「かみかさ」第9話
いのり、大学3年生の晩秋、雨の日。
おじいちゃんのお葬式が終わった。
おじいちゃんは父のお父さんで離れて暮らしてた。
骨上げを待つ間に親戚だけで、別室で食事をしていた。
親戚と言っても、いのりの知らない人がいた。
遠い親戚という人、どのように遠いのか話を聞いても、わからなかった。
お葬式はそういう事も、よくあるだろう。
皆、悲しむ事もなく穏やかに、食事をしながら話していた。
いのりは、変わらず外では人見知りで、何も話さなかった。
食事を終えて、御手洗いに行くため部屋を出た。
ホールは天井までガラス張りで、雨粒と湿気が張り付いていた。
建物の扉を開け、外気を吸った。
外では空が代わりに涙を流していた。
入り口の傘立てに、素敵な傘を見つけた。
鶯茶色で、木の持ち手の渋い傘。すぐ側には品のいい京紫の傘。女性用だろう。
死は静かな方がいい
死は時を教える
今だと
今 この瞬間だと
気づけと
死は静かに
告げる
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ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?