遂に復活!幻の名作映画「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」
●念願のディスクメディア化
1992年に公開されたアニメ映画「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」。VHS等が廃盤になりDVD・BD化もされず、“幻の名作”と呼ばれていた音楽劇である。
しかし、なんと昨日。映画「ちびまる子ちゃん 大野君と杉山君」とともにBD化され、12月に発売されることが突然発表された。
俺と本作の出会いは3年ほど前。WOWOWにて放映されていた本作を観賞し、思わず感嘆した。これは凄い…!噂に違わぬ、心も脳も揺さぶられる素晴らしいアニメ映画だ!と。
素晴らしい映画は人に勧めたくなるのが人情というもの(もちろん押し付けない程度に)。しかし、本作はいくら人に薦めようとも、観る手段がケーブルテレビの再放送か絶版でプレミア化したVHS・レーザーディスクを購入するしかない=観てもらうハードルが高過ぎるという歯痒さを感じていた。なので今回のソフト化により、この名作が多くの人に届くチャンスが増えることが本当に嬉しい。
…という訳で今回は布教活動のため、ごく手短ながら本作の魅力について語っていきたい。3年前の鑑賞記録・記憶をもとに書き起こしているため、間違い等があったらご指摘いただけると幸いです。
※「逆噴射小説ライナーノーツ」の続きは次回投稿致します。
※以下、個人名は敬称略にて表記します。
●「わたしの好きな歌」あらすじ
まる子と絵描きのお姉さんとの交流。お姉さんと彼氏の“大人の恋愛”に触れるまる子。童謡の歌詞にまつわる悲しい真実。それを踏まえたクライマックスのまる子の行動と台詞。
こうした物語とメイン楽曲の童謡「めんこい仔馬」の歌詞が上手くリンクしており、非常に丁寧に作られたストーリーが織りなされる。この説明だけでは一見シリアス調に感じられるかもしれないが実際はコメディ色の強い場面も多いため、子どもにとっても難しすぎず、大人の鑑賞にも耐えうる万人受けする内容と言えよう。
上記に述べたように、本作は脚本的にも優れた映画である。しかし本作最大の魅力は、映像と音楽にあると断言していい。物語の合間に流れる様々なアーティストの楽曲、そしてそのPV的なアニメーションが非常に独創的かつ魅力的なのだ。
●素晴らしいセンスの映像と楽曲
本作はいつもの「ちびまる子ちゃん」の現実世界と、さくらももこ的な幻想空間──様々な歌にインスピレーションを受けたイメージ映像が入り混じる、多種多様な世界観で構成された映画となっている。ミュージカルという枠組で括るよりも、MTV・MV的な演出を多用していることから、個人的には広い括りの“音楽劇”と表現したい。
「ヒロシの入浴」等の本作書き下ろし楽曲もあるが、その他の挿入歌は細野晴臣・大瀧詠一・たま等、やたら渋い人達を揃えている。90年代初期以前の邦楽にめっぽう詳しくない俺でも、本作に携わった方々の音楽的評価の高さは存じ上げているつもりだ。
そうそうたるアーティストの歌に合わせて流れるのは、独特なセンスに溢れる摩訶不思議なアニメーション。時にはハイテンション、時にはしっとり幻想的、時にはアーティスティック…。
思わず歌に聴き惚れ、映像に見惚れてしまう。これこそ「わたしの好きな歌」最大の魅力である。
劇中で流れる楽曲の一部、そして流れるシーンの感想を以下に挙げよう。
・大瀧詠一「1969年のドラッグレース」
・笠置シヅ子「買い物ブギー」(買い物ブギ)
・たま「星を食べる」
※「1969年のドラッグ・レース」「買い物ブギー」の映像を担当したのは、TVアニメ版「ピンポン」や映画「犬王」等で今をときめく名監督:湯浅政明。キャリア初期の頃ながら、明らかに卓越したセンスが見てとれる。
なお本編監督は須田裕美子・芝山努の共作。
●是非とも本編を観て下さい(2023/3/29 追記)
このように独特の映像美を言葉のみで表現したところで、素晴らしさの本質は50%も伝わらないだろう。劇中のスクリーンショットを貼れないことが惜しまれる…。
という訳で。まだ未見の方・知らなかった方はぜひ、これを機に「私の好きな歌」に興味を持っていただき、正規の手段で観て貰えると幸いです!
※追記
サブスク(Netflix)配信、遂に決まりました。是非。
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