[インタビュー] Ugly ー少年時代の終わりと新しい季節の訪れー
ここから先が新しいチャプターだ。
So Young Magazineの編集長 Sam Ford が日本のメディア(The Sign Magazine)のインタヴューに対して真っ先に名前をあげて、Sports Teamも自身のレーベルが契約する最初のバンドに選びそこにメッセージと期待を込めた。King kruleを通過したBabyshamblesのような、The Smithsやさらにその先、60年代から続くUKの伝統的な部分も併せ持って……ケンブリッジのバンドUglyには浪漫が満ちあふれていた。
それが2018年にあったことだ。そこからメンバーチェンジがあり、パンデミックが起こり、季節が変わる。2019年のEP 『The Price of Fame - themed』から3年余りが経ち、Uglyは形を変え再び帰って来た。2022年6月に発表された新曲 ”I’m Happy You’re Here”、この曲は今までのUglyの面影を残して、そして決定的に違う。それはまるで物語の時が流れた第二章のようで、描かれなかった不在の時間がそこに溶けているかのようにも思える。時間は変化をうながし、成長が記憶を顔にする。あるいはそれは幻想で、過度に物語を求め、そこに答えを見つけようとしているに過ぎないのかもしれない。しかし繰り返されるフレーズと静かにつぶやかれるヴォーカル、響く管楽器の音色がどうしたって浪漫と、そして感傷を連れてくる。
少年時代が終わり次が始まる。ページがめくられ新しい章がスタートする。Uglyのヴォーカル/ギターSamuel Goaterにバンドの過去と現在、そしてこれからについての話を聞いた。
Interview with Samuel Goater (Ugly)
──まず最初にバンド結成当時の話を聞かせてください。Uglyは学生時代にSamとHarrison、そして現在Black Country, New RoadのドラマーであるCharlieが同じクラスになったところから始まっているんですよね?
そうそう。それで合ってるよ!みんな本当に若かった。あの時はマジで無邪気で純粋だったって懐かしく思えるよ。
──その学校の一学年上にBC,NRのLewisとMayもいたというお話を聞いたのですが、どんな学校だったのでしょうか?
学校はまぁまぁって感じで特にどうだってこともないかなぁ。若者が通う普通の学校って感じ。そうはいってもそこでバンドが生まれたわけだから良かったのかもしれないけどね。
──”Switch”や”Blooze”、”Emphysema”の頃までは特にKing Kruleの影響が大きかったように思えますが、バンド結成当時に強く影響を受けた音楽はどんなものがあったのでしょうか?
そうだね。その比較はフェアだよ。僕たちはその当時のインディの多くを参照にしてわかりやすい形で音を作っていったんだと思う。今はそこから進んでもっと自分たちらしいって思えるような方向に行けたから良かったって思ってるよ。
Ugly - Switch [Official Music Video]
──Sports Teamのレーベル、Holm Frontからリリースされた7インチSunday Schoolに収録されている ‘The Last Supper At The Regal Wetherspoon' の〈The Regal Wetherspoon〉はケンブリッジに実際にあるパブの名前なんですよね? そこで教会みたいな物語が展開されているのが印象的でした。〈The Regal Wetherspoon〉というのはどんな感じの場所なんですか?
