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【エッセイ】「匂い」を思い出すこと

ふと、ココナッツオイルの匂いを思い出した。

そしてその「匂い」を、
鼻の奥に感じることができる。

本当にココナッツオイルが、
すぐ側にあるような感覚。

匂いを思い出すというのは、これまで何度かあるけれど、ここまで現実感があるようなものではない。

ココナッツの甘い匂いは、直近で嗅いでいないのにも関わらず、記憶から無理やり引っ張り上げられたように、唐突に思い出される。
それが匂いとなった。

それは、そこそこ好きな匂いだけれど、
特別好きというモノではない。

*****
これからの季節は
「金木犀」の匂いが充満するはずだ。

しかし、私はいつも
金木犀の匂いを忘れてしまう。

今もこれを書いている間、
金木犀がどういう匂いなのか
完全に忘れている。

でもこれからすぐに
その匂いを嗅ぐことができるだろう。

そして冬を過ぎて春になり、
また金木犀の匂いを忘れる。

そして、ふと、また来年の秋のどこかで
ココナッツオイルのように思い出す。


つづく。


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