にも分からないです(笑)。

「スペイン語演習」は会話の授業で、ネイティブスピーカーの先生でした。

語学の授業だけで週6コマですか!
そして必修科目にもう「法」や「政治」があるんですね?

そうですね。
文一の学生は1年生から法と政治が必修になります。
最初なので、具対的な法や政治を扱うのではなくて、内容は導入的だったり基礎理論的なものです。

どちらも自分では初めて触れる世界だったのでとても新鮮でした。

「情報」というのは?

コンピュータルームでの実習なんですけど、情報社会における基礎素養を身につける、みたいな目的のものです。

授業では、いわゆるネットリテラシーとかセキュリティ論とかを学んで、ときどき簡単なプログラムを書いてみたりしました。

私はプログラム音痴なので、プログラムの演習のときには同クラの強そうな人の横に座って手取り足取り教えてもらってました(笑)。

この「ラテンアメリカ 異文化と出会う」という授業はラテンアメリカ文学がお好きということで取られたんですね?

そうですそうです。
この授業はオムニバス形式で、文学だけでなくて、現地のいろいろな史料や写真を見ながら、ラテンアメリカ諸国の文化や歴史や芸術といった、毎回違った面を見ていくんです。

学期末は自由な主題でレポートを出すんですが、私は「チェ・ゲバラと広島」について書きました。

えっ、それは面白そうですね!
どういう切り口なんですか?

ゲバラは被爆地だった広島を訪問したことがあるんですよ。
原爆慰霊碑に献花をしてくれて。

当時、広島から奥さんに宛てて出したハガキも残ってるんです。

うわー! それはぜひ読んでみたいですねー!

そしてそして、「ジェンダー論」とか「比較文化論」とかも面白そうですね!

いやあ、勉強になりました。
「比較文化論」は、日本と外国における教科書を比較するんです。
日本での英語の教科書を明治時代から戦前戦後まで見ていったんですけど、とても面白かったです。

外国の教科書だって普通見る機会がないですよね?
同じくらいの学年でも国によって教える内容が違うし、その時代その時代での国の状況によっても書かれていることが変わってくるし。

この授業で「比較文化」という学問のジャンルに初めて触れて、興味をもちました。
それで、後で法学部に行ったときも、「比較法原論」という講義を履修したりしました。

「ジェンダー論」にもご興味をおもちなんですね?

最近、勉強したいジャンルだったので履修しました。
大教室での授業ですけど、それでも立ち見が出るくらいの、駒場の大人気講義なんです。
東大の学部生の男女比は8:2くらいですけど、「ジェンダー論」の教室では半々くらいになっている印象です。

私たちの人生や生活の中で、当たり前だと思っていることは当たり前ではないのだということを問いかけてくださる、とても説得的で刺激的な講義でした。
社会学にも心理学にも通じるものがあって興味が高まりました。

いつかまた勉強の機会をもちたいと思っています。

なるほどなるほど……。
えっこの「建築空間のデザイン&リサーチ」って??

これもオムニバスで、毎回違う先生がいらっしゃって、スライドを見ながらそれぞれのご専門の話をしてくださるんです。
建築物を見るのが好きなので取ってみました。

毎回の授業の終わりに各自リアクションペーパー(その回の授業の感想や質問などを書くB6版サイズ程度の用紙)を書いて出す決まりになってました。
感想なんかを書けばよいので、ミニテストという趣旨のものではなかったはずなんですが、なぜかある先生の回で、「今日の授業で述べた3つの点について書きなさい」みたいなお題がいきなり出てざわつきました。
えっいきなり聞かれてもって(笑)。

私もお話をのほほんと聞いてただけなので、3つと言われてもまったく思い出せなくて。

ピンチじゃないですか(笑)。

大ピンチです。
周りを見てもみんな困惑していて。

そしたら、隣に座っていた友だちが席の離れたところに座っていた複数の友だちとLINEか何かで連絡を取りあって、ひとつでも覚えている人から答えを集めて、最終的に3つの答えを揃えたんです。
それを共有してもらって危機を脱しました(笑)。

要するに全員がその答えを書いたということになるんですけどね(笑)。

三人よれば文殊の知恵?(笑)
東大生らしいピンチの脱し方ですね!(笑)

これ、テストじゃないので不正とかじゃないですよ!
みんなで相談しあって、力を合わせて目の前の問題を解決したということです(笑)。

すばらしいです(笑)。

この「基礎演習」っていうのは何なんですか?