その通り!〈The Regal Wetherspoon〉は実在して、古い劇場跡地というなかなか壮大な眺めの場所にあるありふれたミル・パブなんだけど、実のところイギリスのあんまりよくない店のフランチャイズなんだ。そうは言っても、そこに集うには若すぎるって学生たちにとっては寄航港になるんだけどね。もう僕たちみんな誰もそこに行ってないって言えて嬉しいよ。
Ugly - The Last Supper at The Regal Wetherspoon [Official Music Video]
──Sports TeamやJerskin Fendrix, deathcrash などケンブリッジ大学にゆかりのあるミュージシャンやBC,NRのようなバンドの存在もあって、ケンブリッジはどんな街なのかと気になっているのですが、街の印象を教えていだけると嬉しいです。
ケンブリッジは本当にのどかな場所で、バンド/ミュージックシーンに関しては「buzzy」とは言えないかな。残念ながら大学敷地の牧歌的な風景は街の他の部分とは切り離されているから、その風景が必ずしも見れるとは限らないんだけど。
──現在のUglyのラインナップを教えてください。それぞれのメンバーが加入した経緯などもう少し詳しく知りたいです。
現在のUglyは ─ Tom, Harry, Harrison, Jasmine, Theo, Samの6人。
ハリソンと僕(Sam)二人だけがオリジナルメンバーで、 Harryはベースのサポートとして入って貰ったんだけど、そのあと正式メンバーになった。しばらくしてTomが鍵盤奏者として、Jasmineがトランペットとして加入した。Jasmineは元々トランペットとして加入したんだけど今は唄っていることの方が多いかな。Theoは現在、最新のドラマーで(つまり3番目のドラマーだね)最後のドラマーであって欲しいと願っているよ。Theo以外のメンバーはみんなケンブリッジ出身でTheoはロンドン出身。友達 / 友達の友達で結成される結束の固いグループがあるって素敵なことだよね。
── 新曲 I’m Happy You’re Hereについて聞かせてください。これまでの曲とはかなり違った印象で、僕は諦めと覚悟が入り交じった少年時代の終わりみたいなものを感じて、Ugly 第二期の始まりとして本当にふさわしいと思ったのですが、この曲のテーマやコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?
その表現良いね!僕自身も似たような感覚だったから、そんな風に響いてくれたなら嬉しいよ。
この曲はゴールを最初から決めて作ったものじゃなくて、最初のギターセクションから膨らませて有機的に作ったものなんだ。この曲はさまざまな人にとってさまざまな意味を持つような曲であって、そして願わくば人生のさまざまなステージで違った意味を持って響いて欲しいと思うよ。歌詞は明示的ではないし、色んな解釈が出来るようになっていると思う。
Ugly - I'm Happy You're Here [Official Audio]
──バンドの初期と今とで変化した部分があるとしたらどのような部分だと思いますか?
曲作りという点で言うと以前とはまったく違うダイナミックさがあると思う。前はそうじゃなかったんだけど、全員が意見を出し合うことでよりダイナミックでオリジナルなアウトプットになる。それって決して悪いことじゃないよね。僕らはバンドを始めたころから大きく成長して、以前とは違った人生観を持って、違った音楽観を持っている。おそらくそれが曲作りにも反映されていると思うんだ。
──いま現在の関心について教えてください。音楽以外でもいいのですが曲を作る時にインスピレーションの元になっているものはありますか?
僕たちみんな全然違うんだけど、案外同じようなものに興味をもったりするんだよ。これだけみんな違うのに音楽を作るために集まって、違った面が連動して一つのものが出来ているっていうのは面白いものだよね。
──同世代のバンドで気になっているバンドはいますか?
フォークのアプローチをしている新しいバンドの音楽が好きなんだ。Broadside HacksとかCarolineみたいな。同じくらい素敵な友人であり音楽的カウンターパートであるThe Long Facesの音楽も。
Broadside Hacks - Gently Johnny (Green Man Festival | Sessions)
※Broadside HacksはSorryのベーシスト Campbell Baum が主宰するトラッド・フォークを再解釈するレコードレーベル/コレクティヴ。元Goat GirlのNaima Bockや元Dead prettiesのOscar Browne、Katy J Pearsonなど数多くのメンバーが参加している(Carolineのメンバーもこのプロジェクトに関わっている模様)。
caroline - Good morning (red) (Official Video)
──ありがとうございます。最後にバンドの今後の予定について教えてください。
今年が終わるまでに、もっとたくさんの音楽とライヴを期待してくれていいよ。それで来年はもっと大きく良い方向に進んで行けたらいいね。
──余談なのですが、Distiller TVのスタジオライヴが最高で何度も見ていて。そこで演奏されているKing of Swingsが大好きなんですけど、この曲をリリースする予定はあったりしないでしょうか?
マジで?超良いね!実はロックダウン中にKing of Swingsを含むアルバム1枚分のデモを録っているんだ。残念なことに時間が経っちゃって、その時のモードとはもう全然違っちゃったんだけど。
でもいずれどこかのタイミングで回顧的なEPを録音するとか、BandcampやSoundCloudみたいな限定的なプラットフォームでデモとしてそのままリリースするとかあるかもしれない。
Ugly - King of Swings | Live from The Distillery for Gigwise
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