2021年に観て印象深かった映画を振り返る 11 九月編
※12/2 誤字・脱字を修正しました。
八月はそれほど印象に残る作品が無かったので、前回の「七月編」に続く感想記事は今回の九月編になります。前置きはここまでとして、本編をどうぞ。
「リトル・ダンサー」(2000年)
イギリスの炭坑町で暮らす11歳のビリーは、ふとしたきっかけからクラシック・バレエに夢中になる。男がバレエだなんてみっともない、と炭坑ストで失業中のパパは猛反対。だがバレエ教室の先生だけは、ビリーのダンサーとしての素質を見抜き、応援する。やがてビリーの才能に気づいたパパは、名門ロイヤル・バレエ学校に入りたいという息子の願いをかなえるため、ある決意をする。
(Amazonより引用。)
バレエダンスに惹かれ、ダンサーを目指すようになった少年を描いたヒューマンドラマ。ミュージカル版もかなり有名らしく、そちらは原題通りの「ビリー・エリオット」というタイトルだそうで。
“男性らしさ”に囚われる父からボクシングを習わされる主人公が、本当にやりたい事(バレエダンス)を見つけて夢中になっていく様は感動的。当初はダンスを否定していた父が徐々に理解者となっていく過程も良い。俺の勝手な持論:“不器用な親父が子どもの夢を応援してくれる映画は面白い”という法則は本作にも適用された。
俺はダンスに疎いのでダンス描写の上手下手は判断出来ないが、中盤で主人公が街を走りながら行う衝動的なタップダンスには心惹かれた。バレエにタップ的な動きがあるのかは知らないが、またこれが滅茶苦茶格好良い。
そして地味に邦題がナイス。例えば「ダンサー・ボーイ」等、あえて“男の子がダンスしますよ!”といった過度な主張をしていないことに品の良さを感じる。
「マスターズ/超空の覇者」(1987年)
時は宇宙戦国時代。全宇宙を支配する野望に燃える群雄“マスター”たちは、その鍵を握るグレイスカル・パワーの秘密を手に入れるために凄絶な闘いを繰り広げていた。恐るべき邪悪な力を持つスケルターは、襲い来る刺客や残忍な“氷の毒女”イブル・リンをねじ伏せ、ついに超空の覇者“ザ・マスター”の座に。
しかし、それを阻止すべく立ち上がった英雄がいた。惑星エターニアの戦士・ヒーマンである。宇宙の平和と正義のために、スケルターに闘いを挑むヒーマンだったが、敵の罠に落ち辺境の星へと飛ばされてしまう。その星の名は、地球──。そこで出会ったジュリーとケヴィンの協力を得て、ヒーマンは逆襲に打って出る。
(Amazonより引用。一部改変。)
かつてB級映画を量産していた会社:キャノンフィルムズが繰り出したSFファンタジー...と見せかけた「マイティ・ソー」一作目的な異世界転移型現代アクション。原作は今日もシリーズが継続するオモチャらしい。主演は「ロッキー4 炎の友情」(1985)、「エクスペンダブルズ」シリーズ、「クリード 炎の宿敵」(2018)のドルフ・ラングレン氏。
DVDのジャケットを見て解る通り名作とは呼べぬ珍妙な作品であるが、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014)を先取りしたかのような“過去の出来事鑑賞マシン”、特定の音を奏でることで起動するシンセサイザー風の時空転移マシン、壮麗なマットペインティング等、意外にも素直に褒められるべき部分が多い。このように、レトロ風B級SFファンタジーと見せ掛けてそれなりの新鮮さがあるのが面白かった。
また余談ながら、ドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」(2013)によると、本作のキャラクターデザインの一部はアレハンドロ・ホドロフスキー監督版「DUNE 砂の惑星」(製作中止)の設定画を引用しているらしい。個人的に「ホドロフスキーのDUNE」は非常に大好きな映画なので、いずれ単独記事で感想を書きたいと思っている。
「竜とそばかすの姫」(2021年)
自然豊かな高知の田舎に住む高校生・内藤鈴は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。
曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、鈴は親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U>に参加することに。<U>では、「As」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。
数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。
(公式サイトより抜粋。一部改変。)
細田守監督のミュージカル風SF映画。元ディズニーのアニメーターやアイルランドの有名アニメ会社“カートゥーン・サルーン”まで参加しているあたり、細田監督の世界的評価って思ったより高いのかも…?
簡易なデバイスを通じたバーチャル空間との五感シンクロ描写、そしてバーチャル空間“U”の壮大なスケール感表現はお見事。このスケール感と劇伴を体感できただけでも劇場で観る価値があった。没入感が半端じゃない。ミュージカル部分を彩る楽曲も素晴らしく、特にアバンタイトルで流れる「U」 (millennium parade × Belle)には心を鷲掴みにされた。
一方、脚本面には疑問符を浮かべた箇所が多かった。例えばインターネットが普及し切った2021年の作品にも関わらず、WEB上の個人情報の扱い方・描き方が甘過ぎる。具体的には“WEB上の晒し行為の影響は当人の家族や友人にも及ぶ”という理不尽な社会問題の描き方が決定的に欠けている。この社会問題に関しては、書籍『ネットカルマ 邪悪なバーチャル世界からの脱出』(著:佐々木閑 2018)に詳しい。
上から目線で失礼な発言となるが、やはり細田監督の作品には「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(2000)の吉田玲子氏or「時をかける少女」等の奥寺佐渡子氏の脚本が必要だよなぁ...と思わざるを得ない。
また「美女と野獣」(1991)をそっくり引用する位なら、いっそディズニーばりにガチガチなミュージカル映画に仕立てても良かったのでは?と感じた。歌のエモーションで物語を強引に誘導できるミュージカル形式であれば、細田監督自ら脚本を書いた作品に共通する欠点:超ご都合主義を大部分補えたはず。
●2021年に観て印象深かった映画を振り返る 12 に続きます!
(画像はAmazon、「〜そばかすの姫」は公式サイトより引用しました。)
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