これも必修科目です。
私たちのクラスは野矢茂樹先生に教えていただきました。
クラスによって授業内容が全然違ったみたいです。

野矢先生クラスは論理トレーニングの授業だったんですが、本や新聞の抜粋を素材にして、文章の論理構造を吟味していくという内容です。

毎回、課題として何か文章を出されるんですが、一見もっともなことを述べているように見えるその文章の中の誤謬を指摘するレポートを書くんです。

これはあら探しが目的ではなくて、論理的に分析して、何がどうおかしいのかを論理的に言語化できるというスキルを身につけるための練習なんです。
課題文を元に、クラスで議論したりもします。

野矢先生の「基礎演習」は、駒場で受けた授業でもっとも衝撃を受けた授業のひとつでした。

私たちの仕事は、主にセリフにはなりますけど、文章の意味を声で伝える仕事なので、この論理トレーニングで学んだテキストの読み方がすごく共通しているというか。

演技者としては、自分が読んだり演じたりする文章の構造も意味も当然に分かってないといけないですよね。
野矢先生の授業は学問的な面白さももちろんありましたけど、声優として台本の読み方においても目を開かれましたし、普段の自分の物の見方や考え方、言葉の使い方にまで影響しています。

うわー、これは私たちも受けてみたい授業ですね!

これだけ授業を取られていて、お仕事との両立は大変だったんじゃないですか?

そもそも、仕事と両立というのではなくて、仕事はいつも優先にしていたんです。
大学があるから仕事を休むというのは自分にとっては本末転倒になるので。
オファーいただいた仕事はお断りしたことないんですよ。

たしかに、大学に通っていらっしゃることは公表されてない以上、お仕事先の方もご存知ではないですしね。

もし大学に行くことで声優業から離れるとか、大学との兼ね合いで仕事を控えているとか思われると、とても心外なんです。
いやいや控えないよって(笑)。

控えてないのに勝手に控えていると思われてオファーされないと困りますよね。

では声を大にして言っときましょう!
佐々木さんは仕事が最優先! だと(笑)。

自分の中では「両立」とか「二足のワラジ」とかいう感覚じゃないんです。
本当に仕事以外で余裕のある時間に大学に行っていたので。

ただ、同じ日に行ったり来たりはよくありました。
朝の仕事に行って昼は大学に行って夜はまた別の仕事に行くとか、朝大学に行って昼は抜けて仕事に行って夕方また戻って授業に出るとか。

授業に30分だけ出てから仕事に行くとか、仕事の後で大学に戻って最後の15分だけでも出席するとか。

夜はリハーサルがあったり打ち合わせがあったりもしますけど、大学を出る前に図書館に寄って課題をできるだけ進めておいてから仕事に行って、で、帰宅してから課題の残りをしたりと、けっこう時間のやりくりはしていました。

肉体的にはちょっと大変だったと思いますけど、大学に入った以上はできる限り行きたい、と思って。

ちょっとじゃなくてすごく大変だったのでは!
お仕事の時間はまちまちでしょうし、課題も試験もあるでしょうし……。
生活サイクルというか、日常がずいぶん変わったのではないですか?

そうですね、劇的に変わりました。
変わったというか、シンプルになったというのか。

生活が、「仕事と大学と勉強、以上」みたいになりました(笑)。
他のことにはほとんど時間を使わないというか使えなくなりましたね。

そうなりますよね。
でも、趣味や遊びの時間も息抜きとして必要じゃないですか?

たぶん、私の場合は、大学の講義を受けたり勉強したりすることがある種の「趣味」なんでしょうね。

しゅ、しゅ……!

ああ、きっと変な人ですよね、分かります(笑)。

趣味で大学に来るなんて不真面目だ、と不快になられる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、趣味は息抜き、とは思わないんです。
仕事も趣味も全力でやるから面白いし、ずっと好きでいられるんじゃないかと思うんです。

でも映画を観たり美術館に行ったりはしてましたよ。
たしかに、宴席に参加する頻度はすごく減りましたけど。
息抜きも適度にしてましたし、本を1ページも読まずにごろごろ自堕落な休日を過ごすこともありましたし。

本当ですか? ちょっと安心します(笑)。
仕事も趣味もどちらも手を抜かずに取り組まれている、佐々木さんはきっと、それをごく自然なこととして考えていらっしゃるんでしょうね。



お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!
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佐々木望の東大Days:https://todaidays-nozomusasaki.com
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