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Holm Front ワールドワイド 〜Sports Teamはいかにしてそのバンドとのサインに至ったか〜


結局のところレーベルの価値とは何を出したかによって決まるんだと思う。CreationといったらoasisやPrimal Scream、The Pastelsを出したレーベルだし、DominoとはArctic MonkeysやFranz Ferdinandがいるレーベルで、Alex GがDominoだからという理由でSorryもDominoと契約した。プロモーションだとかリリーススケジュールだとか中から見ると色々と違いがあるのだろうけど、外から見た場合、そのイメージは前面に出ているバンドによって形作られる。

インディレーベルの中でも規模があまり大きくないレーベルの場合は特にそうで、不祥事でも起こさない限り、レーベルの姿勢やメッセージはリリースしたバンドの連なりによって示される(勝手に感じ取ると言った方がいいかもしれないけど)。

Ugly、Personal Trainer、Walt Disco、Maxband、だからこれらのバンドの名前の羅列がそのままなんでHolm Frontの事が好きなのかってことの理由になる。ロンドンのインディバンド Sports Teamによって運営されているこのレーベルは下手した今世界で一番勢いに乗っているレーベルなんじゃないかってそんなことを思ってしまうくらいに素晴らしい。

バンドがレーベルを始める理由はだいたい自分たちのレコードを出すためなのだろうけど、デビューアルバムを出す前に3つのバンドと契約してレコードをリリースするなんてことは中々ない(Maxbandは1stアルバムDeep Down Happyリリース後のサイン)。これはレーベルとして本気だぞ、なんといってもセレクトが最高過ぎる……そんなことを常々考えていたのだけど、今回、Personal TrainerのMuscle Memoryを聞いて上がったテンションそのままにメールを送りいくつか気になっていたことを聞いてみた。

Sports Teamのリードギタリストでありレーベル運営の中心人物、Henry Youngへのインタビュー、これはきっとバンドがやっているレーベルについての話だし、好きなバンドが好きなバンドのレコードを出すってことの喜びについての話でもある。



インタビュー With Henry Young


—今回はバンドSportsTeamではなくレーベルHolm Frontのお話を聞きたいと思います。そもそもレーベルを始めたきっかけは何だったのでしょう?

レーベルを始めたきっかけはSports Teamの新しい7インチを出そうと思ったからなんだ。最初にWinter NetsをNice Swanと一緒に出したんだけど、次は自分たちだけでやってみようってなったんだ。フィジカルを手にするっていうのはある種の満足感があるし、自分たちが望んだものを望んだタイミングでリリース出来るっていうのは幸せだよ。


—Holm Frontというレーベル名の由来はなんですか?

holmっていうのは島の一形態で、内陸部によくあって、洪水で簡単に水没してしまうんだ。frontっていうのは外観で、偽装するためのもの。残りはお察しみたいなさ……


レーベルとして最初に契約したのはUglyでしたよね? みんなで笑顔で乾杯している写真をよく覚えています。僕はもともとUgly大好きで、それで凄く興奮してHolm Frontへの期待も一気に高まりました。Uglyとはケンブリッジ時代からの知り合いだったんですか?

Uglyと最初に会ったのはNew CrossのFive BellsであったSo Young Magazineのイベントだったんだ。Uglyは超タイトだったね。で、僕たちよりもイケてる服を着てた。ちょうどその時期に仕事を辞めてSports Teamに専念することになったから、余った時間で他のアーティストのレコードも出せるぞって思ったんだ。Uglyは僕たち(Sports Team)がケンブリッジで出会ったすぐ下の道のo Hills Road Collegeに通っていたから馴染みがあったのかもね。シンガーのSam Goaterと話をしたらすぐに話がまとまったんだ。
Oliと僕とで旅した冬の夜の大航海のことも覚えているよ、SurreyのRobの家からOld Blue Lastにいるバンドまで150枚のレコードをバックパックに入れて届けたんだ。
SamとHarrisonに手渡しているtesco proseccoはまったくもって非公式な契約式のもので、他に類を見ないほど上品なタッチだったね。


オランダのPersonal TrainerとはNice SwanでレーベルメイトだったPip Blomとのヨーロッパツアーで出会ったんですよね?TwitterでAlexが冗談めかして「Personal TrainerとのサインはAlan Mcgeeがoasisとサインした時のそれみたいなものだった」って言っていましたけど、個人的にもここで「Sports TeamがやっているからとかじゃなくてHolm Frontはレーベルとして凄くいいぞ」ってなったんですよね。Personal Trainerとの契約に至った経緯をもう少し詳しく教えてください。

もう思い出せない理由で僕らはアムステルダムにいて、Helicopter Studiosでシークレット・ライブをやったんだ。Alexは長くてヘビーなUKツアーで声を失っていた。Pip Blomが僕らの前、オープニングを飾ったのは聞いたこともないようなバンドだった。最初の曲が始まってからすぐに、僕たちみんな興奮してお互いに向き合って、そして言ったんだ「俺たちこのバンドとサインするべきだよな」って。そのバンドこそPersonal Trainerでその曲こそがThe Lazerだった。その後シングルとしてリリースしたわけなんだけど、彼らはネブワースをまだやっていない。デビューEP Gazeboが2月5日に出るけど、それで全てが変わるかも……。

