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185.兄さん、兄さん、100万円、100万円当たったんだよ!

100万円の当選者(夢売人④)


こんにちは~

今日も私は「夢売り娘」。毎日一生懸命に仕事していますよ。

私の楽しみはこの売り場から当選者が出ること。

そして当選額の張り紙をすることです。私の売り場から当選者が出ると、翌日からの売り上げが倍増するからね。それにお客さまの目の色が違うのよ!次こそ当ててやろう!高額当選者を目指せ!そんな感じなのでしょうね。

私はね、いつもお客さまが宝くじを購入していただいたら「当りますように!神さまお願いします」とお祈りをしているの。だって大金を払って買いに来てくれるのですからね。

でもね、宝くじを当てた人は嬉しいことですが、外れた人にはいつも申し訳なく思うわ。胸が痛むときもあります。宝くじを数10万円購入する人もいれば1000円、2000円購入する人もいます。きっと大金を支払う人はお金持ちなのでしょうね。少額の人はわずかなチャンスに夢見ている人たちか、当るわけがないと思いつつ、でも少しだけでも買ってみよう、夢見て見ようという人たちかもしれません。

私が一番嬉しいときはやはり当選した人の顔を眺めているときですね。

pic.twitter.com/bwkohsua5b  宗入ネロネス @amgtJajr1tj より

先月、私の売り場から100万円の当選者が訪れました。若い男性なのですが顔見知りの常連客です。いつもはずれ券ばかりですが、わずかばかりの数百円を渡しています。毎月25日過ぎに来るのでおそらく給料が入るたびに数千円ばかりの宝くじを購入しているのでしょう。そんな彼がいつものように宝くじを10枚(2000円分)ばかり持参し、いつものように機械で照合したらなんと100万円が当ったのです。

 

「ねえ、兄さん。当ったよ!」

彼は照合を待っている間、スマホを操作していたようで、一瞬何だかわからないようでしたが、「兄さん、100万円、100万円だよ!」きっと、私の方が興奮していたかもしれませんが、怪訝そうな顔をしたままでした。

「えっ、おばさん、嘘でしょう?」

「兄さん、私が嘘をついてどうするの?当選番号ちゃんと見てごらんなさい!おめでとうございます」

「わお、本当だ!どうしょう?」

宝くじ売り場では5万円まではその場で渡せますが、100万円となると高額当選となり指定銀行に出向いて支払われることになります。彼は満面の笑みを浮かべて引きあげました。

私は彼の後ろ姿を見送りながら「おめでとう、良かったね、神さまありがとう」と伝えました。宝くじは何もすべてが億単位、数千万単位のものばかりではありませんが、100万円だって高額当選者の一人です。

©NPО japan copyright association Hiroaki

宝くじの確率というのを知っていますか?宝くじには「ジャンボ」と「ロト6」というものもあります(その他、東京都や県など)

一般的な当選確率というものがあります。これを知ると気が遠くなるほどの距離を感じるかもしれませんが、「ジャンボ宝くじ」の一等は約1000万分の1・「ロト6」の一等は約600万分の1ですから、「ジャンボ宝くじ」よりも「ロト6」を購入した方が良いという結論になりますね。

しかし、1000万分の1、600万分の1だけの確率に拘るのではなく、どちらにしろ「運」というものが強く働いていることがわかるはずです。だからといって一般的な「運が悪いから」「運が良いから」ということでの「運」ではなさそうですね。

 

私は宝くじが庶民の夢探しのように思えます。100万円、1000万円、1憶円という当選金額だけが特定の運の良い人だけに与えられるものではなく、購入した瞬間から「外れたらどうしょう?」よりも「当ったらどうしょう?」と想像(妄想)してしまう喜び、幸せ感にあるような気がします。

不思議なことに、当選者のほとんどの共通点はあまりお金で困っている人、すぐさま大金を必要としている人、そのお金が入らなければ自殺してしまう人たちではないことです。実際に大金が当った人は幸せなのでしょうか?私にはわかりませんが、そのために幸せになる人が増えるならばなんと楽しい仕事なのでしょう。

 

数日後、窓口にあの当選した若者が和菓子を届けに来ました・

「おばちゃん、銀行からお金もらったよ!ありがとう」と嬉しそうな顔していました、私はその嬉しそうな顔を見るだけで幸せなのですが、お菓子まで持ってくれて来た人は初めてのことです。

「良かったね~。で、兄さん。何を買うの?」

「何も買わないよ!いつも当ったらあれが欲しい、これが欲しいと考えていたのだけれど、実際に当ってしまったら何もいらなくなってしまった。欲しいものがなくなった。どうしょうかなあ…」

「はは、慌てる必要はないよ!ゆっくりとじっくりと考えればいいのよ!」

私は、この世を去った、自分の孫と話しているような錯覚に陥った。孫が大きくなった姿を見ているかのような気分になった。いい青年だ。

「そうだな、おばさんは何が欲しい?」

「私は欲しいものなんて何もないよ、あんたがいつまでも元気でいてくれればそれだけで嬉しいよ!」

そう、私には別に欲しいものなどない。

「じゃあね、次の宝くじ10枚(2000円分)売って下さい。あとの998000円は貯金する!」

私は宝くじを100枚渡し、またお祈りしました。

神さまありがとうございます。幸せをいただいて心から感謝致します、そう祈りました。

©NPО japan copyright association Hiroaki

 

売り場のラジオから私と同世代の竹内まりあさんの歌が流れて来ました。

 

ああ、人生ってあなたが思うほど悪いものじゃあない、と。

 「元気を出して」

作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや

涙など見せない強気なあなたを
そんなに悲しませた人は誰なの?

終りを告げた恋にすがるのはやめにして
ふりだしからまた始めればいい
幸せになりたい気持ちがあるなら
明日を見つけることは とても簡単

少しやせたそのからだに似合う服を探して
街へ飛び出せばほらみんな振り返る

チャンスは何度でも訪れてくれるはず
彼だけが男じゃないことに気付いて

あなたの小さなmistakeいつか想い出に変わる
大人への階段をひとつ上ったの

人生はあなたが思うほど悪くない
早く元気出して あの笑顔を見せて

ラララ…

coucouです。みなさん、ごきげんよう!「夢売り娘」シリーズは前6作となっています。すべて実話に基づいて作成されたものです。

160.私のような老婆でも、少しは世の中に役立つ場合もあるのかもしれないわ。
161.ああ、神さまなんて、この世にはいないのよ!
184.私はね、花売り娘、いえ夢売り娘です。
185.兄さん、兄さん、100万円、100万円当たったんだよ!
186.私の若い頃はね、とても可愛くて人気者だったのよ!
187.今日は私の最後の日、今日でお別れとなりました。



今日も、最後まで読んでくれて

みんな~
ありがとう~



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