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#詩

詩 群青

詩 群青



群青思いを馳せることすらできない古に
牙を収めた獣を
一匹の「人間」と名付けたのは
誰なのか

康寧の闇を破り
繰り返し訪れる東雲を
再び迎え入れる空を今日も仰ぐ

小さくなった人間の
ひとりひとりが持つ不完全な祈りに
もしも神なるものがいるのであれば
この大地に住まう何から守るのだと
問いただすだろうか

安らぎたいのだと
ただそれだけなのだと
願うこの身に

群青の空よ
答えてはくれまいか

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Once in a Blue Moon

Once in a Blue Moon

 
 
 
── Once in a Blue Moon ──
 
極めて稀なこと
決してあり得ないこと
 
 
⿴⿻⿸☽✮☾⿴⿻⿸
 

Blue Moon
 
 
かくさないで
 
あの夜 朱にそまった月の頬を
 
 
 
Blue Moon
 
 
みていたはず
 
あの夜の月は燃えるように赫かった
 
 
 
Blue Moon
 
 
みつめていて
 
宵の闇から黄金の瞳で
 
 
 

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【まとめ】一行詩いちごつみ~天狼~

【まとめ】一行詩いちごつみ~天狼~

本日 1月15日(いーいちご)
皆さま、時刻は 15時23分(いちごつみ)を迎えております😇

さてさて、と言うことでお待たせ致しました!

『思い立ったが吉日』的に1月8日に呼びかけ、7人の方にご参加戴いた『一行詩いちごつみ』は、10日に計8人で1巡目をスタートし、2巡目を14日に完走❢ 無事に完成させることが出来ました❢

ありがとうございます❢

今回も、別名・画像編集の匠 吉田翠さん が

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詩 憐憫

詩 憐憫

くぐもる声で囁く少女

石の上のバイオリン弾きが
片目を瞑り
汗をかきながら働く人夫が
怠け者を蹴り上げる
踊り子達が軽やかに羽を広げれば
王様が角を磨く

頬を赤らめた少女は
囁きを止めて歌い出す
拳を突き上げ
とうとうと語る思いのたけ

ハーメルンの嘘つき市民
お腹を空かせたグレーテル
鼓動の高まりはミュージカル

虫達を舞台装置に見立てた少女に
観客はお前自身だと囃す蝉
驚いた少女は背をむけ

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『少女のころ』


置き去りにされても

永久(とわ)にしようと閉じ込めた
長すぎる少女の時を
儚さ抱(いだ)いて憂うのか


見果てぬ夢と知ってなお

刹那の瞬きに掻き消えた
短すぎた少女の頃を
それでも愛しく惜しむのか

『少年のころ』


置き去りにしても

夏と競って駆け抜けた
幻のような少年の頃を
それでも共に懐かしむのか


留まることをあきらめてなお

晩夏の空に焼きつくほど
鮮烈すぎた少年の時を
互いに黙して分かつのか

詩 老木

詩 老木



老木

ひと気の消えた一点に再び季節が巡れば

季節が巡れば人々は集い

「国の心に咲く花」と仰ぎ見る

圧倒される程の静を突き抜けるささくれた幹

悠然と立つ葉桜の老木よ

Collaboration

蜃気楼音すらも消す老木よ
ふと見れば悠々と立つ葉桜よ
#詩 #創作 #現代語俳句

詩 ひとり

詩 ひとり

風に飛ばされて来たのか
冬を越えた帽子がひとつ
たんぽぽのそばでカサカサと
小さな音を立てる

春に迷子になった帽子は
最初から転がる先を決めていたように
ふわりと飛んだ綿毛を見上げたまま
次の風を待つ

春は、どうしても。

土曜絵画に出したたんぽぽに、帽子を描き加えました。ほんの少し構図を変えて、久しぶりにフォトギャラリーにも入れてみました。
#詩 #創作

詩 The subconscious

詩 The subconscious

夜明けの静けさの中で
繰り返し置き去った影

今日も来たかと眉を上げるお前は
滑稽に飛び跳ねる
異国の帽子屋のまねごとか
宮廷に巣食う
慇懃無礼な道化師か

「おやおや、神であっても影はついて回るのだぞ、ほれ」

あちらにもこちらにも見えるのは
いつものように
影と名のついた顔の不確かな存在

気まぐれに歌う者
算盤をはじく者
頷きながらおかしな絵を描く者
赤く光る玉を愛おしげに抱く者
何を聴いて

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散文詩 まだ遠く

散文詩 まだ遠く

どんな季節にしても、夕方というものは気持ちを鷲掴みにしてくる。
忘れていた事をグッと空に浮かびあがらせて突きつけてくるかのように。
あの時漕いでいたブランコの、キコキコいう音までも。
歓声を上げた汗のほとばしりを。
もう二度と会えない人の皮膚の温度を。
やがてフェードアウトしてゆく切れ切れを、決して掴ませないように、大夕焼けという舞台装置に立ち上らせる。

人の夕暮れ。
ここを越えて、忘れ去る事が

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詩 おいらく

詩 おいらく



よく知りもしない草に手をついて
落とした色を見る

星の少ない夜にあらわれた
翳りをおびる無彩色
どこまでもどこまでも広がり
落とした色は仮の姿だと思い知った

熱の枯れた土の上で
目を閉じて
熱の枯れた身を
ひとり笑う

知ったつもりの黒いしじま

待ちくたびれた星が
蛍を呼んだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちびまゆさんが日曜作曲で発表された『tobari』とい

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砂民

砂民

月が大きな夜に思う
その黄金の下にあるものを
いにしえのべドウィン
遊牧の民の足跡

漆黒の砂漠で
冷えた砂が波立ち震えるのは
いったい誰のせいなのか
べドウィンが愛した家族の砂海

ウードの弦を爪弾く人に拒まれた
何を知りたいのかと

遥か昔
絹の道しるべを背中にしょったひとりの男が
祈りの言葉を口にした

男が縛りあげたものは
伝統と争い
男がもたらしたものは
繁栄と不自由

ひと足ふた足と

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詩 さあ吹けよ

詩 さあ吹けよ

水ぬるむ

里の川面に寄る風の

なんとまぁ柔らかなこと

吹きなされさぁ吹きなされ
お通りなされ

ひとつふたつとほころんだ

白梅に見惚れて何を残すや

背中に背負った

赤子のほっぺをひたと撫でながら

いったい何処に向かうや

吹きなされさぁ吹きなされ
お通りなされ

風の向くまま気の向くままとは

よく言ったもの

風が運んだものは風に運ばれてゆく
風が運んだものは風に運ばれてゆく

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詩 波の音は明けない朝を洗って

詩 波の音は明けない朝を洗って

足の下の砂が水にさらわれてゆく

波打ち際でわたしの世界は

どうしてこんなに小さいのだろう

恐れを美化し続けたいつまでも明けない朝

いったい何に酔った日々を繰り返していたのだろう

不規則に連なる音はやがて

次の崩れる波の音を運び

わたしの憂いと、儚い記憶を持ち去って行った

だからわたしはここに来る

だからわたしは
何も求めずとも良いのだと知るために

ここに来る
#詩 #海