(※ネブワースとは1996年8月のoasisの伝説の公演のこと。この公演でノエル・ギャラガーは「これは歴史なんだ。まさに今、こここそが、歴史なんだ」という有名な言葉を残している)


その後にサインしたWalt Discoにしても「うわぁここに来るかぁ〜」と思わず笑顔になるような驚きがあって「チョイスが最高だぜHolm Front」ってなったんですけど、レーベルがリリースするバンドはどのようにして選んでいるのでしょう?基準などがあれば教えてください。

おもしろいことにこれはWalt DiscoのシンガーのJamesの方からのアプローチだったんだよね。2018年のレディング・フェスティバルのバックステージで会って、それでその後Sports Teamのツアーを一緒に回ったんだ。彼らは次のシングルを出してくれる人を探してて僕らは喜んでそれに応じた。思うんだけど、Personal TrainerやUglyの場合もだけどさ、レコードを出す前に偶然のつながりってやつがあったんじゃないかって。なんていうかビジネス的なつながりっていうよりももっと友達と一緒になにかやるみたいな感じで。今はだから特別な基準はなくて、僕らが彼らを気に入って、彼らも僕らと一緒にやることを望んでくれて、それならトライしてみるかみたいな、そんな感じかな。


Maxbandについても教えてください。まさかここでアメリカ、ブルックリンのバンドをリリースするとはびっくりしました。Tシャツでネタにしていましたけどまさにワールドワイドだなって。MaxbandはParquet CourtsのMax Savageがいるバンドなんですよね? Parquet Courtsみたいな曲から初期のBeach FossilsとかDIIVみたいな曲までこのバンドも本当にいいですよね。Maxbandとはどのような経緯で契約に至ったんですか。

常々、一つの国やシーンだけじゃなくて、もっと色々なものにも目を向けなきゃなって思っているんだ。2019年のSports TeamのUSツアーの時にMaxbandと一緒に出演したことがあって、その時から彼らはあんまり新しい音楽を出していなかったんだけど……これは「Cut it Loose」を聞くまでの話ね。この曲のプロダクションは最初のリリースのPerfect Strangersとはもうまったく違って進化していたからレコードをリリースするプランはあるのかってそれで連絡したんだ。このEPは絶対レコードで出すべきだって、ありがたいことに彼らも乗り気で……ロックダウン中にZoomで七面倒くさく契約を祝う乾杯をすることになってもね。彼らのマネージャーであるMissyにPayPalで$66.66送金して缶ビールを買ってもらって、それでUKのお気に入りの「サッカー」チームの話をしたなぁ。Maxは恐竜の格好をしたマスコットが階段を落ちてくるビデオをシェアしたりしておおはしゃぎだったよ。



Spotifyのプレイリスト「At Home with Sports Team」についてのお話も聞かせてください。僕はこのプレイリストを聞いて毎週「だよね?この曲本当よかったよね」とか「このバンド知らなかったけど、超良い!」とかやっていて、なんていうか一方的ではあるんですけど、手紙のやりとりをしているというか文通しているみたいな楽しみがあるなって思っていて。バンドが影響を受けた音楽を紹介するプレイリストは数あれど、ここまで自分たちの「今のモード」を出しているのは他にないんじゃないかって。このプレイリストについて教えてください。

誰かが定期的に聞いてくれるって嬉しいことだよね、それも遠く離れた日本でなんて。プレイリストのフォロワーの数もそこそこ増えて来たんだけど、基本的には自分がハマっててこれはもっと聞かれるべきだろって曲を入れているんだ。あとは昔の曲もいくつかって感じで。
「At Home with Sports Team」なんて名前だけどバンドのみんなが同じ趣味をしてるってわけじゃないっていうのは言っておかなきゃいけない。たとえばBenはヒップホップとか90年代のR&Bをよく聞いているし。Benもプレイリストを作るべきかもね。


今お気に入りのバンドはありますか?

Adrianne Lenkerが関わったものの全て。コネティカットのアートパンクの新鋭Them Airs、The Cool Greenhouse、Black Country New Road、Martha Skye Murphy、Sunken Sorry、ヨークのタフガイBull、The Tony Blair Witch Project


現在のUKシーンにおいて、自分たちのレーベルを立ち上げ、1stアルバムを出す前に他のバンドのレコードを出すなどSports Teamは他のバンドとは異なったアプローチをしていますが、レーベルとバンドの二面性を持つことで何か変わったことはありましたか?

(なんにも)おばあちゃんが今でもクリスマスに靴下を買って来るんだ

レーベルを運営する上で心がけていることは何かありますか?

いつでも完売するようにってことかな


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