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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2023年1月の記事一覧

「出次第連絡ください、直前まで待ってます」

12年前のこと。 息子を出産した病院でのお話です。 私が出産する直前(1週間くらい前)に産婦人科を全面改装リニューアルオープンした病院。 里帰り出産のため、実家から徒歩3分で行けるというだけで選んだ病院でしたが 新しく生まれかわった「建てたて」の豪華な部屋(ホテルのようでした)に退院前のディナーもあるとのこと。 ラッキーでした。 ディナーといえばフランス料理のコースのイメージでしたが、私の病院は「せっかく新しく生まれ変わったのだからちょっと変わったことを」ということで主治医の

家庭訪問先でステーキを食べて泣いた話。

「さあさ、もう焼き上がりますんで。」 玄関で靴を脱いでいると、にこやかにそう言われた。 もう、焼き上がり、ますんで・・・? 漂う焼けるお肉の、暴力的なまでにそそられるいい匂い。お昼に食べた給食はすっかり消化し終えている。ほどよく空っぽの胃が、物欲しげにきゅるきゅる動く。 ・・・ちょうどご夕食の準備中だったのだろうか。タイミングが悪くて申し訳ない。早くお暇しなければ。 そんなことを考えながら、案内されつつ、部屋に続く廊下を歩く。 「さあさ、先生、こちらです。」 そして通

人生で1番好きだったバンドが解散する。彼らの曲が、まだ聴けない。

来月、人生で1番好きだったバンドが解散する。 冗談抜きで、わたしにとって青春そのものだったバンドだ。 けれどごめんなさい、解散が発表された日からもう9ヶ月が経ったのに、まだあの日以来彼らの音楽が聴けません。 ⚓️ 中学校でアイマイミーマインを勉強するより早く好きになったゆえ、数年経っても「WEAVER」を「ウェーバー」だと勘違いしていたバンドが。 ( マックス・ウェーバーじゃないんだからさ ) 中学生の頃に流行った、雑誌の切り抜きやポスカで彩って自分のことを紹介するノー

バーテンダー歴27年のマスターが、お客さんに言われて「よっしゃー!」と喜ぶ言葉

お知らせ cakes時代からの本連載をまとめた、林伸次さんの新刊が発売しました! 日本一発信力のあるバーの店主が、人と交わる「わずらわしさ」と「幸せ」、「うまく生きるヒント」をつづった人間関係考察エッセイ。ぜひお買い求めください! 前回の記事はこちら 会話とモテの関係いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 僕のnoteに、「うちの近所に二軒のバーがあったのですが、無愛想で無口なバーテンダーのお店はいつもお客さんがいて、しゃべり上手でイケメンのバーテンダーのお

大人のためのサンタクロース考—「サンタは実在するか?」を本気で考えた

我が子から「サンタさんって本当にいるの?」と聞かれたら、どう答えるだろうか。一年前だったら、ぼくはどう答えたらいいか分からなかった。 ある種の後ろめたさを覚えながら「いるよ」と伝えるか、 あるいは「ねー、どうなんだろうね、父ちゃんも直接見たことはないからなぁ…」と御茶を濁すか。 未就学の子どもが四人いるぼくは、「これは将来質問されたとき困ったことになるかもしれん」と一抹の不安を覚えていた。 けれど、先日のクリスマスに心境の変化があった。 12月25日の朝、サンタクロースか

これから英語を学ぶ必要があるのか?

前回の記事はこちら どうして日本人はブラジル人に……いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 23歳から24歳くらいの頃、「バッカーナ」と「サバス東京」という、東京のふたつのブラジルレストランで働いていたことがあるんですね。 そのレストランは、ブラジル現地風に演出するために、スタッフにブラジル人がたくさんいたんです。ワールドカップなんかを見ているとわかるのですが、ブラジルにはさまざまな人種の人たちがいますよね。そんなブラジル人たちが、渋谷の真ん中で、デート中の

最後のディナーで謎のお客さんが教えてくれたこと 

新型コロナ対策が緩和され、海外との行き来も戻りつつある中、私がアルバイトをしているイタリアンレストランにも、たまに外国人のお客さんが訪れる。 お客さんとのコミュニケーションを大事にしている店なので、「もっと語学をしっかりやっておけば良かった…」と毎回、痛感する。 それでも「相手を知りたい」「相手に伝えたい」という気持ちさえあれば、意外となんとかなるものなのかもしれない。 拙い語学力で注文取り 店に来るお客さんは、特定の国籍や地域が多いわけではない。中国、アメリカ、韓国

ふとした時に出てしまう「職業病」

前回の記事はこちら その人の仕事が表れるバーでの行動いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 バーでの営業中、お客さまに「お会計お願いします」って言われて、僕が「1万300円です」って伝票を見せたとしますよね。そしたら、「マスター、この300円なんとかならないですかね」って言う方がいるんですね。 「え、バーでそんなことを言う人がいるの?」って驚きますよね。もちろん僕も驚いてしまうのですが、想像ですが、すごくケチとか交渉するのが好きとかそういうのじゃなくて、いつ

人生で初めて買った化粧水は、半分しか使えなかったけれど

YouTubeのおすすめで流れてきたショート動画『【保存版】2022年ベストコスメランキング』を観ていて、ぼくは10年前のある日のことを思い出していた。 人生ではじめて「化粧水」を買った日のこと。 その化粧水は半分しか使えなかった。 でも不思議と満ち足りた気持ちになった。 そんな昔の話を、今日は書きます。 *** 京都の繁華街、四条河原町の一角にあるドラッグストア。ぼくはこの日、人生ではじめての「化粧水」を手に入れるべく、コスメコーナーに立っていた。 当時19歳の

東京おせっかいガイド

本当はタイトルを「東京親切ガイド」にしたかったんです。だけど自分から親切っていう人のことを、あなた、信用できますか? わたしは、無理です。 なので、あえておせっかいという言葉を選びました。心もちとしては、もちろん親切ですのでご安心ください。 東京には魔物が棲んでいます。 東海地方の小さな町から上京し、花の都でかれこれ35年を超えました。そんな筆者でもいまなお、魔物にやられかける刻がある。 いわんや、次の春から期待に胸を膨らませて帝都での新生活をはじめようなんていう蕾

【フエギアは】香水専門店で、なぜか人生相談に乗ってもらった話【いいぞ】

いつ行っても並んでいる、GINZA SIXの謎の一角それが「フエギア1833」(以下「フエギア」)という、アルゼンチンの香水専門店。 わたしとフエギアの出会いは、自問自答講座・お買い物同行ツアーで「あそこのお店、めっちゃ人並んでいますね」とあきやあさみさんに話したことです。 あまりに並んでいたのと、当時はあきやさんもわたしも「並んでまで香水を購入するガチ勢」ではなかったので、ショップカードを頂戴して、他のお店を見た記憶があります。 その後約2年して、GINZA SIXの同じ

ちょっと楽しい誕生日ケーキの買い方

同居人のOさんが誕生日だった。 近所のケーキ屋さんに行った。 ちょっと楽しい買い方をした。 ので、日記に書いて、のこします。 ・・・ 誕生日ケーキって、本人に内緒で買うことも多い。けど、我々はある程度歳を重ねているからか、あんまり気にしなくなった。「じゃーん!おめでとう!!」も好きだけど、「どの味が気分?」「ローソクはどんなのにする?」を、共に話しながら選ぶのもよい。 近所の百貨店、地下1階 食料品売場。 ケーキ屋さんのショーケースには、苺のホールケーキがひとつ。ちっち