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脳卒中後の運転支援

 何年経験しても正解がわからない支援の一つ。
脳卒中後の自動車運転再開支援。

 今入院している方も最終的にはペーパードライバー講習を経て再開方向で話を進める予定。

 神経心理学的検査では、TMT-Jでも異常値や境界域となる数値であり、MMSEやでもシリアルセブン(計算課題)でも原点があるなど、机上の検査場では手放しで運転再開を支援できる状態ではなかったです。

 ただ、この方の利点としては、今回の病気のことに関して理解があり、病気もすぐに治るものではないといった受け止めもできている点。
 その上で、元々自分はスピードを出す方でもなかった、今後も気をつけて運転しなければならないという風に自分の状態を理解している。

 実はこれが非常に重要な点ではないのかなと思っています。

 神経心理上の数値も大切だけど、それだけでは説明ができない部分が人間の作業にはあると考えています。
 ましてや運転というのは、習慣化された課題で新しい道でなければ、ある程度は自動操縦状態なんです。

 普段運転している道を、キョロキョロしながら運転することはないと思います。
ある程度慣れた道であれば、何も考えずに、むしろ別のことを考えていても運転できると思います。
 実際そういった場面ではあまり高次脳機能、特に注意を扱う前頭葉の働きは抑えられます。
 逆に病院での検査は、ほとんどは初めて受ける検査で、脳がフル稼働です。つまり状況が全く違うのです。
 そのためどこまで神経心理学的検査の結果を重要視すべきなのかは現場レベルでは非常に判断に迷うのが現状です。

 そうなってくると数値で示す以上に、本人がどの程度自身の病気を理解しているか、受け止めているか、神経心理学的検査の結果を聞いて、何を感じるのか、どう受け止めるのか。
 それが大切なのだと思います。

自己認識なんてことをよく言いますが、本当にそこに尽きるのではないかと。

 「処理速度が遅いんですね、じゃあ今後はスピードは控えないといけませんね。車間距離も空けないといけませんね」
 「脳疲労があるんですね。では長時間の運転は危ないですね、段階的に
進めるようにしていきます。」
 「今までとは状況が違うから、夜の運転は控えたほうがいいですよね。」

といった反応が得られるのであれば、私は再開方向で進めてもよのではないかなと思っています。(当然チーム内と医師と相談しての判断ですが)

逆に、「病前と何も変わりません。今まで通り運転できます。」「処理速度が落ちている感覚もありません。」「脳疲労も感じません。通勤はどうしても車でないといけないので乗るしかありません」
「普段の道は慣れているから大丈夫です。」「机の上の検査で何がわかるんですか」

なんてことを言う人は運転は危険が高いような気がしています。
あくまで私の感覚ということはご理解いただきたいですが、判断材料の一つにしてもいいのかなと。

色々と研究が進んでいる分野でもありますが、まだまだすっきりとした判断ができるには時間がかかりそうです。

それでは。

Naoki

 
 

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